63話 思いと覚悟
のじゃのじゃのじゃ~
「ディメール様、いらっしゃいますか」
その日、ログインして向かった先は神殿内にある祭壇の間。こちらの時間だと朝六時だから早すぎたかな?
『いや、妾達には時間の概念は無いから問題はないが、いったい何の用かえ?』
……なんだか朝早く起こされて、不機嫌になっているような声に聞こえるのですが。
「はい、一つお願いがありまして」
「ほぅ、妾に願いとは」
わたしの申し出が気になったのか、以前と同じく光と共にディメール様が実体を現す。
「実は……」
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「ふむ、本気かえ?」
「はい、わたしがこの世界で生きていく上で、どうしてもそうありたいと思いました」
「だが、それはあくまで【貴様の物差し】で考えた事であろう? そう決めたからと言って」
「それがわたしの我が儘で、この世界に対し何一つ意味の無いことだとは十分承知しております」
「……ふむ、意思は固いか」
ディメール様はそう言うと目を瞑り、数秒してから改めてこちらを見る。
「そなたの覚悟はわかった。だが妾には貴様が望む【それ】をする力は無い」
「そう……ですか」
思いつきレベルだから仕方がないのかな。
「じゃが、【それ】を出来る奴を紹介してやることは可能じゃ。もっとも、其奴が貴様の言うことを素直に聞くかどうかはわからんがの」
「はい、それでも構いません」
例えそれではダメだとしても、他にも何か手があるかもしれない。
「まぁ良い、では夜に再び此処へ来るがよい」
「お手数をお掛けします」
「ふふっ、構わぬ。貴様の選んだ道がどうなるか妾も楽しみになってきたわ、カカッ」
―――◇―――◇―――
朝の治療担当が終わってから昼食。その後は前回と同じくタマに付き合ってもらい素早さを鍛える修練に。
「そこっ!」
「ニャッ!」
ジグザグステップするタマに対しフェイントをかけてから、一気に間合いを詰めると両手でタマを抱き抱える!
「あら、今日はいつもより動きが良いわね。なにかあったのかしら?」
「少しだけ気持ちが固まりつつあるのが動きに出たのかもしれません」
「気持ちが動きに出るのは良いことだけど、あまり無理しちゃダメよ?」
マチュアさんも何かを察したのか、わたしをジッと見てからポンポンと肩を叩く。
「そうですね、きっと話したらマチュアさんに呆れられるかもしれませんが、自分の中のケジメをつけておきたいと言いますか……」
「あなたが決めたことに呆れたりはしないわ。ただ私から言えることは後悔しないようにってだけ」
「はい」
その後も修練、特に格闘の熟練レベルが上がったことで覚えた闘技について、マチュアさんに実践的な使い方を習い、その流れからマチュアさん個人の闘技も教えてもらうことに。
ただ、こちらについては正規な取得とは異なるからか、習得するのには暫く時間がかかりそう。
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そして夕方に。
今日の夕食は豆のトマト煮の豚肉入りと、グリーンオークの肉を使った熟成焼豚。あとは定番となりつつあるパスタ料理からアラビアータ。やっぱりニンニクと赤唐辛子が手に入るようになると、作れるレパートリーが格段に増えます。
ちなみにグリーンオークは菜食主義なオークではなく、頭に緑の羽飾りを付けたお洒落なオークで、街の東にある谷で繁殖していたところを冒険者達が徒党を組んで殲滅したらしく、大量のオーク肉が市場に流れ値崩れしていたので買ってみた。
癖はなく、やや淡白だったことから敢えて焼豚にしてみたらかなり美味しかったので、更に仕入れて作ったのでストックもバッチリ!
ちなにハバスさんがお酒のおつまみとして評価が高く、毎食出して欲しいとのリクエストをいただけたのが何気に嬉しかったり。
その後、皆が自室に戻ってから約束通り祭壇の間に来ると今までとは違い、床に何やら魔方陣が浮かび上がっている。
『その中に入るが良い。さすれば勝手に道は開けるわ』
「あ、はい」
この先に何があって、どんな方がいらっしゃるのかはわからないけど、とにかく行ってみるしかない!
トン
覚悟を決めて足を踏み入れる。
「すごい……」
その瞬間、回りの景色が一変すると石造りだった部屋が、一面大小様々な水晶に囲まれた洞窟のような場所に変わる。
『あれっ』
見てみると水晶は二種類あって、青い水晶と赤みを帯びた水晶が。それによく見ると水晶一つ一つにうっすらと文字が刻まれているような?
「ここにある水晶全てが、この世界で生きている民と異邦人の記録媒体を兼ねた、魂の仮の姿だとしたら君は驚くかね?」
「!」
さっきまで何も無かったはずの場所。いつの間にかそこにはロッキングチェア座る一人の子供の姿が。
『……違う、子供じゃない! この感じは人ではなくディメール様と同じ……』
「まぁ、君達の呼び方では神となるのかな」
手にしたカップをテーブルに置くと、わたしを手招きして呼び寄せる。
「改めて名乗るとしよう、ワシがここを管理しておる【時神モルフィス】だよ、人の子よ」
優しげに名乗るモルフィス様。しかし、口調とは裏腹にディメール様やフレリアさんとは異なる、相手に従属を促させるような威圧に思わず唾を飲み込む。
「なに、それほど緊張するものでは無いよ。別に君を捕って喰らおうなどせぬて」
「はい……」
ジッとこちらを見るモルフィス様は興味深げな顔をすると、周りをぐるりと見てから話しかけてきた。
「まぁ、君が緊張するのは無理もないだろう。何せワシは苛ついているからね」
「すみません、それはわたしが?」
「勿論」
うわぁ、なんか最初から最悪の関係なんですか!?
「ワシはここで君達で言うところの【セーブ】と【ロード】を管理しておる。そしてここで冒険者全ての営みを見ているわけだ。
そうだな……君の場合なら、強化種トロールとの戦いはなかなかに見事な散り際だったね」
「お、お恥ずかしい限りです」
「いや、ワシは感心しているのだよ? どう考えても無謀な戦いをあそこまで渡り合うなど、並みの異邦人では出来ぬと思うよ」
「ありがとうございます……」
モルフィス差は表情は悲しげでありながら口調は優しく、だがこちらがすくむ程の圧をかけて話しかけてくる。
『感情と口調、そして受ける威圧がここまで噛み合わない方は見たことが無い。いったいこの方の本心は』
「全てだよ」
ああ、この方にも全て筒抜けですか……
「さて、ではワシが何故にそう思っているのか話してやろうか」
モルフィス様はニヤリと笑いながら話始めた。
いつも読んで頂きありがとうございますm(_ _)m
どうしても、命が絡む話って考え方が難しいです。
まぁ素人が書いている話ですから、そこまで深い考えは不要かな〜とも考えるのですが、千差万別なところに自分の中ですらキチンとした答えが出せるとは思わないながらも、
この辺りだけで二週間はとまってます。
考えすぎなんだろうな〜はぁ(´・ω・`)
いつもブックマークや評価ありがとうございます!




