61話 去り行く日々
「はい、午前の修練はここまでね」
「ニャアァ」
「あ、ありがとうございました」
相変わらずというか、神殿は(良い意味で)暇な状態。そのおかげもあって、マチュアさんとの修練も頗る順調というか、たくさん時間が割かれています。
しかも、修練内容についても色々と変わってきており、自分の熟練度がステータスを見なくても徐々に上がってきているのがなんとなくわかる。
ちなみに今朝の修練内容はタマ(トーレさんテイム猫型魔物)を捕まえるという一見簡単に見えて予想以上に大変なメニュー。
猫型ということもあり素早いのもあるけど、魔物としての特技で数秒とはいえ幻術が使えることもあり、あと一歩というところで逃げられてばかり。ちなみにタマも修練ということがわかっているのか、それとも単におちょくっているだけなのか、とにかく普段以上にジグザグステップやフェイントターンをかけてくるから手におえない。
「リアも最初のころに比べると格段に体力ついたし、俊敏性も別人レベルまできたわよ?」
「そう言ってもらえると頑張った甲斐があります」
といっても、まだニーナやハルの足元にも及ばないしなぁ……プレイ時間は違うけどさ。
最近は午後の修練で縛りを入れた魔物狩りを取り入れていることもあって、レベルもやっと11が見えてきた。やっぱりこうやって目標が見えてくると俄然ヤル気も出てくるけど、早く上げたい気持ちに比例して攻撃や防御・回避が粗くなり、マチュアさんから怒られることも。
改めて基本を忘れないよう、行動が疎かにならないようにするのは大事なことと痛感する毎日です。
「そうだリア、夕食の後に話したいことがあるから時間空けておいてね」
「はい」
なんだろう?
良い話だったらいいけど、なんだかちょっと違う感じ。まぁ深刻な話なら、マチュアさんの言い方ももう少し変わってくるだろうし……
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「もしかすると、神官のうち誰かがここから移動するのかもしれないな」
昼食が済んだころにログインしてきたハルに聞いてみると予想外の答えが。
「え」
「だってここも毒化の騒ぎが収まってすっかり普通の初期村になったようだし、帝国との国境付近じゃ少しずつ緊張感が増してきているって話だから『来るべき日に備えて』とかあるかもしれないなと思ってな」
そういえば以前ルナさんから聞いていたけど、やっぱり国家間の戦争が起きるのかな……
ハルの話だと帝国では軍隊再編の情報や物価が上がり続けていることから、戦争が起きるのはほぼ間違いないと言われているらしい。あとはどこを相手に戦火を切るかという話で、今のところ共和国か王国かと言われているとのこと。
「もうそろそろ一度所属していた国に帰ろうかと思っていたけど、戦いが始まるならしばらく滞在延長だな」
「まぁハルは強いから良いけど、初期村まで戦線が伸びたらわたし達みたいな低レベルには一大事だよ。それにこの世界の住人は戦争で死亡したら蘇生できないから……」
知り合いが亡くなってしまうような事は起きて欲しくないけど、この世界の住人達が自分達の考えで戦いを始めるのであれは、異邦人と言われるわたしには止める権利なんかあるわけが無い。
『とにかく一人でも知り合いを助けられるように自分が出来ることを精一杯やるだけよね!』
夕食後、ゲスト扱いのハルも含め神殿にいる七人全員が食堂に残ると、ダレスさんが話し始める。
「皆、それとなく耳にしているだろうが帝国が再びキナ臭い事を始める可能性がある。そこで我々神官にも王家からその時に備えるよう依頼が出ている」
「依頼じゃなく命令だろうに」
「まぁモノは言い様よね」
ロイズさんとマチュアさんはストレートだなぁ。
「我々に出来るのは癒しだが、中には戦場の真ん中で暴れる方が似合ってそうなのもおるがな」
ハバスさんは笑いながらマチュアに視線を送る。
マチュアさんは『あはは~』と目線を明後日の方向へ向ける。
「マチュアとロイズは西の水上都市アルブラへ、トーレは北の城塞都市ベルツへ移動して欲しい」
え~っと、城塞都市ベルツは名前の通り強固な城壁を要する対帝国の最前線都市で、数多くの冒険者が滞在している場所だから回復魔法が使える神官に要請が来るのもわかるけど、水上都市アルブラは王国の西に位置して、エルグラ公国の近くにある都市だったはず。
確か王国でも三本の指に数えられる交易が盛んな所で、尚且つPAに関する様々な技術も王国内では最も進んでいると言われていたかな。とはいえ、帝国と戦争になるとしてもそこまで戦火は……
「チッ、噂は本当ってことか。このままじゃ帰るとかの前に自分の国に帰る道が封鎖されちまう」
ハルが吐き捨てるように悪態をつき、合わせるようにダレスさんがゆっくり頷く。
「噂って?」
「公国が反帝国連合を裏切り、帝国側につくんじゃないかってな」
ちょっと待ってよ、それって……
「前回の帝国が起こした戦争は、攻めた際に各国がどのように動くかの試金石だったということよ」
「そして公国は反帝国としての共存より、帝国と共闘してでも王国を滅ぼしたいのだろうな。それによりあの国が属国扱いになろうともな」
マチュアさんとロイズさんも苦虫を噛み潰したような表情で答えてくれる。
「さて、リアさんはこれからどうするかね? 見習いだから国からの束縛は受けない、自分が思う通りにしてもらって構わないよ。
私やハバスと一緒にこのままシーレフの神殿にいるのも構わないし、友人達も行くであろう最前線となるベルツに行くのも一つの選択肢だ。PAの研鑽の為にアルブラへ行くのも良いだろう。ただ、あそこは少し厄介かもしれないがな」
「厄介ですか」
「都市としては過ごしやすく交易が盛んなこともあり、非常に活気に溢れている。だがその裏では都市の覇権を競いあう貴族共が水面下で色々なことをやりあっているともっぱらの噂だ」
うわぁ……それは確かに厄介かも。
「まぁ、勿論それを選択するのもありかもしれんがな。ただ、今のような生活はできなくなるかもしれないから、とりあえず今から七日後をリミットとしてよく考えなさい」
『わたしがどうしたいか……か』
ダレスさんからもらった猶予。
ゲームの中とはいえ、わたしにとって大事な選択にどうすべきか悩むのだった。
いつも読んで頂きありがとうございますm(_ _)m
日常パート、苦戦に負けずなんとか乗り切りました。
どうしてもゲーム内パートとは異なり、面白み成分が欠けるというか、わくわく感がでないのが書き手の才能がないところです(´・ω・`)
なお、ここからは書き手一番頭を使って、未だに修正をしていたりする話が始まります。
この話を書き始めた時からの、自分の中のテーマなくせに、ブレそうになってます。
たぶん、読まれている方は『いや、おかしくない?』と思われる方もいらっしゃり、つまらないと思われる方もいらっしゃることになるかと考えます。
この辺りは真摯に受けつつも、主人公が選んだものを読んでいただければと考えます。
さて、あとはいつもな話で。
新規で読んで頂いた皆様、なかなかに話が進まずスミマセン。こんな話でもよろしければ、引き続き読んでいただければと考えます。
継続して読んで頂いた皆様、話が読み手と噛み合わないところも出るかもしれません。
できれば生暖かい目で見ていただき、なにかありましたら感想やコメントでいただければと考えます。
ブックマークや感想、評価など皆様からのご指示でがんばれております。よろしければ引き続きお願い致します┏〇))




