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48話 もう一つの戦い

 

「さて、ベリルさんのお店は……」

 マチュアさんとの修行を午前一杯行った後、わたしは買い出しがてらベリルさんのお店が開いているかを確認しにきていた。

 

 すると、出すメニューが決まった影響か要さんの推測通り閉じていた扉は開き、店頭には【営業中】の看板が出ていた。

 

『よしっ!』

 一つ気合いを入れて扉を開く。

 

 

「お邪魔します!」

「おや、久しぶりじゃないか」

 カウンターの向こうに座るベリルさんに会釈し店の中へ。

 

「今日はどんな……いや、聞くまでないかね」

「はい。お約束していた料理の件、ぜひとも食べていただきたい品を作る準備が整いました」

 わたしの返答に「そうかいそうかい」と答えたベリルさんは楽しそうにこちらの顔を見る。

 

「で、いつ持ってきてくれるんだい?」

「持ってはきませんし、ここでも作りません」

「ほぅ……」

 ベリルさんが何かを推し量るようにこちらを見る。

『今が攻め時』

 

「ベリルさん、神殿(ウチ)へ食べに来て下さい、お願いします!」

「神殿にじゃと? 理由を聞かせてめらえるかね?」

 よし、とりあえず聞いてくれた。

 

「はい、一つは作ってこちらへ持って来るのでは冷めてしまいます。是非、出来立てを食べていただきたいのです」

「ふむ」

 

「二つ目はこちらの料理器具は普段わたしが使うものと異なっています。やる限りは納得がいくものを作りたいので、使い慣れた神殿の器具を使わせていただきたいと」

「なるほど、確かに理にかなっておるな」

 

「では」

「断る……と言ったら? お前さんはどうするのかね」

 ベリルさんの目が、戦士のそれと同じぐらい強く光る。

 

「了承してもらえるまで通います」

「そんなことなら構わないが」

「そう思うところでしょうが、三日もすれば諦めますよ」

「理由を聞いてもよいかな?」

 

 ここが最後のポイント!

 ……あんまり使いたくない手だけど仕方ない。

 

 

「はい、実はわたしがこちらの世界に来ておおよそ三週間になります。その間神殿にて治療のお手伝いをしておりました」

「ふむ、それな聞いておるよ」

 

「その三週間で残念なことにわたし目当てで街の方や冒険者が来るようになりました……そして、非合法ながら地下組織が出来ているそうです、わたしのファ……ファンクラブが」

「結構なことじゃないか」

 うん、ここまでは思惑通り。

 

「普通はそう思うかもしれませんが、わたしがここに通っているということが知れたら……」

「知れたら?」

 

「たぶんそのファンクラブのメンバーとやらが沢山来ることになりますよ? 想像してみて下さい、そんな人達が大挙して来るのを」

「んん……」

 

 ベリルさんは少し思案してから惨い想像になったのか溜め息を一つつくと「わかったよ、お世話になろうじゃないか」と渋々ながら神殿に来てくれるのを了承してくれた。

 

「ありがとうございます!」

「顔に似合わずゲスな手を思い付くもんだね」

「使えるものはなんでも使う主義なんです、大根の葉やブロッコリーの茎も使います!」

 レタスの葉も外側一枚しか捨てない主義です。

 

「で、いつ行けばいいんかい?」

「はい、三日後の夜七時に神殿へ来ていただけますか?」

「わかったよ、それじゃ楽しみにさせてもらうよ」

「是非!」

 

  ・

  ・

  ・

 

「それでは失礼します」

「まったく、すぐ帰るかと思ったら食べてくとはね」

「せっかくベリルさんの料理が食べられるのに帰るなんておかしいじゃないですか!」

 食べずに帰るなんて選択肢はありません。

 

 ちなみに今日のきまぐれ焼きはマグロのカマですよ!初めてこの世界で海魚を食べたけど、現実(リアル)以上に美味しく感じてしまった。

 しかも、

 

「この味付け……まさか醤油ですか!?」

「ほぅ、さすがにわかるかね。さすがにコイツは分けてやるだけの量がないからねぇ」

 いえ、味わえただけでも十分です!

 

 だってこの世界のどこかに醤油があるってだけでも大発見だし、醤油があるということは味噌など他にも和の調味料があるかもしれない。

 

 わたしの目標がまた一つ増えました。

 

 

「えーっと、だいたいこれぐらいかな」

 ベリルさんのお店から帰る途中で買い出しをし、三日後の準備に備える。今日から出来る下ごしらえはするけど、明日以降でしかできない事は自動生活オートモードのわたしに任すしかない。

 

『よろしくお願いします、もう一人のコーデリアさん』

『任された!』

 自分の中からそんな返答が聞こえたような?

 ……うん、一緒に頑張ろうね。

 

 

 しかし、

「ちょっと買いすぎたかな」

 お店でいろいろと見ているうちに特売品やら、店員さんのおすすめなどを買ってしまい、気がつけばいつもの買い出しの倍の量に。そして、

 

『つい魔物肉が出てたから衝動買いしてしまった……』

 ちなみにモノはホワイトボアという猪に似た魔物の肉らしく、やや癖が強いものの肉の旨味が豚肉の五倍はあるとのこと。

 部位によって使い道も異なるので、あれやこれやと買ったら結構な量になりまして……

 いや、一匹分まるごとなんて買ってないよ!?

 

「とりあえず急がずに帰れば……って、何だろうあれ」

 神殿への帰り道、いつも通る屋台のところでお店のおばちゃんと男の人が言い争ってた。


 

「だからちょっと待てって、絶対どこかにあるはずだから……」

「はっ、だいたい犯罪をやる奴は皆そう言うんだよ! 今警備隊呼んでくるから逃げずにそこにいなよ」

 

 盗みかな? こんな場所で。しかもあれは冒険者だからプレイヤーだよねぇ。

 

「だから無銭飲食なんかじゃないって、確かにさっきまで懐に金はあったんだよ」

「じゃあ、どうして無くなってんのさ!」

「俺が知りたいよ!」

 

 うーん、どうやらお金が無いっぽいけど、ゲームの中で財布を落とすなんてあったりするのかな?

 男の人も困った感じはあるものの、おばちゃんとの言い合いでヒートアップしちゃってるみたいだから余計に収拾がつかなくなっているような。

 

 ……まぁ、見ちゃったものはしょうがないか。

 

「すみませーん」

 とりあえず何も考えは無いけど首を突っ込んでみよう。




いつも読んで頂いてありがとうございますm(_ _)m


日常的な話ですが、そこからゲームの中の日常へ、今回は非戦闘パートなので読み手の方によっては好き嫌いが出そうですが、気にせず進んでおります。



まぁ話も少しずつ進んできましたが(メカ以外)、とりあえずは予定通りな進行ではないか……とかんがえてはいますが、きっとまだまだなんでしょうねぇ、難しい(´・ω・`)


まずはこのまま進めていき、途中などで色々変えられれば良いのですが、どのようになるかは未定です。よろしければゆるりとお願い致します。



さて、いつもので恐縮ですが。

新規で読んで頂いている皆様、どうでしょうか、何かな一つでも面白いと思えることはありましたか?


継続して読んで頂いている皆様、引き続きよろしければご愛読頂けますと、嬉しい限りです。誤字脱字もよろしければ……


コメント・ブックマーク・評価やレビューなど、何かあれば書いて頂けると、筆者は大変喜びます。

それではまた明日アップできるように、校正頑張ります。


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