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83話 vsハル


《ライトプロテクション》

《息吹》

《闘衣》


 わたしが戦闘開始直後に使ったのは防御力を上げる【ライトプロテクション】と、ステータスアップの【息吹】、そしては身に纏う不可視の鎧であり武具にもなる【闘衣】。

 一方ハルは、


《獣心》

《幻狼》


 わたしの【息吹】と同じ【獣心】(効果は獣心の方が上、獣人固有スキル)と、使用者の威圧が目に見えるようになりこちらの攻撃をミスさせるだけでなく、そのブレのように見えるオーラ自体にも攻撃判定がある【幻狼】(狼獣人固有スキル)。



『模擬戦で何度も見たけど……今まで威力抑え過ぎでしょ、受ける威圧プレッシャーとか全然違うし』


 ハルの後ろの景色が、熱からかそれとも威圧プレッシャーから来るのかわからないけど、歪んで見える。


「来ないならこっちから行くぜ! 《吠え声(ハウリング)》」



「!」


 ハルの口から放たれた魔力がこもった吠え声が辺り一面に響き渡る!

『普通、抵抗レジスト失敗したら行動に支障が出る厄介な技だけど』



 チリン♪



 耳元につけたイヤリングから涼しげな音がすると、無条件に吠え声(ハウリング)の効果を打ち消したことを告げる。


「厄介なものを!」

「わたしは一人じゃない!」



 ガッ



 強く突き出した拳、それをハルは大剣の腹で受ける。息がかかる程の距離、それはわたしの得意な間合い……だと思ったのに、



 ブゥン



「フンッ!」


 至近距離で無理矢理大剣を振り上げ、ガードしたわたしを強制的に遠くへ跳ね退ける。そして、あれだけ巨大な大剣をただの棒切れのように縦横無尽に振り回す!


『まったく、本気のハルって厄介すぎる!』


 ・

 ・

 ・


「どう見る?」

「9対1でハルかな、引き分けあって8対2」

「厳しいねぇ、もう少し弟子リアの優位になるようなルール……じゃあ意味がないか」


 例えるなら竜巻の中心で隙間なく攻撃を続けるようなハルに対し、リアも合間合間で反撃を試みるけど、

『さすがに手が出せないかぁ……ん?』 


「まぁ素人目から見てもハルが優勢だけど、なんとなくリアも動きが合ってきたような気がするが」

「そうね、でもそれって」



 ガシッ



「しまっ」

「捕まえたぜ」


 ハルの振る大剣の僅かな隙を突いて攻撃をしていたつもりだったけど、どうやらそれはわたしを捕まえる為の罠。

 突きを打った左手が軽くいなされるとそのまま腕を捕まれる。


「耐えてみろよ!」



 ヒュン



「うえっ!?」


 捕まれた左腕。そこから強引に引っ張られると、そのまま真上に投げられる!


『空中!? ヤバい! この状態じゃ避ける事も受け身を取る事もできない! とにかくダメージを最低限にしないと』



《金剛体》



『どれだけ耐えれる!?』



「喰らいな!」



 ガンッ!



「うぐっ」

 ハルは手にした大剣で、落ちてきたわたしをそれこそテニスのサーブみたくジャストタイミングで打ち抜く。


「げほっ……」

「金剛体を使っても衝撃までは防御できないよな」


 くっ……きっちりこちらの弱点見てるじゃないの。地面にぶつかった衝撃で少しクラってきたけど……まだまだ!



「まだやるか?」

「あたり、まえ!」

 こんなので負けていられない!



《ミドルヒール》



『慌てても意味がない。でも普通の攻撃じゃ……』


 どうする!? ハルの得意な間合いは近~中距離、わたしが得意な距離は至近距離。でもハルは至近距離も苦にしない……ヒットアンドウェイ? それとも隙を突いて投げ?

 ……ダメだ、どれも返されるビジョンしか見えない!?


『どうしたら良い? どうやったら……』



【もっと自分に自信をもって】

『えっ』


【大丈夫、わたしの全てを出しきるように】

『出しきる……』


【そう、わたし(あなた)は一人じゃないのでしょ】

『……うん、そうだよね』



 ……はは、わたしの中の【わたし】、自動生活オートモードでわたし以上に修練をこなした【わたし】に勇気づけられるなんて。でも、


『そうだよね、相手がどうとか考えるほどわたしは偉くも強くもないよね!』



 パン!



「お?」

「悪いわね、腑抜けてたっていうか勘違いしてた」

 両手で頬を一度叩き、自分に渇を入れる。


『どれだけ防がれようが、わたしの得意なもので……』


「シッ!」

 今までと同じ突き。だけど、


「シッ! シッ!」

 一発でダメなら二発、二発でダメなら三発。それでもダメなら速度上げて! 角度を変えて! 踏み込みを深くして!


『ガードされるのも当たり前、だったら次をもっと速く! 鋭く!』



「くっ」


 ハルがなんか声を出してるけどブラフかもしれないから無視無視!


「調子に……」

 ん、ハルから感じる力が異常に上がって


「乗るなぁぁぁぁ!」

「きゃっ」


 ハルを中心として爆発的に威力を伴った風が吹き荒れ、円の縁ギリギリまで吹っ飛ばされる。

(距離が……でも、また一から始めて)


「そんな隙は与えねぇぇ!」

『えっ、うそっ!?』


 気がつけば、ハルがひと振りすれば届きそうな位置にまで近づいてきている。

『たぶんダッシュからの斬りつけだけど……どう避けても当たるし、後ろは場外扱いだから下がれない』



【もっと回りを、相手を感じて】

 もっと感じる!? 相手を……ハルを。ハルは……何を狙ってる? さっきは何をした?

『さっきのハルは……だったら!』


チッ!」

 上でも横でもない、間合いを無視して前へ……ハルに向かってダッシュする!



「なっ!?」

 自分の予想とズレたのことに迷いが出たのかハルの動きが少し遅れる。



 ガシッ



 至近距離でわたしの拳とハルの大剣が再びぶつかる。だけど前とは違う、何故なら、



《鎧通し》



 大剣の上からでもお構いなしに【鎧通し】を当てる。そして、



《千枚通し》



「うおっ!?」

 これも大剣の上から無理矢理当てる。ダメージはそんなに通ってないけど、技の効果でハルの体勢が崩れる。



『後はここに……違う、ダメ!』


 追撃を入れようかと思った瞬間、不意に感じた嫌な予感のようなものに従い、脇からハルの背後の向こう側へ抜ける。


「良い読みするようになったじゃないか」

「やっぱり、危なかったみたいね」

「ああ、あのまま間合いに来ていたら、フルスイングで振るった大剣に吹き飛ばされてただろうな」


 あっぶな。


「時間はまだある、続けるぞ」

「もちろん」



 足元を見れば、ほぼ模擬戦を開始した位置……再びここから戦いを始める!



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