68話 投げだって格闘です
18/02/27 誤字脱字修正しました
「さて、勝敗はこの先明らかだと思うがまだやるかい? 今なら下着姿で土下座したら許してやらないこともないが」
「そういうのってハラスメントで引っ掛かるの知らないのかしら?」
「はっ、自分で脱ぐのはハラスメントにゃならないが」
「詳しいのね、そんなに年下を脱がして楽しい? それともそういった趣味?」
「……もういい、死ねや」
バンダナはそう吐き捨てると再び視界から消える。だけど、
《金剛体》
ガキン
「がっ!?」
わたしの右肩に噛みついたバンダナが、その予想外の硬さに驚嘆する。
『痛いけど我慢!』
ノーダメージとはいかないけど、相手にちょっとした混乱を与えるには十分。
「二回も同じ手は喰らわない!」
すぐさま金剛体を解除すると、至近距離を利用して膝を相手に叩き込む。
ゴッ
「ぐぇ」
カウンター気味に入りバンダナの動きが止まる!
『この隙を逃がしたりしない!』
そのまま一連の動作で相手の顎を真下から蹴り上げ大きくのけ反らせると、隙だらけになった腹部目掛けて突きを放つ!
《鎧通し》
インパクトの直後、バンダナの体が軽く宙に浮く。そこに続けて肘打ち、そして掌打。この時点で既に相手は意識を失いかけてるけど関係無い。
『さっきもそう、油断じゃないけど余裕なんてしちゃいけない!』
「これで」
その場で前方へ宙返りすると相手の両肩に足を乗せ、そこから両膝を使って相手の頭を挟み込む。
「全部」
そして自分を振り子にして反動をつけると、反動から生じた勢いのままバンダナの頭を地面に叩きつける!
「おしまい!」
グチャ
何か柔らかいものが潰れる音がすると同時にバンダナの体が量子化していく。
【Battle End】
「フゥ……フゥー……」
対戦のエリアが開放されると同時に、わたしの傷は回復。そして地面には白目を向いて倒れ、気絶状態になったバンダナが。
「お、おい」
「レブさんが負けた!?」
「とりあえずレブさんの意識が戻るまでコイツを逃がすな!」
あぁ、もうめんどくさい! こうなったら全員倒すしかない。
「おつかれさんリア」
「ハル、どうしよ?」
「ああ、コイツらなら俺がやっとくからロキシーと一緒にベリルさんを迎えに行きな。で、料理の準備終わらせてくれよ」
確かにハルの強さなら大丈夫だと思うけど、また援軍が来るかもしれないし……
「なーに心配するな。さっきのあのバトル見たら血が騒いで仕方がねぇ」
そう言うと、ハルの顔が銀色の毛に包まれていく。
「コイツも獣人だぞ」
「か、構わねえ!」
「よしよし、良い子だから少しは楽しませてくれよ」
ハルを中心に出る対戦のエリアは、さっきまでわたしが戦っていたのとは異なるフィールド表示。
……ちょっ、これてバトルロイヤルじゃないの!? 相手は十人以上いるのに!
だけどハルは不安どころか楽しそうに大剣をブラブラ振りながら早く行けと合図している
「もぅ、そんな無茶して!負けたら承知しないからね」
「ノーダメで勝ったらデザート追加な」
まったくこの戦闘狂は。
「……ごめん、よろしく」
「おぅ、任された!」
とりあえずここはハルに任して。
「ロキシーさん、ベリルさんの所に行くよ」
「了解です」
・
・
・
その後、ベリルさんを迎えに行ってから神殿に戻ると、既にハルが調理場にいた。
「えっ、早すぎじゃない!?」
「いやぁ、一人サクッと殺ったらみんな逃げ出しちまってな。かなり消化不良だよ」
どんな葬り方をしたんだか……
そうだ。
「街の中というか、フィールドでの対戦って何気にアレが初めてだったんだけど、前にハルとニーナが戦っていたのとはちょっと違ったような?」
「ああ、あれはルナの魔法《次元遮断》で作った特殊エリアを対戦用に使った奴だからな」
「何が違うの? なんとなくエリア表示の壁の色は違ったみたいだけど」
今さっきわたしやハルが戦った対戦エリアの壁は無色でエリアの境界に光る線と見えない壁があった。でもルナさんが作ったという対戦エリアの壁は虹色に光っていたような……
「簡単に言えば、ルナが作ったのはある程度時間の流れを変えられるフィールドで、尚且つ対人だけじゃなく対PAもできる仕様だ」
なるほど、PAの対戦もできるんだ。
「まぁ、元々は魔法やPAの試験用に開発された魔法らしい。ほら、威力を試したいからって山や河といった地形を破壊するような高威力の魔法をところ構わず放つ訳にもいかないだろ?
そんな時に《次元遮断》を使うことで、一旦は破壊されても効果時間が過ぎれば元に戻るから、高レベルの魔法使いにとっては必須らしい」
「確かに魔法を試し撃ちして山がなくなりました~じゃ不味いものね」
「あと時間の流れって?」
「体感時間は一時間でも、実際の時間は数秒で済むぐらいエリア内の時間が操作可能出来るってこと。結構便利だぞ」
なるほど、まだまだ知らない事が多いなぁ。
ま、とりあえず。
「残り仕上げて素敵な大送別会にしないとね」
「よしっ、やるか!」
大送別会が始まるまでの残り時間、ハルと協力しながら前菜からデザートまでの仕上げに取りかかった。
頑張らなくっちゃ!




