表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/288

89話 地底湖の主


『さてっと……』

 暖をとって落ち着いたところで辿り着いた場所を見てみるけど、これと言って何もなく……どうしよ??


 ここから見渡す限り他に何も見えない。

『もしかして、前回の討伐からまだ五十年しか過ぎていないからダメだったとか……このまま勾玉が入手出来ないようだと……』



「安心して下さい、大丈夫ですよ」

「えっ!?」

 不安なことばかりを考えていたところに声がしたので慌てて回りを見るけど誰もいない。


「僕なら目の前にいますよ?」

「えっ? えっ? って……うわっ!」


 キョロキョロと見ていたら足元の岩場が揺れる。わたしは岩橋から落ちないよう、うつ伏せになって岩場にしがみつく!


 元々水面から三十センチぐらいの高さしかなかった岩場が、振動とともに少しずつ上がっていく。

『もしかして……』


 最初の高さから比べ、およそ二メートルほどの高さまで上がると止まり、それと同時に水面から何かが表れる。



「待たせたかな」

「い、いえ大丈夫です!」


 目の前に表れた顔は爬虫類系な感じだけど、頭部から伸びる二つの角がそれらとは異なる事を示している。


『確か映画か何かで見た龍の顔がこんな形だった気がするけど……』

「うん、惜しいね。人からは【玄武】と呼ばれているよ、異邦人さん」


 玄武、ゲンブ……聞いたことがあるような気がする。ゲームか何かだったかな?確か亀の胴体と蛇が一体となった神様だったはず。まさか十二柱の一柱の!?


「うーん、僕はそこまで大それたものじゃないよ。水神ヒューリム様の眷族、それぐらいだから」

「いやいや、神様の使いなら凄いと思いますが!」

 わたしがそう言うと玄武様は『あはは』と笑っていた。



「あ、ここに来た理由ですが」

「うん、大丈夫だよ、言わなくてもわかるから。アレは僕の一部だからね」

「えっ?」

 一部? どういうこと?


「僕はここから動けないから、いくつかの分け身を放っているんだ。アレ……君達でいう山神かな? そのうちの一つであり、同時にこの地で何か問題がないかを見張っているんだ。

 だから今アレがどういう状態になっているかは把握しているよ」


 なるほど。山神様は玄武様の一部だから、その支配下とかにあるってことかな?


「でしたら」

「うん、君が言いたい事はわかるけど、残念ながらそれは叶えることができないかな。

 把握はしている、だけど管理は出来ない状態だからね」

 ……えっ?


「通常、アレは僕の管理下にあってコントロールできているのだけど、君と同じ異邦人がちょっかいをかけたみたいだからね。そっちに熱が入っているようで、あいにくと僕の言うことも聞かない状態になってしまっているみたいなんだ」

「……すみません、同郷の者が迷惑をかけてしまって」


 うぅ、そこまでわかっているのならどうしようも無い訳で。やはり問題の異邦人を討伐して、山神様の怒りを鎮めるのが一番なのかな……



「そうだねぇ、正直なところキレたアレはなかなかに面倒だろうね。その異邦人を渡して全て丸く収まると言うのも怪しいかもしれないね」

「そんな……」


 わたしの呟きに対し玄武様は『それだけの相手にケンカを売ったということだよ』と笑いながら答えてくれる。

 ということは、最悪な場合だと冒険者と山神様のどちらとも戦う必要が出てくるって事に……


「まぁ、君はそうならない為にここまでコレを取りに来たのだろ?」

 そう言うと玄武様は頭を軽く降り



カツン



「もしかしてコレが」

「そう、巫女の印である勾玉だよ」


 わたしの足元で紅く光るその勾玉は、まるで息をしているかのように光を強くしたり弱くしたりしている。


「それを持っていれば僕と同じようにアレと話をすることはできるはずだよ」

「あ、ありがとうございます!」

「なに、こんな厳しい条件の中でここまで来た君の強さに敬意を表した結果だよ」


「厳しい条件ですか? 確かに水が冷たくて大変でした。おかげで少し溺れかけましたし……」


 現実(リアル)ですらあんなに冷たい水に入ったことはないし。うーん、来月から始まるプール授業で何度ぐらいのお水なんだろ?


「そうだね、本来ならもっと水温は高いからね」

「え? それって……」

 もしかして、また進んでマゾな道に進んでいたとか……


「僕がこうやって条件を満たした者に巫女の印を渡すのは約百年毎なのは知っているよね?」

「はい」

「アレが討伐された際の【穢】は大地に落ちた後、今僕らがいるこの湖に流れてくるんだ。それを僕がここで凍らせて封印し、長い時間をかけて浄化する。

 今はまだ五十年、一応浄化は済んでいるとは思うけど、まだまだ水温は冷たかったはずだよ」


「もしかして本来の百年後、それこそ今から数えて五十年後なら」

「うん、浄化も完全に済んでいるから、普通の川や湖に近い水温だろうね」


 やっぱり進んでマゾな道を歩いてましたか……



「なに、そう悔やむものでも無いさ。君のような【祝福】を複数持つ者にはあまり意味は無いだろうけど、ちょっとした効果を身に付けているはずだよ」


 玄武様に言われてステータス画面を見てみると祝福の所に【水神使徒の印】と書かれ、スキル欄に【清水如】と追記されている。


「それを持つことで【水の如く】流れを身に付けることができるし、いつかヒューリム様にお会いすることがあれば、きっと君を視てくれると思うよ」

「あ、はい」


 うーん、【水の如く】と言われてもピンと来ないけど……きっとわたしにとって有益なことなんだとは思う。

 あとこれ以上神様とは出来るだけ会わない方向で行きたいかも。会うたびに色々と痛い目に会ってるし……


 ま、考えるのも確かめるのは後にしよう。だって今は一刻も早く戻って山神様をなんとかしないと、同郷者のせいで迷惑をかけているゲーニスの方々に申し訳がないし。そうと決まれば、



「玄武様、勾玉を預けて頂きありがとうございました。上の騒動が収まり次第、この勾玉をお返ししに来ます」

「いや、それは君にあげるよ。歴代の巫女達にも隔てなく渡してきたものだからね。それに君が持つことで楽しみが増えるかもしれないし」



 楽しみが増えるとは……また嫌な予感がする言葉(ワード)ですね……






いつも読んで頂きありがとうございますm(_ _)m



※18/03/19 誤字脱字修正しました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ