87話 巫女の資格
「で、その巫女さんはどうするつもりなんだ? 村にいれば良いけど、こういう話が出るってことは今はいないってことだろ?」
「うん。村長さんに聞いてみたけど、いま村に巫女としての職についている人はいないみたい。とりあえずファナさんが協力して他の資料を調べてくれているわ。
なんらかの資格……それこそ、この世界の住人でなければならないとか、特定の資格持ちでなければならないという事が無ければ良いのだけど……」
実際にそのような前提が必要な場合には、色々ハードルが高くなる事に。
『できればわたしかロキシーさんが一時的なもので構わないから、巫女としていられそうな条件を満たしていれば……』
「リア、巫女になる条件がわかったぞ」
そんなことを考えていたタイミングでファナさんが帰ってきた。手にしているのは……何かがかかれた紙?
「過去巫女になった者達、そしてその選定について書かれたものがあったので借りてきた」
おお~それはありがたい!
「これによると、基本的に選定をクリアするのに異邦人や人間のみといった種別的なものはなく、資格を持つ者が町の外れにある祠へ赴き、巫女の印となる勾玉を手にすることで巫女と認められるらしい。
そして資格についてだが……まず【女性であること】」
まぁ、巫女って言うぐらいだしねぇ。
「次に【回復系の魔法が使えること】
『あら、私でも巫女になれるのかしら?』
マチュアさんノリノリだけど、参加できませんからね!
「そして【年齢が十六才以下であること】」
「あぁ、残念!」
……マチュアさん、本気でなるつもりだったみたい。まぁ、村の人がなるよりかは良いと思うけど。
ん、ちょっと待って。その条件ってロキシーさんも駄目ってこと? と言うか、現実なの? それともゲーム内の年齢なの?
……あ、現実の年齢で初期登録するからイコールか。うーん、まだわたしがなれる可能性は残されているけど、なかなかハードルが高いかも……
「最後に」
まだあるの!?
「ああ、一応これには【生娘であること】ということが条件になっているようだ」
「はあっ?」
あ、思わず言葉に出しちゃった。いや、まぁ確かに『神社で巫女のバイト募集あるけど男性経験無しが条件だって』とか聞いたことがあるし、そういったしきたり的なものがあるのもわかるけど……ゲームの中まで同じような設定しなくても。
『ん?』
あっれ!? な、なにかなぁ……みんながこっちを注目しているんだけど。え? なにか発言しないとマズい雰囲気? いやいや、個人情報っていうか、ハラスメントとか抵触するんじゃ?
「リア、まさか……」
「既に大人の階段を」
ハルとロキシーさんがこっちを見て……あぁ、そんな顔で見んな!
『もうっ!』
「あーハイハイ! ええ、どうせ生娘ですよ! キスどころかデートすらしたことありませんよ! そんな恥ずかしいこと言わせるな!」
「いや、別にそこまで言えとは……」
「うっさい! ハルのバーカバーカ!」
「ま、まぁとりあえず巫女の資格はありそうだから良かったじゃないか」
「大丈夫、リアならきっとイイ男捕まえて幸せな家庭築けるから」
「……そうですね」
はぁ……今ごろ言ったことの恥ずかしさで情けなくなってきた。大人な二人に励まされてしまったし。あ、ファナさんは二十歳ですか? うん、でもわたしから見たら十分大人ですよ?
「あと君たちにとって朗報かどうかはわからないが、村長から今回の発端となった冒険者達を討伐する依頼を出すそうだ」
「討伐?」
「ああ、あと山に何人いるかわからないが生死は不問とのことだ。君たちのおかげで死者は出なかったが、被害と住民感情を鑑みてとのことだ」
被害はわかるけど、結果生死不問って……
「しかし生死は元より、依頼の達成ってどうしたらわかるんだ?」
あ、確かにそうかも。
「それについては私が同行して判断することになる」
「でも、それだとファナさんが危なく……」
「私の心配なら不要だ。君が寝ている間に彼と軽く手合わせして、一緒に行っても問題ないと」
強さに問題なくても……でもファナさんも強情そうだから断るのは無理っぽいかな。
「ただ、これならリアも悩むことがなくなったな。山神様については最悪なにもしなくても良いことになるし、冒険者達はとにかく倒していけば構わないわけだし」
「うん、そうだね……」
なんだろ、どうもこの依頼の出され方が気になる……気のせいかな。
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「で、ここが祠ですか」
あれから『実際にわたしが巫女としての選定が得られるのか』を確認しようという話になり、件の祠へ。
村の外れにあると聞いたので寂れているような印象を持っていたけど、祠の回りはキレイに保たれ、澄んだ清らかな空気を感じることができた。
祠の入り口には縄が張られ、横には「許可なき者、資格が無い者の侵入を禁ず」と書いてある。
「何があるかわからないから気を付けて」
「うん、ありがとう」
一応年齢だけが引っ掛かったロキシーさんも祠の中へ入ろうと試みたものの、張られた縄に触れた途端に少しだけとはいえダメージを受けたようで、手から煙が……大丈夫? とりあえず《ヒール》っと。
『一応村長さんには許可を貰ったけど……入って大丈夫なんだよね』
場の雰囲気に飲まれそうになりながらも、わたしは縄をくぐり抜け中へ入る。……くっ、キチンとダメージ受けないってことは条件満たしているって証明してるじゃん!
というか、ゲームで……その……け、経験無いとかどうやって識別してるワケ!?
『あとで運営にクレームいれる! 絶対にだ!』
―――◇―――◇―――
「意外に深い……」
祠の中へ入り、下へと続く階段があったので用心しながら先へと進む。
「これ貸してくれたのは感謝よね」
手にしているのは魔力を流すことで発光する魔石で、村長さんがマチュアさん経由でわたしに貸してくれた【祠突入セット】の中に入っていたもの。
僅かなMPの消費で二メートルぐらい先まで照らしてくれるおかげで大いに助かっている。
だけど……
『一緒に入っていたこれらって何に使うのかな?』
袋の中にはタオルと生地は厚いが丈の短めな服、あとは明かりを灯すタイプではなく、熱が出て温かくなる魔石。カイロかな?
なかなか使用意図が謎なグッズ達だけど、使う機会があるから袋に入っているんだよねぇ……なんだろ? この先物凄く寒くなるとかなのかなぁ?
いつも読んでいただき、ありがとうございますヽ(´ー`)ノ




