アグレッサーだね
宜しくお願いします。
ジンとキュラは楽しかったチェンジュの街ではあったが、ここ最近では色々と付きまとってくる連中も多く鬱陶しかった事もあり、気配を消し人知れず街を後にしたのだった。
「さぁて、目的地はサバナ国だな」
「りょーか〜い」
「その後はプエルト国に入りドワーフ達と会った後にエルフ領へ行こう」
「うん、楽しみだね♡」
チェジュからサバナ国への旅は2人の時間を存分に楽しみながらの旅となった為目的の地へ到着するまでに半月以上の時間を費やしたのだった。
「やっと着いたな」
「うん、でも色々と売れる獲物や素材もたっくさん獲れたもんね。それにジンと2人旅も.....ね♡」
「あっああ......」
「ジンは楽しくなかったの!」
「イヤイヤ、サッサイコウでした」
「そっそんな事より、さっさと売れる物を売って身軽になろう」
「ぷ〜っ」 頬を膨らませて顔を赤らめているキュラの顔を見たら疲れが吹っ飛びました.....途中途中にぶっ込んでくる修練が......ね....
サバナ国への入国だが、流石は獣人族の国であった。ジンもキュラも人族であり、ましてやEランク程度の冒険者という事もあり行商人と同じ扱いとなっていた。要はすんなりと立ち入りを許可されたのだ。
門を潜り街に出るとアルベロベッロのトゥルッリに似た建物が建っており、とても可愛らしい街並みは変わらずだった。
街並みを眺めながらギルドへと向かった。
[ カララン ]
受付嬢 ラピンさんが迎えてくれたのだ。
(おやっ?ラピンさんってこんなにも美しい女性だったっけか?)
ジンが考えていると....
「いってぇ!」
はい、キュラにお尻を抓られました。
「ジン......メッ!だよ」
「...........はい....」
早速買取の話を進めて行くと、2日後に祭りが開催される為、食材は大歓迎との事だった。持ち込んだ素材は全て買取ってくれる事になったが、買取価格は目利きの者が祭りの準備に駆り出されているので明日もう一度来て欲しいと言われてしまった。まぁサバナ国には数日滞在するつもりなので快諾した。
宿屋を探しにギルドを後にした。
人族が泊まれる様な小さな作りのベッドやテーブルがある宿屋は数が知れているので、すぐに決まったのだった。
可愛らしいリスっぽい子供の獣人が受付している宿屋で、名をトスカニーと名乗っていた。
「トスカニーちゃん、私たち今日この国に着いたばかりで、明後日のお祭りについて聞かせて欲しいの」
「うん、良いよ」
「私もお母さんから聞いた話だけど、サバナ国は大きな怪鳥ロッペンの被害が多かったんだって。そこで赤い髪の鬼神様の魂が宿りし唯一無二の存在カオカ様が討伐してくれて、しかもね命を落とした人達に向けて慰霊碑を建ててくれたの。感謝の気持ちから始まったのが慰霊祭って訳」
ふふんと得意げに胸を張るトスカニーは、話を続けた。
「私の生まれる前の話だから大きな怪鳥ロッペンがどれほど怖いのか分からないけどね♡ただ慰霊祭が始まるととっても沢山の出店が並ぶし、綺麗な音楽も流れるから大好き」
「へぇ〜、それは楽しみだな」
「エヘヘッ私なんて毎年慰霊祭が終わった翌日から楽しみにしてるんだから」
「そっそれは凄いな」
「私も音楽聴きたぁ〜い」
「あははっお姉ちゃん、子供みたい」
「むぅ〜っ!良いんだもん」
何故かキュラはジンにジト目を向けてきた。
「ああ、そんな所も良いと思うぞ」
「二へへッ♡」
「あ〜はいはい、お熱いですね。夕食はどうしますか?」
「ああ、お願いするよ」
突然、営業モードになってしまったトスカニーにその後、部屋の鍵を受け取り部屋へ向かったのだ。
「流石は獣人族の国だな。コップ一つにしてもかなりのデカさだ」
「そだね、あのフォークも大きかったよ」
「ああ、食事の量も凄かったな....」
到着したばかりのサバナ国の話で盛り上がりその日は深夜遅くまで雑談に花を咲かせたらのだった。
久しぶりのフカフカのベッドだった為か、思いっきり寝過ごした2人は部屋を出るときには既に日は高く、お昼近くになっていた。
「あら、お客さん。おはようございます」
「おはよう....」
「ゆっくり寝られましたか?」
「うん、とっても♡」
「あはははは、それは何よりです」
「では、食事にしますか?」
「キュラは、どうする?」
「モチロン、食べるぅ〜」
「では、いただきます」
「はい、では席についてお待ち下さいね」
えっ?マジでコレが朝食なの?と言いたくなる様な量とボリュームでポテトサラダ、ポタージュスープ、サンドイッチ等が並んだ。
まるで妊娠3ヶ月?って疑われる程に膨らんだお腹を摩りながら街に繰り出したのだ。
闘技場を目指しながらブラブラと歩いて行くと.....
「きぃやぁあああああああああああああああああ」
[ ドゴンッ!]
[ ドゴンッ!]
[ ドゴンッ!]
[ ドゴンッ!]
腹の底に響く様な重苦しい音と共に、地面が揺れた。
「何だ?」
「ジン....嫌な感じがするよ」
「ん?そうか?」
「とっても重い気配が漂ってるの」
「重い、重いねぇ.....」
破壊音が聞こえた方角に進み路地を曲がった先は少し開けた広場になっていて、屋台が立ち並んでいる場所に出たのだった。
お好み焼き屋や焼きそば屋そして綿飴等何だか懐かしい屋台が立ち並んでいる。
店主らしき獣人達は屋台から出て来てお客と話し込んでいる様だった。
「サバナの人達も何が起きたのか分からないみたいだな」
「ねぇ、ジン、ココから離れよ....ねぇ.....」
「どうした?」
「ヤッパリ嫌なの....」
「そうなのか?」
「うん....早く行こ...離れよ....」
広場に現れたフードの付いた青と緑の外套を着た二人組が何やら楽しげに屋台に、近づいて行った。
「何コレェ〜焼きそば?タコ焼きとかあるのかなぁ?」
緑の外套を着た者は女の様だった。
「ははははは、白菊は相変わらずだなぁコッチの世界にそんなもんあるはず無いだろが」
青い外套を着た者は男の様だ。
「う〜ん.......そうかなぁ〜、残念だなぁ〜」
「ワタシ新橋にあった金タコ好きだったんだよなぁ〜〜〜」
「まぁ、とっとと、きしょく悪りぃ奴らをぶっ殺して帰りゃあ良いじゃねぇか」
「もう、直実君は本当に過激だよね」
「だってよぉ....元の世界に置いて来ちまった、奴がな....」
「あ〜〜〜ハイハイ、熱い!熱い!あ〜ウザいぃ!」
「なぁ、キュラ、アイツらの会話って.....」
「私は分かんないけど、ねぇとにかく離れよ.......ねっ」
キュラは強引にジンの腕を掴んでその場を後にした。
[ ドゴンッ!]
[ ドゴンッ!]
[ ドゴンッ!]
今度は別の場所から破壊が響いた。
サバナ国の警備兵達が慌ただしくジンとキュラの横を走り去って行く。
「さっきの発言といい、何が起こったんだ?」
「分かんないけど、とにかく宿屋に行こ」
「どうしたんだよ、キュラらしく無いじゃんか」
「お願い」
キュラはジンの腕を強く握り宿屋へ走った。
宿屋に着くと、すぐさま部屋に入り亜空間に行こうと言い出したのだ。
「キュラ、少し落ち着こう」
「だって、だってぇ....」
「きゃぁあああああああああああああああああ」
「やっやめてくれ...」
窓から下を覗くと、先程見かけた外套を着た2人組とは別のやはり外套を着た黒髪の男女だった。
そして、派手な赤い外套を着た男は背中に巨大な金色の刀を背負い自分より何倍も大きな獣人を投げ飛ばしていたのだった。
「おい、おいぃ、コイツらぁ弱ぇ〜な!アンタらそれでも魔物かよ!こんなんじゃ俺のレベルアップにもなんねぇよ」
「そうなの?なら私が頂くわよ」
黒い外套を着た黒髪の女は小刀を片手に少し腰を落としたかと思うと残像を残し、獣人達の横をすり抜けたのだ。
寸瞬、赤い雨がその場を濡らした。
「きゃぁあああああああああああああああああああ」
家から飛び出してきた小さな獣人の女の子がおびただしい血を吹き出し倒れた獣人の男に飛びつき
「おっお父さん、お父さん、お父さん」
「うわぁああああああああああああん」
狂った様に泣いていた。
「この魔物はウルセェなぁ」
黒髪の男は背中の大剣を握り何の躊躇いもなく少女に斬りかかった。
[ ガシュッ ]
金色の大剣は光を纏いながら斬撃を放ったのだ。
飛び出そうとしたジンをキュラは何とか押さえつけて床に組み伏せていた。
( ジン....お願い....少し待って... )
( キュラ.....何か知ってるのか?)
「ほぉ〜〜っなかなか、コレは....」
「あらあら、今度は楽しめそうね♡」
黒髪の男女はやや楽しそうな口振りで泣きすがる少女には目もくれずに少し離れた場所を見やっていた。
大剣の切っ先は大きな刺の生えた金棒によって斬撃を止めたのだった。
斬りかかられた小さな獣人の女の子と父親は美しい女性2名により既に数十メートル離れた位置に保護されていた。
更に離れた場所には息を切らした片腕の大男が今まさに金棒を投げ込んだ様な体制で少女達を保護した女性2人に、サムズアップをしてニヤリと微笑んでいた。
「はぁはぁはぁ、間に合ったか」
「レオン、鈍ったわね!」
「ばっバカ言うな!」
「バカッ? あっああ〜〜〜ん」
美しかった女性は邪悪な目付きになりレオンと呼ばれた片腕の大男に睨みをきかせたのだ。
「はっははは、ヤダナァ......ランプゥさんたら.......」
「はぁっ? ランプゥさん....だと?」
女性の顔に青筋が浮かび上がり、美しかった面影すら完全になくなってしまった。
「.........................ごめんなさい」
そんなやり取りを、見つめていた黒髪の男女は
「おっ!コイツらオーガじゃ無ぇーか」
「見つけましたね!経験値を稼ぐ絶好のターゲットですわ♡」
「ラッキィー!」
( コイツら、さっきっから俺の聞き慣れた単語がやたらと出てくるな )
「まぁ、とりあえずこの魔物共をぶっ殺して村を制圧しちまうか」
「まあ、そうね、そうなるわね♡」
「菊水のオッサンはどこ行っちまったか分かんねぇが、直実と白菊の位置は把握してるしな、合流してから おっ始めるとするか」
「あら、仲間が居ないと不安なのかしら?」
「ばっばか言うんじゃねぇ!俺だけでも余裕だっつぅ〜の」
「ウフフ、可愛いわね」
「ったく!俺をからかうんじゃねぇよ!」
走り込んできた片腕のレオンに対し男は大剣を構えたかと思うと姿が消えた。
[ ガキンッ ]
火花が散り、砂塵が舞った。
レオンと男の間に先程獣人の父親を保護した女性が男の大剣を受け止めていた。
「ルグ、助かった」
「クッ.....礼は後!」
レオンはすかさず拳を打ち込んだ。
男は自分の大剣がまさか止められるとは思わなかったのだろう。隙だらけとなりレオンの強烈な一撃をモロに受けたのだ。
しかし
「ふぅ〜ん、コレがダメージの感覚かよ」
右の頬をさすりながら立ち上がった。
「旭川、ダッサ.....」
「ああっ!詩テメェ.....」
「ハイハイ、そこに立って、治してさしあげますわ」
顎が変な形に変形していたが、女が胸元から小瓶を出して男の顔にかけると瞬く間に治癒されていった。
「まぁこんなところかしらね。この回復薬は貴重なのよ。しっかりしなさい」
「ああ、もう油断はしねぇよ」
睨み合う外套を着た旭川と詩という2人とレオン、ランプ、ルグの3人。
睨み合う2組の間の空が、ピンク色に染まり一筋の光が差し込んだ。
光がと共に空からは女性らしき者が舞い降り周辺を良い匂いで包み込み癒していく。
レオンは光と共に舞い降りた女性に視線を向け
「バルタか」
「あらあら、押されているのかしら?」
「ちっ!今始まったばかりだ!」
黒髪の男 旭川は金色の大剣を振りかぶりレオンに向け30メートルは離れた位置にいながらにして振り下ろしたのだ。
[ ドゴンッ! ]
本日 何度目かになる破壊音が響いた。
金色の大剣から放たれた光の帯は衝撃波となり地面にそして建物までも剥ぎ払ったのだ。
「旭川アナタは相変わらずデタラメな強さね」
「まぁ、勇者だからな!」
「ふん、こんな頭の悪い勇者が認められるなんてありえないわ、さっさとこのゲームを終わらせましょ」
「だな!俺はエアコン無しじゃ生きていけねぇんだ。それに羽虫も大嫌いだ!」
黒髪の男女の身体が光だした。
「おっ!何だよもう時間切れか! おいっ!そこのオーガ共また来っから逃げんじゃねぇ~ぞ!」
「やっぱりバカなのね、どちらかと言うと時間切れで消える私達の方が逃げてるみたいよ」
「なっなんだとぉおおおおおぉぉぉぉぉ・・・・・」
光の粒となって消えていった。
「レオン、生きてる?」
「ああ、何とかなカスパがいなけりゃマジ死んでた」
「ホッホッホッ、間に合ってよかったのじゃ」
「しかし、勇者とか言っていたな」
「ええ、ジョーにそれとなく聞いてみなくては......」
「しかし、あの強さジョーと互角か」
「遊んでいる様に見えましたが」
破壊された建物を眺めながら、ただ立ち尽くす4人の鬼人の姿だけが取り残されていた。
「キュラ、アイツらって」
「うん、多分異界の人だと思うよ、それに特別な力を持っているみたい」
「俺たちで何とかなるかな?」
「わかんない......でもかなり強いって感じるの」
「そうか.................ん?待てよ....そう言えばキュラは俺がこの世界に戻るためには力を分散させないとダメとか何とか、それに超越者とか何とか....」
「うん、そう聞いたのに......なんだか、すごいのが来ちゃったね♡」
( おいおい、来ちゃったね♡じゃ無いだろって......)
「そういえば、その話は誰に聞いたんだ?」
「う〜ん...神様っぽい人.....」
(あっこれって................あれだ)
「ああっ!」
「どうしたの?」
「そう言えば、俺この世界で探知魔法を使ったけど鬼人の頃に比べて明らかに探知範囲が狭くなってたよな」
「そうなの?」
「ああ、間違い無い」
( それに、あいつらって俺のいた世界の住人なのか?.....いや確かに地球は破壊されたはずだしな.....いや偽りの情報だったのか?....あ〜〜何だかモヤモヤする)
「ジン、大丈夫?」
気がつくと、下から覗き込んでくるキュラの容があった。
(何だか、胸がドキドキする...)
「はぁ〜、危険人物はいなくなったし、一応ギルドにでも行くか?」
「うん!あとゴハン!」
「だな!」
読んで下さり、ありがとうございました。
次回も宜しくお願いします。




