『ブルーコア』だね
宜しくお願いします。
途中棄権となってしまったジン。参加した武闘会の結果も気になるところではあったが、ワンドラという高い戦闘力を持つ種族との闘いで今のままでは完全に力不足ということを思い知ったのだ。
そんな闘いの中で力の根源である核の力を解放する方法を思い出せたのは収穫だった。だが同時に問題点も判明したのだ。それはジンは人族の中では強く頑丈な身体ではあるが、所詮この世界では弱い部類の人族である。そのまま力を解放し続ければ肉体は直ぐに壊れてしまうと...
宿屋に帰りその日は身体を休める事にしたジン。
一瞬だが人間の肉体の限界を、超える動きをさせてしまった為に正拳突きをした右腕、腰、足に激痛がはしっていた。
「全く、こんな後から筋肉痛かぁ...亜空間での修練ではこんな事にならなかったのにな...」
「亜空間はジンが作った空間でしょ?それに、亜空間での身体とこの世界の身体は違うよ」
「えっ?そうなの」
「うん、だってジンが力をコントロールしやすいように、この世界に合わせてるんだもん」
「全くの無意識でした...」
「これからは核を解放したままにして、身体を鍛えようね♡」
「...はい...」
(しかし、何故かキュラの瞳が悪戯っぽくキラキラ輝いていたのが気になるのだが... )
次の日ジンとキュラは早速サバナ国を少しでた所の森に入り、中々良いの湖畔を見つけて修練を行う事にしたのだった。
キュラからの提案はジンの内包する核の力の解放である。様子見なので、ジンの思う全力を試すのでは無く、少し弱めの解放から始めてみたのだ。
ジンは湖の前で深呼吸をして目を閉じた。身体の内側に意識を集中していく。力の根源となる核の存在を確認する。
確認ができたら今度は核を大きく強くするイメージをした。
大きく強くイメージしていくと、暗い紫色だった核が少し明るくなり出した。
更にイメージを繰り返していく。
二度目は更に明るく、三度目は紫色から濃い桃色に変化し始め、その後も何度も何度も何度も繰り返して行くと、赤くなりその後は青くなった、大きさについては、大きくするイメージを強めれば強めた分だけ核は膨張し続け小山程までに成長したのだ。まだまだ大きくなって行く事に少し戸惑いが生じると、核の成長は止まった。
( このイメージってのは集中力が大事なんだな、少し戸惑っただけで止まってしまった)
その小山サイズを、維持しながら、ゆっくりと目を開く。
「こんな、もんかな」
辺りが見えるようになると、突然頭を硬い鈍器で殴られたかのような衝撃が走り、身体中の筋組織が悲鳴を上げる。
「うっっっ、いってぇぇぇぇ」
腕の肩から指先、太腿の付け根から足先、胸から尻にかけて体内の水分が沸騰しているかのように、ジンの身体はボコボコと音を立てて拳程の水泡が蠢き全身を覆う。
「やべえ、身体が.......身体が......」
「ジン、頑張って!」
暫く経つと身体中の水泡は無くなり、身体を動かせる様になってきたのだ。
( 全身がバッキバキで気分も悪い... 身体がぶっ壊れなくて良かった.......)
「何とか、おさまってくれたみたいだ」
足元をふらつかせながら立ち上がった。
「うん、少し解放する量が多かったんだね」
「その辺もっと慎重にしないとな」
「はじめから、飛ばし過ぎたな、こりゃ...」
「どうなの?身体は?」
「身体は.....何だか、胸から背中にかけて熱いんだ」
「ふぅ〜ん」
「でも、それだけで痛みもどんどん引いていくよ」
「あれ?」
「なあに?」
「キュラが小さく見えるんだけど」
「ジンが大きくなったんだよ」
「マジで?」
「自分の身体を見てみてよ」
「うおおおおっ!」
自分の身体を見回すジンは胸板や太腿が明らかに成長していて、手首を見ると一回り太くてなっていたのを確認した。
( 鬼神の頃とえらい違いだ。あの時は身体がデカくなっても縮んだとしても特に問題無かったのにな、人族の場合はこの位の成長程度で身体が悲鳴をあげちまうのか、全くこの核は俺の身体に馴染むのかね...何だか身体中の関節からまだ痛みを感じるし...)
今回の核を青くする感覚とその核を小山サイズまで成長させる感覚を覚え込ませその状態を維持しコントロールする事が当面の目標となった。
ジンが解放した状態で湖畔近くに立つだけで湖の湖面は振動し木々を揺らす。ジンは鼻が痒くなり、くしゃみをしただけで、湖の水が吹き飛ばされ大波となった。しかも魚も一緒に吹き飛ばしてしまう程に...
暫くすると大波となって返ってきてしまったのだ。
その大波はキュラを呑み込み...
「こりゃあ、失敗したしたな」
「もう、びしょびしょだよ〜、お気に入りの服なのに...」
「大変申し訳ないございませんでした...」
「まっ、許してあげる」
「ありがと」
「そういえば、お魚さんも飛んで行ったよ」
「マジかよ」
「今、どんな感じなの?」
「ああ、だいぶ身体に馴染んできた感じはするけど、
身体が動きたがっている感じ?暴れたくて仕方がないような....」
「ふ〜ん、じゃあ、あの石を触ってみて」
キュラに言われるがまま、大岩へ近付き石に手を軽く叩く感じで手を乗せると、大岩がズレたのだ。
「あれ?」
軽くペンって鳴る程度の力で大岩に手を乗せただけなのに.....混乱するジン
「なんだ、こりゃ」
「下にある小石を握ってみて」
「おっおう」
小石を拾い上げようと掴むと...小石は砂の塊の様に繊細で形が壊れてしまう。
「何だ?石じゃなかったか....」
他の石を拾い上げるがやはり崩れてしまう
「何だこりゃ、素材が変わったのか?それとも俺の触れた物の材質変化を起こさせてるのか?」
「あははは、ジンが力の制御ができて無い証拠だよ」
「なんですと?」
核の色はそのままで大きさのイメージだけを、小さく小さく小さくしていった。身体を包み込む程度の大きさにしてから、再度大岩に触れる。
「おっ、動かないぞ、それにちゃんと固さも感じる」
「どう?分かった」
「なるほど、少し分かった気がするよ」
亜空間ではジンが作った世界なのだから力加減は必要なくジンの力がどの様に変化しても空間内の物はジンのイメージと直結しているので、なんの意識もせずに過ごせたのだが、この世界ではその物体の強度は変わりようがなく、ジンがその物体に合わせて力加減をしなくてはならないって事に改めて気付いたのだった。
今回の修練は核を青くする感覚とその核を小山サイズまで成長させる感覚は覚えた。
今後はそのサイズを変化させる感覚を覚え込ませて、自在にコントロールする事が当面の目標となった。
ちなみに、今回の解放で気付いた事は、核のイメージをいくら強大なものにしても、目を開けなけば何処までもイメージを大きくして解放できる事を知ったのだ。
今の段階では青までだが、その後色は淡くなって行き完全に白色になる所まで確認できたのだ。
その白い光は武闘会でワンドラに浴びせた白い光と同じものだったのだ。しかもその光はカオカの結界をも消失させるとんでも無い力なのだが、まだジンもキュラも気付いてはいなかった。
青い核の状態を『ブルーコア』と名付け私生活時は常にこの『ブルーコア』状態としたのだった。
その日は『ブルーコア』のサイズを変えて、体を動かし湖で泳ぎ力の入り具合の違いを確認したのだった。
『ブルーコア』のサイズ変更に伴う筋力の変化や、魔法の強弱を確認した。しかしあまりにも短時間で考えつくまま実験をした為に全身の痛みが増していったのだ。
「少し、休憩しよう」
「そうだね、お昼ご飯食べに町に戻ろ?」
「そうだね」
「やったぁ!私おなかペコペコ」
「ペコペコって....」
ジンとキュラはサバナの町へ戻っていったのだ。
軽く走っているだけなのだが、行きの時より半分の時間で帰ってきてしまったのだった。
定食屋へ入り、メニューを見ると、そこには
「なっ何だと!」
「どうしたの?」
「ああ、トンカツ定食って書いてあるんだが...しかも白米おかわり自由...すっ凄え...」
「そんなに?それに白米ってなに?」
「俺の生まれ故郷の主食だよ」
「そうなんだ、私もそれ、食べるぅ」
「そうだな、一緒に食べよう」
いつになく上機嫌のジンなのであった。
トンカツ定食が並べられその料理を見るキュラが
「あっ!これなんだ」
「何だ、見たことあるのか?」
「エヘヘへ、何だか、ジンの側で寝てる時に夢に出てきた事があるの」
「マジか」
「うん、それに夢の中でジンから色々な知識が流れ混んでくるんだよ」
「へぁっ?そっそれは、たっ例えば?」
「ジンは、胸の...「ハイ、ハイ、ハイィ〜〜〜ハイ!おしまい、さっさっさと食べようね」
「後は、核の記憶だよ」
「核の?」
「ジンは見た事ないの?」
「ないと思う....」
「そうなんだ、私は少しだけ見たことがあったんだけど、意味がさっぱり分からなかったの」
「まっその内おれも見れる日が来るのかな」
食事を、終えて音楽祭の会場へ向かったのだった
◇
闘技場では...
「ブラン選手の棄権によりツドラ選手の不戦勝が決まりベスト4進出を決めました」
ベンガールとフェの対戦はフェの持つ肉の鎧を打ち抜きベンガールがベスト4進出。
エイトと赤マントの対戦は赤マントと違い前試合のダメージの蓄積が祟り赤マントの一撃必殺の拳をモロに食い医務室送りになった。
トロワとシルバーの対戦は魔法防御の装備が功を奏し苦戦しながらもシルバーが勝ち残った。
ベンガールと赤マントの対戦は防御力には自信があった赤マントだったが、戦闘スキルや経験値のあるベンガールが単調な動きの赤マントの動きを完全に見切り手かずで圧倒した。
そしてベンガールJr.は赤マントに圧勝した。
シルバーストームとツドラの対戦はシルバーストーム自慢のフルプレートが既にボロボロになっていたが、ツドラとの殴り合いは見る者達を魅了した。
鎧の面が飛び中から現れたのが人族と分かった瞬間会場は更に盛り上がり、『シルバーストーム』コールが闘技場内を揺らしたのだ。
歴史的勝利にはならなかったが間違い無く後世に残る名勝負になったのだ。
決勝進出を納めたのはベンガールとツドラだった。
ベンガールは闘志で、ツドラはテクニックで技を競い合った。
虎と竜の戦いは観る者を魅了した。
お互いは死力を尽くして闘い勝者・敗者共に惜しみのない拍手が鳴り響いたのだった。
特別枠・エキシビジョンマッチが行われる事になったのだ。
サバナ国国王、エレファン獣王その人である。
対戦者は先程まで死闘を繰り返し勝利をもぎ取ったベンガールJr.である。
ベンガールJr.に回復魔法をかけて30分のインターバルを与えた。
ベンガールは肉食系獣人族の悪いイメージを払拭させたのだった。
今回の試合は全てルール範囲内であり敗者に対しても誠実そして何より戦闘スタイルもスマートなのだ。
今回の試合がきっかけになり、草食も肉食も関係なく同じ獣人として歴史的一歩を踏み出したのだ。
観客席からも、女性の声援が多く響いていたのが印象的だった。
エキシビジョンと言えども、エレファンとベンガールは全力全開だった。
永遠とも思える殴り合いは、エレファンの牙が折られた事で決着する。
完全に世代交代なのだろう。
ベンガールは今大会の目的を完全に達成させたと言わんばかりの表情だった。
ジョー・タカオカ対ベンガールJr.の闘いはこの、慰霊祭の最終日と決まっており、2日後の開催となる。
ジンが『ブルーコア』の修練をした日サバナ国では、天から魚が降ってくるという珍しい現象が起こり、慰霊祭とも重なっていたので天界の神様からの贈り物だと噂になったのでした。
◇
その2日の間に、ベンガールJr.とアサイー嬢が交際発表をしたのだ。
さらにその2ヶ月後婚約発表をしたのと同時期に残っていた肉食系獣人達はサバナ国へ移住し過去の確執が解消されたのだった。
肉食系獣人男子は意外にも草食系獣人女子に人気があり、逆に草食系獣人男子は肉食系獣人女子に人気があったのだ。
やはり肉食系獣人が来た事により、獣人狩りなる事件も聞かなくなり平和な日々が続くのだった。
驚く事に、肉食系獣人の中にあの戦闘狂の新種族フォリナー族も複数混ざっていた。
読んで下さり、ありがとうございました。
次回も宜しくお願いします。




