79話 目にしたものは
「とりあえずコレを羽織りなさい!」
「あ、はい」
女騎士は自分が身につけていたマントを外すと、わたしの肩にかける。
「ファナさん、勝手なことを」
「こんな状態を放置したら、今度は我々が異邦人になんて言われるか想像しなさい!」
あれっ、なんだか隊長と立場が逆転していませんか!?
「あなたもあなたよ、今は緊急事態だから鼻を伸ばすようなバカはいないでしょうけど、襲われても文句言えないような事をしているのよ!」
「す、すみません……」
うっ、何だろう……言われていることも当然なんだけど、それ以上に逆らえない雰囲気というか、オーラが出てる。
『まるでマチュアさん並だし……』
「あなたの意思はわかりました。実際に治療の手が欲しいのも事実、ですが自由に行動させるほどの信頼をあなたはまだ持っていません。だから」
ファナさんと呼ばれた女騎士は腰から短剣を抜くと、自らの指先に少しだけ傷を作り出血させる。
そして、
「手を出して」
「はっ、はい」
差し出した手の甲に自らの血を使い、何やら魔法陣のようなものと、わたしには読むことが出来ない文字を書く。
「あなたの力がわからないからどれだけ有効かはわからないけど、少なくともその印がある間は攻撃をしようと考えない事。もし、攻撃の意思を持った場合には、その印から全身に激痛が走るから覚悟しておきなさい」
ファナさんがそう言うが早いか、血で書かれた印が鈍く光ると体に何か電気が走るような感覚が。
なんだか流れとはいえ、わりと物騒なものを仕込まれたような気がするけど……ま、まぁとりあえずこれで入れるようになったのかな?
それにしても、
『わたしとそれ程変わらない身長なのに凛とした佇まいで、貫禄というのかな……とにかく今までに会った事がないタイプの人かな』
鮮やかな金色の髪は、邪魔にならないように後ろで纏め上げられながらも美しさを保っておらり、吸い込まれそうなコバルトブルーの瞳は宝石のように美しく、同性から見てもドキっとするレベル……
「どうかした?」
「い、いえ何でもありません」
あっぶない、思わず見惚れちゃってた。
「ついて来て」
彼女に先導してもらう形で村に入ると、外からは想像出来ないほどに破壊された建物がいくつか目に入る。
よく見れば食事時だったのか、壊れた建物には準備が途中になった食卓が散見された。
「酷い……」
「ええ、まったくよね」
「何をすればこんなことに?いくら冒険者に力があっても、建物をこんな状態に破壊するなんてとても……」
「建物を始め、この村が受けた被害の大多数は山神様の怒りの結果よ」
「山神様?」
「この辺り一帯をお護りする土地神様の事」
なるほど……
「その山神様に挑んだバカな異邦人によって、これだけの被害が出たの。山神様に挑むのは勝手よ、それ自体は止めやしない。
しかし、己の身の丈に合わない事をした結果、自らの保身の為に山神様の怒りをこの村に擦り付けた。
……この村はそんなバカな奴等の身代わりにされたのよ」
「そんな……」
あまりの事に言葉を失う。
村の人達には一切関係が無かったのに、戦いによって狂乱していたであろう山神様を村へ連れて来て、自分達に向いていた敵意を擦り付けるような事をするだなんて……あまりにも酷すぎる。
「ここだ」
先導されついた先は村にある教会。その中ではすでに先行していた二人が治療にあたっていた。
簡易ベッドとなったイスには、少なくとも五十人以上が横たわっている。中には年端もいかない小さな子どもまで……
「失礼します!」
いても立ってもいられなかったわたしは、ファナさんが何かをいうより先にマチュアさんの近くへ向かう。
「リア、来れたのね。でもその姿は!?」
「それは後で、とにかく今は」
わたしはそういうとジッとマチュアさんを見る。
すると、何かを悟ってくれたのか
「……わかったわ。辺りをザッと見たところ、山神様の攻撃を直に受けた人は少ないけど、受けていた場合には高確率で傷口が化膿しているわ」
「では、やや乱暴になりますが、化膿部分を切開しながら失った皮膚や肉体を【リペアボディ】で治療し、【ヒール】を併用しながら傷口の回復を?」
「そうね、少しやる内容はレベル的に高いけど」
「大丈夫です、ハバスさんに鍛えてもらっています!」
そうして、わたしは山神様の攻撃を受けてしまった住民達を主に受け持ち、ロイズさんとマチュアさんは全般的な治療を受け持つことを決めると、手分けしながら速やかに治療のを始めていった。
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「なんとか終わったようね」
「はい、かなり危なかった方もいましたが、もう大丈夫かと……」
建物を訪れたファナさんが差し入れとして、果物類を袋に入れて持ってきてくれた。
「色々とすみません。こうやって皆が入る事が出来るように手配と、休めるような建物まで用意してもらって」
教会で治療を始めてから約四時間程経ったころ、ようやく怪我をしていた住民全員の治療を終了することができた。
今は村から用意してもらった建物で、関の外にいたハルやロキシーさん共々逗留している。
「なに、村長としても住民感情を考えたらリア達が目につかないよう一箇所にいてもらった方が良いのだろうよ。それに君達のおかげで住民が助かったのも事実だ」
話しを聞くと、この村で治療できる人は教会の司祭さんだけであり、治療の殆どを司祭さんのヒールと、ポーションや傷薬を使っていたものだった。
もし、わたし達が来ていなかったら治療が行き届かず、最悪の事態が起きていてもおかしくなかったらしい。そんな事になっていたかもしれないと考えたら……
『考えるのは止めよう、だってみんな助かったんだから』
もしもとはいえ、イヤな事を想像するのは心が苦しくなる。
ちなみに村長に掛け合ってくれたのもファナさんだと聞いている。もしかしてファナさんって凄い人じゃ……
『あ、そうだ』
「ファナさんすみません、お借りしたマントですが治療時に血や膿が付いてしまって汚れが……」
わたしはそう言いながらマントを脱ぐ。
「ちょ、ちょっと待って!」
「はい?」
何を待てと?
パサッ……
「リア! だからあなたはまだ服を!」
『……あ』
脱いだマントを速やかに拾ってから纏い直すと、思わずその場にしゃがみ込む。
辺りを目だけで見ると、マチュアさんに目潰しをされているロイズさんと、ロキシーさんからタオルを顔に投げつけられたハルの姿が……
「もしかしてリアって……そう言う趣味が?」
「ち、違います!!」
頭がボーッとして何も考えてなかったからです、本当なんですってば!
うぅ、だって青ポ飲みながらの治療なんて久々で、頭も体も疲れていたから、イマイチ考えが正常に働いていなかっただけなんだってば……
改めてファナさんが持ってきてくれた神官服を(関の所から回収しておいてくれてました)建物内の別の部屋で着替えると、部屋にいた皆に深くお詫びをする結果になりました……
いつも読んでいただいてありがとうございます!
久々にパソコンから打つと早いけど、なかなか目が滑ります。
もっと言うと、スマホに覚えている変換や略式が出なくて、かえって遅くなっているような……
さて、気が付けば節目?の70日を超えていました。
活動報告も毎日かけないぐらい、ハツカネズミが水車でクルクル回るような状況になっています。
でも、なんとか……なんとか連続100に掲載までは頑張りたい!
と、思っています。
さて、話のほうは新しい舞台へ。
地味に新キャラや新しい設定も出てきたので、裏どりならぬ裏設定を頭の中で参照していますが、たぶん大丈夫なはず……
ときたま名前間違えそうになるし、表現がおかしくなっているところもあるので慌ててアップ前に直したりしています(苦笑)
ここ最近現実パートが少ないのが(書き手的にさびしいのですが)どうかな~という感じですが、まぁアクセス安定してるから良いんだろうなぁ……
では、最後はいつもの感じですみませんが。
新規で読んでいただいた方、こんな感じの緩い……のはあったりなかったりするお話です。よろしければ今後ともお願いします!
継続で読んでいただいている方、主人公が踏んだり蹴ったり脱いだりと色々な状態ですが生暖かい目で見守ってやって下さい。
さ、週末はなんとか時間を取って少しでも文章の貯金をしておきたいなぁ……




