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72話 旅立ち

 

「短い間でしたがお世話になりました」

「いやいや、こちらこそ色々とありがとう」

 

 翌日、ディメール神殿からアルブラへ向かうわたし達をダレスさんとハバスさんが見送ってくれた。

 

 なお、トーレさんは朝一の乗り合い馬車でしかベルツへ向かうチケットが確保できなかったらしく、既にタマ共々シーレフを後にしたとのこと。

 

『挨拶できなかったのは残念だけど、ずっと会えない訳じゃないしね』

 それこそルナさんとかの関係で必然的に王都経由でベルツへ行くことも考えられるし。

 

 

「シーレフからアルブラは約一週間だったかな。道中退屈な時間もあるだろうから、これを持っていくと良いよ」

 ダレスさんは餞別代わりにと、わたしに一冊の本を手渡してくれた。題名は【初心者が覚える魔法の書】……魔法の書?

 

「リアさん、それスキルがない人でも魔法が覚えられるスキル獲得用のアイテム。初級しか覚えられないけど、魔法持たない人は垂涎ものだよ」

「スキルがない人って……わたしとか?」

「そう。実際に覚えるまでには時間がかかるけど、スキルポイント不用だから市場には出回らない」


 うは、そんなレアなアイテムだなんて!?

 というか、

 

「ロキシーさん詳しいね、もしかして?」

「うん、私も持ってる。ちなみに水の魔法書。リアさんのは表紙の色から風の魔法書だと思う」

 ロキシーさんも自分の鞄の中から、『おそろい』と言ってチラっと見せてくれる。

 

「あの……ダレスさん、凄く高そうなものみたいなんですが本当にいただいても大丈夫でしょうか?」

 貰えるなら是非とも欲しいものだけど、これを貰うことに対するお礼が何もないし……

 

「ええ、構いませんよ。そうですね……もしこの本に対するお礼を考えているなら、アルブラからこちらへ定期報告を送る際に、リアさんの作った日保ちしそうなオカズでも送るということでどうでしょうか」

「はい!」

 

 そうやってダレスさんとの縁が続くなら、こちらとしても願ったりだし。一週間だと、塩漬けしたお肉とか燻製が良いかな。

 

『できればトーレさんにも送ってあげたいけど、アルブラからベルツってもっと日数かかりそうだから、違うものを送ってあげた方が良いのかな……』

 

「ワシからはこれじゃ。今出す必要はないから、後で見ると良い」

 ハバスさんがポケットから小さめな革袋を取り出すと、中を開けることなくわたしに手渡す。

 

「はい、ありがとうございます」

 ハバスさんにもお酒のあてになりそうなオツマミを送らないと。

 

 

「では神官長、行って参ります」

「アルブラへの道は大きな街道だが、希に賊も出ることがあると聞く。道中気をつけて行きなさい。また落ち着くことがあれば、こちらへ戻れるように手筈はつけておくよ。

 皆に神の御加護があらんことを」

 

 ロイズさんが馬車の手綱を握りながらダレスさんに挨拶をする。ちなみに馬車の中にはマチュアさんとわたし、あと同行するロキシーさん。

 ハルはPAの事を話しながら行きたいとのことで、ロイズさんの横に御者として座っている。

 

 馬車の旅なんてもちろんしたことが無いし、馬車自体を見たことがなかったので、どんな馬車かも想像がつかず、てっきり荷馬車か幌つき馬車かと思っていたら、きちんと客室が存在する箱形の馬車でした。

 

 この馬車自体は王家からの貸し出しであり、普通に入手しようとした場合、五百ゴールド以上はかかるとのこと。

『ざっくり円換算しても五百万円もする物をポーンと貸してくれる王家が凄いのか、そうなるように手回ししたダレスさんが凄いのか……』

 

「それではダレスさん、行ってきます」

「はい、気をつけて行ってきなさい」

 

 目指すは水上都市アルブラ。始めていくシーレフ以外の街に期待と不安でわたしの胸は高鳴るのだった。

 

  ・

  ・

  ・

 

「行ってしまったな、ダレス」

「あぁ、まるで娘を送り出すような気分だよ」

 

 血が繋がる縁者など既にいないこの身には、あの娘(コーデリア)は娘のような存在と言っても過言ではない。

 

『ベルツへ行くと言ったら止めるつもりだったが、ロイズ達とアルブラに行くのであれば大丈夫だろうて』

 いつ戦争が起こるかもしない中で、本当ならばこの街(シーレフ)に残しておきたかったが、あの娘の成長を考えたら外の世界を見ることも大事。

 

「寂しくなるな」

 有能なロイズ、見習いから成長したマチュア、これからの伸び代が楽しみなトーレ、そして異邦人ながらも皆に愛されたコーデリア。

 

「なに、元々はワシとお前さんしかいなかったこの神殿に戻っただけよ」

「はは、確かにな」

 

 先日の毒化のような事件さえなければ、基本的には静かな街。それがここシーレフ。

 

「また神殿庁には見習いの募集でもかけておくか」

「はっ、なかなかいないだろうな」

 ハバスの言うことももっともだが、人を育てるのも神官長の務め。

 

「次にあの娘達がこの街に訪れた際に、見知らぬ神官がいたらきっと驚くだろうて。そんな顔を見ることができるなら、少しは遣り甲斐が出ないかハバス?」

「随分と割りにあわないが……まぁそれなら良いだろうて」

 口ではそう言うものの、その顔にはやる気が満ち溢れているがな。

 

「まぁ、とりあえずは今日も訪れる傷ついた者達を癒していく事から始めよう」

「違いないな」

 

 

 今日からは年老いた二人が治療するこの神殿に、がっかりする冒険者達が目に浮かぶが、我慢してもらうとしようか。

 




いつも読んで頂きありがとうございます┏〇))


久々にレビューも頂き感謝です!


夜中に風が強くてなかなか寝付けなかったこともあり、眠たい眠たい……しかもあたたかくなって眠たく……zzz



現在絶賛消した部分を書き直し中、なかなか指が動きません。タイトなのは変わらないです。

入れたい内容に、説明しておきたいところや、要らないと思うから消して、やっぱり入れたりと苦悩が耐えないというか……文才ほしぃ(´・ω・`)



いつも&新しく読んで頂いている皆様方、本当にいつもありがとうございます。

頂いたブックマークや評価はを元に頑張ります!


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