5話 とりあえずオレンジジュース
あけましておめでとうございます!
なんとかデイリーアップできてます!
そして、やっと世界の入り口に(´;ω;`)
※1/15 文頭部おかしいところを修正しました
※1/21 誤字・脱字修正しました
異邦人たちがこの世界で最初に訪れる場所。
そこに神と言われる存在が現れるのも珍しいが、その神が二人揃っていることは異例なことだろう。
緊張した空気が張り詰める中、私は目の前の相手に話しかける。
「確かに祝福を与えたわ。でも彼女には祝福を力とする前に越えなければならない試練がありますから」
「おいおい、【アレ】をしたのか?ならば与えた祝福も無駄になる可能性が高いな。過去何人もいないのだろう?アレから始め、実となった者など」
彼女は呆れたような、興味深いような曖昧な表情をする。実際、彼女が言う通りアレから初めて無事に成長した異邦人は私が知る限り二人だけ。
でも、
「そろそろ彼に対抗できる駒が欲しいのよ、その為には多少の無理もしてみるわ」
久々に現れた、彼と同じ打たれ強く、諦めが悪く、周りを活かし・活かされる子。
祝福などアレの副産物でしかない。
実となれば良し、途中で終わればそれまで。
『過度な期待はしない、でもあなたの存在に少しだけチップは掛けさせて貰うわ、リアさん』
―――◇―――◇―――
(……ア……、リア)
あれ、なんだかわたしを呼ぶ声がするような……なんだっけ?なにしてたっけ?
「リア!聞こえる?寝てるの?」
すぐ近くで大きな声がする……
「……んっ」
かなり重たく感じた瞼をゆっくり開けると、目の前によく知る人物と似たの顔が、ぼやけた感じで見え始める。
ややアップ気味なボブカットは濡れたような黒髪で、大きく見開かれクルっとした瞳も吸い込まれそうなほど黒い。
この世界に来て二番目に見た顔は、知り合いの顔によく似ていた。
「はぁ、もうビックリさせないでよ。なかなかインして来ないわ、インしたかと思ったら召喚門からまったく動かないわで何が起きたか心配したわよ!」
わたしより頭一つ小柄な女性が頭上に怒りマーク?を付けながら、まくし立てるように話しかけくる。
「あ、うん、ごめんねカナむぎゅ」
「ちょっ、ストップ! ストップ! いきなり名前言わない!」
彼女は慌ててわたしの口をその手で強引に塞ぐ。
「とりあえず今パーティー招待するから、続きはその中で。ok?」
わたしが頷くと視界の端に【ルナ・ストーンゲートさんからパーティー申請が来ています、承諾しますか?】と表示されたので、声に出さず『はい』と答えるとピロリン♪と音が鳴る。
『パーティ会話で話しているから周りには聞こえないわ。あと、その容姿はちょっと目立ちすぎるから場所変えるわよ』
わたしはコクコクと頷くと、やや駆け足で進む彼女の後を着いていく。
―――◇―――◇―――
『ここよ、さぁ入って』
そして着いた場所は仕切りのある雑貨兼喫茶店。なるほど、こういう場所もあるんだ。
彼女に先導されるまま、入口から近くの個室へ入る。その部屋は木の壁とちょっとしたインテリアが置かれた、シンプルながら落ち着いた部屋で作った人の趣味の良さが伺われた。
『ふぅ、いきなりで驚いたけど……まぁいいわ』
彼女はやれやれとジェスチャーをすると改めて話しかけてきた。
部屋に入ってもパーティ会話は継続なんだ。
『今更間違っていても困るのだけど、阿里沙でいいんだよね?一応ニーナから聞いたプレイヤーネームと合ってるから』
ニーナ……あ、那緒のゲームの中の名前か。
んで、目の前にいるのが要さん改め、
『うん、大丈夫合ってるよ。ありがとルナ・ストーンゲートさん。ちなみにこの街は?』
『ここはアステリナ王国にある最初の街シーレフよ。あとフルネームで呼ばれるのもなんだからルナでいいわ』
最初の街シーレフ。見渡す限り、街の風景はヨーロッパ中世な感じっぽい。
石畳で舗装された地面はきちんと整備されているし、建物は木材と石材で建てられていて、よりらしさを醸し出している。
ただ、現実世界より道路の幅がニ~三倍ほど広くなっているのが特徴かな。
『焦ったら喉が渇いたわね』
ルナさんはテーブルに置いてあるテニスボールぐらいの大きさの黒い石に触れ、
「オレンジジュース二つ」
と話しかける。どうやらあれはインターホンのようものになっているみたい。
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しばらくすると扉がノックされ、オーダーしたオレンジジュースが二つ運ばれて来た。
ルナさんは『これぐらい奢るから遠慮しないで飲んで』と言うと自分も飲み始めていた。
『……これ、凄く美味しいです!』
やや大きめのグラスに注がれたオレンジジュースに氷が浮かんでいることもビックリしたけど、一口飲んでその美味しさにもっと驚いた。
『こうやってVRMMOの世界で飲食したものは、現実世界よりもより鋭敏に感じるみたいね。あと電気文化はこの世界には無いけど、魔法や魔石で様々なことが出来る世界だから割と快適に過ごせるわ』
そういえばこの個室も少しだけひんやりと感じるけど、冷房代わりの魔法が使われているのかな?
『さて、それよりも何があったの?疲弊しているというか、消耗しているというか』
周りの風景等に気を奪われていると、ルナさんがわたしの状態を見て質問してきた。
なにが……なにかがあったような……ん~……あ、
『色々ありすぎで記憶飛んでた。大変だったよ、本当に。VRMMOっていつもこんな大変なの?特にフレリアさんに魔法?でピカッとしてビリビリってしてバタン!ってなったのは、驚いたし痛かったしで散々だったんだから』
『……ごめん、何言ってるかよくわからない』
ルナさんは眉間にシワを寄せて端的に答える。
『まずフレリアって戦神だし。しかもチュートリアルで傷みなんて感じないはずよ?
痛覚設定はレベル11からしか触れない設定だから痛みを感じる・感じない以前の問題だし。
夢見てたってわけじゃないとは思うけど……リア、悪いけど何があったか最初から話してもらえない?』
『えーっと……』
とりあえずわたしは自分のステータス画面を見せながら、ルナさんにゲームへログインしてから体験したことを話し始めた。