54話 出会いに感謝(主人公視点ではありません)
「ふぅ、今日もいろいろあったな」
所属している国を離れたのは現実で三日前だから、ゲーム中だと九日前か。その移動ログの統合からすでに重かった。
首長国から王国までは殆ど自動生活で移動していたとはいえ、その行程の苦労や疲れが無くなるわけじゃない。統合することでキッチリと拾ってくるから、なんだかんだと大変だったのは嫌でも記憶として経験させられる。
いっそのことPAで移動できたら楽なのだが、そうすると色々と面倒な事になるのは目に見えている。さすがに進んで厄介事を背負いたくもないし。
「危険人物にはなりたくないからなぁ……って、そういや今日犯罪者になりかけたんだった」
タイミング良くリアが通ってくれたから助かったものの、アレはヤバかった。
「それにしても、あの対戦は恥ずかしかったな」
意表を突いた攻めには何時だって気を付けていたはずなのに、リアのレベルを聞いたことで緊張感を抜いてしまい、起こしたくだらない凡ミス。最終的な勝ちは自分だったとはいえ、あれで勝ったなんて自分を誉める気にはサラサラない。
逆に自分の強さを話していた分、あの結果は『情けない』の一言に尽きた。
それにしても、
「レベルに見合わない強さ。そしてあれだけの作成にスタイルだと……」
手元にあった携帯端末を操作し、関連しそうなワードから検索をかけてみると、思った通りリアは人気なプレーヤーだった。
と言っても、あくまでプレーヤー達が非公式で行っている人気投票のを結果だから、本人には何も知らされていないし、リアの場合は例えその結果を知ったところで「はぁ……」と言って終わりそうだが。
というか、
『アクシデントとはいえ、リアのスカートの中を覗いなんて知られたら吊るされるな』
うん、秘密にしておこう……といっても、頭の中のメモリーにはあの時の映像が鮮明に焼き付いているから、正直なかなかに忘れられそうにはないかな。
「みんな良く描いたり調べるものだな」
スクリーンショットは撮れてもゲームのセキュリティ上、そのデータはPAWの中からは取り出せない。にも関わらず、似顔絵やスクリーンショットみたいな画像がギャラリーとして飾ってあった。
他にもリアについて調べてあるのを見てみると、まとめた人を尊敬できるほど詳細なことが記載してあった。まぁ、ちょっと間違えたらストーカーっぽくなりそうなのはどうかとも思うが……
ま、それはさておき。え~っとなになに……
・
・
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「なるほどね、聞いていた通り神殿で治療の担当してたんだ」
プレーヤーが神殿の職員になるって聞いたこと無かったが、実際になったリアがいるから依頼やシナリオによってはなれるんだろうな。
しかし、読んでみた限りだと神殿の振る舞いについてや治療室にいる時の話。あとは神殿におけるマスコット的な位置だとか、治療の様子や応対・使う魔法などについてばかりのみ。
色々な人達が記載することからでヒットするけど、当たり前だがリアが作る料理の事などは出てこない。そういう意味ではあそこで財布を無くしかけたヘマも、リアと知り合いになれる切っ掛けだったと考えればプラスだったと思えるな。
「格闘については……あった、これが例の依頼にあった毒されたトロールか」
ただでさえ通常のトロールが毒化しているのに、それが強化種になっているわけだから強いとかの範疇に収まってない。
『戦えるものなら俺も戦ってみたかったな』
レベル20代が即死させられる相手なんて楽しいじゃねぇか。
ちょっと特殊な依頼だと内容や討伐相手などを書くことがマナーとされている事もあり、色々詳細なことが書いてあった。
ただ、それは『有名クランがイベントに絡んだら依頼を仲間と一緒にクリアした』という事が基本に書いてあるだけで、余程目立ったことをしない限り誰がどんな活躍をしたまでは書いてはいない。しかし、
『格闘スキルを持つ神官が、強化種トロールと三十分にわたる戦いをした』
という一文を見て、これがリアの事だと推察できた。
「あきらかにレベルオーバーの相手に三十分の戦闘か……」
俺に同じことが出来るかはわからないが、ほんの一手も間違うことができない薄氷の戦闘をそれだけの間することは並大抵の奴には出来ない。
マチュアさんとの対戦や修練は楽しみなことにかわりはないが、リアとの修練もなかなかに面白くなりそうだ。
ピラリン♪
熱くなれそうな出会いに感謝しつつ、明日の予定を調べていると携帯端末から着信を知らせる音がなる。
『兄さん、そっちに着いたら連絡するように言ってあったのにどうして連絡ないの!』
思わずスピーカーから耳を遠ざけたくなるような怒声が雪崩のようにやってくる。
……いや、そこまで怒らなくても良いと思うのだが。
「あぁ、悪い! こっちには無事に着いているよ。つい、PAWの方で自分が目的地に着いたから、そんな気になってたわ。それにPAWにログインして調べているうちに色々あったからさ」
『まったく……』
我が妹ながら心配性というか、なんというか。
『で、王国は楽しめそうなの?』
「おかげさまでな、良い出会いもあってかなり楽しめそうだよ」
『現地の人に迷惑かけないでよ』
「あぁ、善処するさ」
『リアとの絡みは絶対に言えねぇ……』
妹の鋭敏な嗅覚にかからないよう、俺は今日あった出来事を説明していった。
いつも〜読んで頂いてありがとうございますm(_ _)m
本日も無事にアップできました。
……アップ直前に誤変換を見つけて直していたので、ちょいギリでした(´・ω・`)
一つ一つ積み重ねで成長していく主人公ですが、希望するものと現実とがなかなか近づかない状況下は暫く変わりそうになさ気です。
他人が持つスキルや装備が羨ましく輝いて見えるのも仕様ですよね〜
さて、世の中バレンタインで書き手さんによってはバレンタインイベとか書き下ろしたりされてますが、ウチにはありません(´・ω・`)
というか、ササッと書けてしまうのが羨ましい限りです……文才ほしぃ。
はい、あとはいつものですみませんが。
新規で読んで頂いた皆様、いらっしゃいませ。スローと呼ばれたり、話が読みづらいとか言われたりされているかもしれませんが、一つゆるりと読んでいただければ幸いでございます。
継続して読んで頂いている皆様、いつもありがとうございます。たまにブックマークが減っていると凹む書き手ではありますが、継続して読んで頂いる方々のおかげで頑張れております。
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……さぁ、続き考えなきゃ。




