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99話 あれからのこと


 チーン……



 皆との感動の再会を鼻をかんで一旦中断……うん、なかなかに恥ずかしいかも。



「すみません、皆さんご心配をおかけしました」

 ロキシーが出してくれた紙で鼻をかみ、落ち着いた所で改めて皆に謝罪する。

 ちなみに【ロキシーさん】が【ロキシー】と呼び捨てになりました。交換条件は鼻をかむ紙でした。


「何も謝ることなんて無いのに」

「うーん、皆に迷惑をかけたのは確かだし、けじめだからね」

 ロキシーのぼやきにわたしは素直にそう返す。


「そうだぞ。あんな無茶な……それこそPHYシステムなんて使わせるような状態にした俺の方が謝らないと」

「いや、あれはあくまでわたしが選んだ選択肢だから。だってあのシステムにしても……」


 あれっ、どうしてあのシステム使ったんだっけ……うーん、思い出せない。



「ま、何にしてもリアのおかげであのPAは倒せたわけだし、感謝こそすれど謝れなんて言うはずが無いだろ」

「ファナさんまで……」


 ん? というか、


「あれからの事が聞きたいって感じかな?」

「うん、教えてもらえますか? わたしが気を失った後のこと」



―――◇―――◇―――



「まず、リアが戦った相手についてはPA共々ポリゴン化して消えたから倒したことは間違いない。まぁPAがポリゴン化するなんてあまり見ない現象だから驚いたが」

「へぇ……そうなんですか」


「通常はPAが操作不能になれば、機関停止後にしばらくしてから粒子化し元の場所へ帰っていく。まぁPAの格納庫と言われる神の島と呼ばれた場所らしいがな。

 で、今回奴のPAが粒子化せずポリゴン化してから消えたと言うことは、心臓部か駆動の中枢部に重大な破損があり、存在が維持できなくなったからだと思う。リアの攻撃でかなりのダメージが入ったのだろうな」

 ファナさんもPAにはかなり詳しいみたい。いや、この世界の人達からしたら当たり前なのかな。


『まぁ、あんな衝撃で突撃したら、ダメージもかなりのものなんだろうなぁ……』

 最後の激突から意識がないので、どうしても他人事というか実感がわかない。


「なかなか無いことだが、そこまで大きなダメージを受けたPAだと修復も難しいだろうな、特に脱帝(はぐれ)じゃな」


 そういえばあの時も言ってたっけ。



「ねぇハル、脱帝(はぐれ)ってなに?」

「ああ、リアは知らないか。

 帝国は国自体の強さもあるけど、所持するPAも他の国に比べ豊富な種類と基礎的なパフォーマンスも高いことから、一番人気の国として多くの冒険者(プレイヤー)が選択するんのさ。

 だが、強さには厳しさがつきものでなぁ、その厳しさに耐えきれず帝国を逃げ出す奴らがいる。それを脱帝(はぐれ)と呼ぶんだ」


 なんだか複雑かも……


「でも、脱帝(はぐれ)になってもPAは所持できるんだね」

「ああ。だが帝国のシンボルカラーであるPAの色はそのままでも、識別となる紋章は剥がさなければならない。それを怠るとそれぞれの国から命を狙われる事になる。

 実際、戦っていた相手のPAも帝国の証である機体のカラーは【黒】であっても、紋章である【獅子】はなかった。だから奴が脱帝(はぐれ)だってわかったんだ」


 なるほど、それてハルはバンダナを脱帝(はぐれ)ってわかったんだ。

 戦った相手については何か思うのって難しいけど、PAまで壊れたとなると大変なんだろうなぁ……



「その話のついでと言っては悪いが、奴らを討伐したという判断はしたから、村長から出ていた依頼(クエスト)の報酬はハルに渡しておいたから確認してくれ」

「でも、まだ彼らの仲間が山にいる可能性が……」

「たぶん無いだろう。いれば今頃山神様が襲撃しているはずだ」


 ファナさんの言う通り、生き残りというか仲間がまだいたら、山神様は怪我が酷くても行くんだろうな……っていうか、


「その山神様は!?」

「山神様は君達のおかげで死ぬことも、変化することもなかったよ。リアが相手のPAを倒したタイミングぐらいであの場からいなくなっていた。

 確認中だが、たぶん住みかである洞窟に帰ったと思う」


『ほっ……良かった』


 とりあえず山神様が倒されなくて良かったというか、変化しなくて良かった。これ以上この世界に迷惑はかけたくなかったという事だけは守られたようで、少しだけ安堵する。


「まだリアは気がついたばかりだから、いったん今日のところはこれぐらいにしておいてもらって良いかしら」

 マチュアさんの提案と言う名の強制退出により、マチュアさん以外はいったん部屋に戻っていく。



「ごめんね、一応怪我の事とかこれからの事を話しておきたかったから。皆に退出してもらったくせに、私だけ残っちゃって」

「いえ、マチュアさんが一番長く一緒にいますし、わたしから言うのも照れますが、この世界でのお姉さんのように思っているのは事実ですから」


 わたしがそう言うが早いか、マチュアさんは再びわたしをギュッと抱き締める。

 

「だったらきちんと困った時には頼りなさいよ? なんだかまだバツが悪いような顔してるわよ」

「……はい」


 マチュアさんに抱き締められて、心も体も暖かくなったわたしは、こちらの世界にログインがなかなか出来なかったこと、皆に要らないと言われたらどうしようか怖くて仕方がなかったことを話す。



「まぁ、リアがしたことに対し皆が何とも思わなかったとしても、リア自身が後ろめたく思ったらそれまでだものね。

 でもね、私も含め他の皆もそんなこと思うはずなんて無いのに……リアともあろう者がそんな心配するなんてね」

「あはは……」


 そんな後ろ向きな考えはしないようにしているつもりだったけど……確かに珍しいかも?



 それから、マチュアさんはわたしの怪我の件や、治療でやむを得ないとはいえロイズさんに色々と見られてしまった事の説明をしてくれた。

 とくに怪我については聞いているだけで肌がピリピリとして、改めて自分の体に起きたことだったと認識させた。



『現実だったらICUだったんだろうな』

 今のわたしには、そう考えるのが精一杯だった。


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