45話 いろいろ大変
その時の~気分次第が神様で~
「えっ、ちょっと!?」
引っ張り出された先にいたのはミーアさんとロキシーさん。
二人は今にも泣きそうな顔をして……
ギュッ
ギュッ
「これ以上心配かけないで欲しいっすよ!」
「あなたのおかげで私達が強制戻りになっていないことを忘れないで」
左右から抱きしめられて一瞬驚くものの、二人の思いが伝わるとこっちまで泣きたくなってくる。
「ごめんね、なんだか二人に迷惑かけてないかなって思い込んじゃって」
倒したと思い込んだ稚拙さが、情けなさがわたし自身を許していなかった。
「そんなこと言ったらレベルが高い私が後衛になってたことの方が迷惑かけたじゃないっすか!」
「私だってリアさんよりレベル高いけど、結局大した役にたってない」
「そんな事ないよ! ミーアさんには牽制でトロールの邪魔をしてもらって助かったし、ロキシーさんに回復してもらったことで生き延びていたのも本当だよ!」
「だったら恥ずかしがらずに胸を張りなさいよ、自分が思った以上に凄いことしたんだからさ。二人にあなたを強制戻りにさせた事を後悔させないの」
いつの間にかルナさんまで。
「そうだそうだ、そんな立派な胸なら晒してしまえ!」
「いや、それはやっかみだから」
ルナさんがニーナの頭をペシッと叩くと皆の顔に自然と笑顔が戻る。
「さ、戻るわよ……っとその前に」
ルナさんはそう言いながら鞄からなにかを取り出す。
「はい、これでも着て」
「すみません、ありがとうござ」
受け取ったものを広げて会話が止まる。
「だからなんで作業着なんですか!」
以前とは違うスカイブルーの作業着を手に、ルナさんに突っ込んでいた。
―――◇―――◇―――
「ふむ、まぁこんな所かのぅ」
神と位置付けられた妾に出来ることなど驚くほど少ない。
興味を引いた者に対し、その想いを天秤にかけ、釣り合った力を与えて世界に放つ。
今回は同族が既に手を出しておるのが身近に来たから、どんな奴かと思ってみたら意外に面白い奴であった。
ただ、
「貴様らしくない駒じゃのぅ、フレリアよ」
「気付いていましたか」
「地があれば、そこがどこにあろうとも妾の領域よ、忘れた訳ではあるまいて」
フレリアは『確かに』と答え静かに笑う。
「して貴様の狙いは何ぞ?」
「神としての通り名、そのままですよ」
戦神か……
「相変わらず妾には理解できぬのぅ」
「大地が繁盛になることとは対極ですね」
確かに戦になれば大地は疲弊し、多くの生き物が死ぬことになる。
「して、貴様は何とみる?」
考えが対極にあろうとも、あの娘に祝福を与えた者同士が故に知りたくなる。
「アレは本物かえ?」
「……」
だんまりか、仕方あるまい。
「妾と貴様、あの娘に賭けたものが無駄にならぬと良いがの」
「ええ」
そう答えると、フレリアはその場から姿を消す。
「さて、妾はどうするかのぅ」
この先にある時代の分水嶺。どれが残り、なにが消えていくのか。
できる事が限られる以上、先に見える過酷な未来を少しでもマシなものとなるよう、耕すぐらいかのぅ。
「もっとも、どう耕すかは妾次第だが……カカッ」
―――◇―――◇―――
「団長、ちょっといい?」
「ロキシーか、どうした」
依頼達成の表示が出たことで今回の一件が終了となったことから、私達も一旦初期村へ戻ると慰労会という名の飲み会が開催され、つい先ほど解散となっていた。
「暫く団を離れたい」
「おいおい、急な話だか……なにがあった? ってまぁ、あの出来事が原因だろうがな」
まだ営業している個室のある食堂に入るとカウンターに並んで座る。
「で、一応聞こうか?」
「団長が言う通り、目の前で見たあの戦いが忘れられない。なぜ彼女があそこまで出来るのか、どうして頑張れたのか……それを知りたい」
バフや回復で援護したとはいえ、戦いのほとんどは彼女がトロールとの一騎討ちみたいなもの。格闘のスキル持ちとはいえ、たかがレベル6の初心者ができる内容ではない。
それに彼女が英雄級の人物ならまだしも、話を聞いた限りではそんな感じは一切ないし、教えてもらったステータスも通常だった。
「私には同じように戦うことはできない。もっと言えばあのトロールに触れられるような距離にいることすら出来ない」
「はは、俺だって無理だろうなぁ。最後ケリをつけたあの二人だって強化種トロールが万全の状態なら、もっと厳しかったとは言ってたしな」
そんな相手だったと改めて認識させられる。それこそ最初の咆哮で強制戻りになっていたっておかしくなかったのかも。
……やっぱり知りたい。
「このゲーム自体、暇潰しレベルでしか考えてなかった。でもあの時感じたドキドキ感に再び出会えるのであれば、その場にいたい。可能なら一緒にいたいし、戦いたい」
「はぁ、まいったね」
団長は笑いながらそう言うと一枚の紙を出す。
「これは」
「女皇からだよ、もしウチに来たいのがいたらって渡されてたんだ」
手渡された紙には『灰色猫のワルツ、仮入団パス』と書いてあり、ルナさんからの推薦状になっていた。
「あの子もルナのリア友なら入るだろ。あの団はトップレベルだから普通じゃなかなか入れないけど、それがあれば話も変わってくるさ」
「ありがとうございます」
「ま、いいってことよ。逆にお前があの子を連れてウチに戻ってくる可能性も無いわけじゃないしな」
「そう……ですね」
そんなことなんか思ってないはずなのに、私が出やすいように言ってくれているって聞かなくてもわかる。
「ま、こっちの世界と違って現実じゃ隣近所なのは変わらないから、なんかあったらいつでも呼び出せよ」
「了解、勇さん」
「おいっ、リアル名で呼ぶな」
「じゃあ、行ってきます」
「おぅ、面白い話聞かせろよ!」
このゲームで改めてスタートラインに立つ、そんな気分で私はこの団を出る。私自身が知りたい、彼女の強さと惹き付ける何かについて。
さて、今回無事ではないですが戦闘パート終わりました。
これで主人公が不死とかの属性あるならラクなのですが、残念ながらノーマルなので。
コメントでもいただきましたが『ハナからPAで倒せば良いのでは』ですが、一応普通の戦闘ではPAを使わない不文律がありまして……
最初のうちに書いておこうとしたのですが、当初の予定よりそこに到着するのが時間かかりそうで悩んでます。
……分かりづらいですよね(´・ω・`)
ちょっと考えてみます(割り込みの書き方がわかってないというのもありますが……)
はい、あとはいつもの謝辞です。
新規で読んで頂いた皆様、こんな書き手ですがよろしければ引き続き読んで頂けると幸いです。ブックマークして頂けると、大変喜びます。
継続して読んで頂いている皆様、いつも本当にありがとうございます。
今回のように『なんでやろ』と思ったり『おかしくね』と思ったらガンガンツッコミお願いします。
打たれ弱い書き手ではありますが、やはり何らかのリアクションがあることで、読んで頂けていると実感致します。
本当にありがとうございますm(_ _)m
あとはいつものことですが、コメントや感想、評価などもよろしければお願い致します┏〇))




