40話 まったり後(のち)……
芝生の上で寝転びたい……
※18/02/14 誤字脱字修正しました
~ 約一時間前 ~
「ん~なんか戦闘エリアとはいえ、こうやってのんびり過ごせるのはいいよね」
設置した簡易テーブルセットの上に置いたカップにお茶を注ぎながら同意を求めるけど
「リアさん余裕すぎっすよ」
「肝が座っているというか」
「さすがルナさんのリア友ですね……」
あれっ、賛同されない!?
「最初この話を聞いた時、どんな人が来るのか気になってたけど、ニーナさんが言うように規格外でしたね~」
「えっ、そんなに変じゃないよね!?」
よし……とりあえず後でニーナをギュッてシメておこうか!
中継地でルナさん達を見送ってから周りで湧いた魔物を倒していたものの、十分もしないうちに何も現れなくなり暇な状態に。
いやね、油断するつもりは無いけど久々にまったりとした時間が過ぎていくのが気持ちいいというか、なんというか。
「でもリアさんの言う通りに、ここまで魔物も来ないと拍子抜けな感はありますね」
ナナハンさんが少し同意してくれた!
「基本的な作戦としてはニーナさん達が暴れることで、ルナさんの方やこっちに魔物が来なくなる予定だけど、逆にビックリしてこっちに来たりして」
「まぁ、その時はナナハンさんに」
「が、がんばるよ」
でも静かだな~最初しか魔物も来てないから、逆に静かすぎて気持ち悪いかも?
「しかし、まさか今回の依頼が神殿の治療で有名なリアさんといっしょになるとは」
「そうですね、僕もお世話になったことあるし」
「お世話って……あっちのお世話じゃないよね?」
……あっち?
「ぶっ! な、何を言うんですか!? 僕あの二人にレベル1になるまで殺されますよ!」
「でもさ、シーレフ非公式人気投票で三本の指に入るリアさんだよ?」
「地下ファンクラブができるとか」
なんだか知らないうちにそんなものが……
「と、とにかく無料で回復してもらって大助かりですよ」
「私も何回か回復してもらってる~ここ最近だと毒の治療も」
「あ、二人とも来たことあったんだ。ごめんね、覚えてなくて」
「あんなに沢山来ていたら覚えるの無理だよ~」
まぁ、そうだよね。
「他の国の初期村じゃ無料回復は無いらしいからね、初心者には少額でも大事」
なんでもロキシーさんの話だと、巫術には他の魔法職に比べお金がかかるらしい。召喚とかの素材もピンキリらしくて、効果が高い召喚をしたいならどうしても素材が高価になってしまうから稼いでも儲けが少ないとボヤいてる。
「……確かにお金って気がつくとガンガン減りますよね」
「あれっ、リアさんは神殿で治療してるからお給料貰えてるんじゃないの?」
「まぁ確かに少しは貰えるけど、みんなみたいに依頼こなす時間がないから、どうしても稼ぎは少ないよ」
「「お世話になってます!」」
「いや、こちらこそ!」
治療で来ていた二人が直角になるほどお辞儀してくるから、つい条件反射でわたしもお辞儀してしまっていたり。
でも、宿代や装備にお金使ってないのに手持ちは増えないなぁ……そんなにお金使うような事がないからいいけどね。
「そう言えばミーアさんとロキシーさんは一番星で同じクランですよね、魔法職が多いクランってどんな感じです?」
「えっとね~ウチのクランハデハデだよ?」
ハデハデ?
「ミーアの説明じゃわかりにくい。ハデと言うより魔法の強さ、効果、演出を気に入っている人が多いよ」
「なるほど、演出ですか」
まだこのゲームでは派手な魔法は見たことが無いけど、きっと凄いんだろうなぁ。
「私からもリアさんに質問~」
「ん?なになに」
「リアさんってゲームでの目標とかありますか?」
目標……目標ねぇ。
「楽しむことかな、こっちの世界でしか体験できない事とかやってみると、今までとは違う発見とかあるしね」
実際、魔法を使うなんて現実じゃできないし、格闘技もやったことなんてないしね。
「治療もその一環?」
「結果としてなら治療も一つに数えられるかもしれないけど、ああやって携わったことで神官の人達とも親しくなれたしね」
「なるほど、確かに」
楽しみかたは千差万別ってことで。
「そうだちょっと試食してみる気ない?」
わたしは普段道具入れに使っている鞄とは違う携行用の保管バッグ(冷蔵仕様)から箱を取りだし、みんなに中身を見せる。
「これはババロアですか」
「凄い!こっちの世界じゃ見たことないのに……手作りですよね!?」
「いろいろ模索中でね。口に合わないかもしれないから試食ってことで」
ルナさんとニーナ用に作ってきたけど、普段食べていない人の意見も聞きたいしね。
「いただきまーす……わっ、美味しい!」
「自然な甘さというか、食べやすくて美味しいです」
「お褒めいただき光栄です、なんてね」
牛の骨からゼラチン質を抽出して不純物を排除したものを乾燥、それを粉砕したものを試作したので作ってみた。
とりあえずはオレンジのババロアだけど、今回上手くできたのでプリンやムースも作ってみたいし、他の料理にも応用させてみようと画策中です。
「なるほど、こういうのをするのもリアさんの楽しみ方なんですね」
「そそ、こっちならではのモノも作りたいけど、まだ魔物肉とか特別な素材はチャレンジどころか現物見れてなくてね」
「あ~毒騒動で魔物肉出回っていないですよね~」
だからこそ、今回の依頼で毒に関することが解決することを誰よりも……は言い過ぎだけど、かなり切望してたり。
「ま、ウチらじゃまだボスと戦うのキツいっすからね~今はお留守番専念っすのね~」
ミーアさんの言う通り、今はまだそんなレベルに達して
ゾクッ……
「うっ、なに今の感じ!?」
電流を流したようなピリッとした感覚が全身を走り抜ける。
「私は何も。ミーアは……」
ロキシーさんがミーアさんに話しかけるので見てみると、ミーアさんが真っ青な顔をしながら目だけで辺りをぎこちなく見て、
「なんすか今の……あんなの知らないっすよ、ヤバいっす、もう逃げられないっす……」
そう言うとコップを持つ手がガタガタと震えだす。
『やっぱり何かが……』そう思って背後を見ると、
「ウマソウナニク、ミツケタ」
巨大なトロールがこちらを見下ろしていた。
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