39話 見せてあげる!(主人公視点ではありません)
関西弁っぽいのを文字に上手くてきない……
※21/10/11 スポアをマイコニドに変更しました(きのこ系の魔物をスポアと誤記載)
「ハァ……ハァ……」
十体目を倒し辺り一帯を見渡す限りでは、すでに動いている毒されたトロールはもういない。他のメンバーが倒した数と会わせれば、少なくとも二十体以上倒しているはず。
「ちょっ、ハイペースすぎまっせ!」
ナンバレが慌てて近寄ってヒールとキュアポイズンをかけてくれる。
「強い奴はこっちで引き受けるんでしょ、そいつら誘い込まないと……ルナっちの方行ったらヤバイし」
『疲れているけど、まだまだやれるから』
そう思った矢先、
ゴォォォ
森の奥で激しい火柱が立ち上がる!
向こうの方角はルナっち班……だとしたらあれが事前に聞いていた、殲滅と信号の意図を兼ねたルナっちの魔法《獄炎召喚》。ということは、
「やったかいな!」
「たぶん……」
轟々と、それこそ空を焦がすほどの勢いで火柱が激しく上がる。それなりの距離が離れているはずなのに、あの熱がここまで届いているのか顔が熱つく感じる。
『とりあえず依頼達成かな』
ティリン、ティリン♪
安堵したその瞬間、私をはじめ【灰色猫のワルツ】のクランコールが鳴り響く。
『……ん? この音って!?』
『ニーナそっちは!』
「とりあえず近くにいたのは全部倒したよ、どったの緊急信号のクランチャットなんて?」
クランメンバーだけが会話できるクランチャット。便利だけど回線用のアイテムが高価なんだよね……あと地域も限定されるし。というか、ルナっちの声が切迫してる?
「何かあったの?」
『マイコニドの群生地は破壊したし、そっちも毒されたトロールを倒しているから依頼達成の条件を達成したはず。だけどまだ依頼書に達成のマークがつかないわ』
そう言われてみれば、確かにクリアって出ない……
何か見落としている?
『依頼達成の条件はマイコニド群生地の破壊と強化種と言われる毒されたトロール退治だと思ったけど』
強化種……?
「えっ、ちょっと待って」
『どうしたの』
そんなはずはない、そう思いたいけど
「こっちで倒した毒されたトロールは二十三体、この中にクエスト対象の強化種がいないとしたら……」
確かに私達が倒した毒されたトロールは強かった。だけどレベル20のパーティを一瞬で殲滅させるほどの化け物がいたかと言うと……
『まだ本命がいるってこと!?』
そう考えたら依頼達成が出ない理由も想像がつくけど、この広い森の中で強化種を探すのって……
『とりあえず中継地に戻って作戦練りましょう、リア……はまだメンバーじゃないから話せないか。ナナハン聞こえてる?』
中継地にいるクランメンバーは戦士のナナハンだけ。しかし、ルナっちが話しかけてもナナハンから返答は無い。
『なぁ、森の中に奇妙な感じがしないか?』
トゥーエっちがそう言うので私も気配察知を放ってみるけど何も感じない。
『ナナハン聞こえる? 聞こえていないの?』
相変わらずルナっちの呼び掛けにナナハンは答えない。聞こえないはずないけど……
「ちょ、クランリスト見てや! ナナハンに強制戻りがついてるで!」
ナンバレに言われてクランリストを見るとナナハンの名前が赤文字で記され、横にはリスタートまでのカウントダウンが……
「まさか!?」
慌ててフレンド一覧をチェックすると……よかった、リアの名前に強制戻りはついていない。
『一番星の方も見てもらったけど、ミーアもロキシーも強制戻りは付いていないって』
とすると、ナナハンっちだけが死に戻り中ってことだけど、一番レベルが高いのが死んでる状態って余程の事になるわけで。
「とりあえずどっちも中継地から似た距離だから、とにかくお互い戻るってことでいいよね?」
『そうね、何が起きているのかを……チッ』
「どうしたの!」
会話の途中で舌打ちするってイヤな予感しかない。
『どうやらこっちは第二ラウンドがあるみたい。そっちも気を抜かないで、そして行けるなら中継地の事お願い!』
ルナっちがそう言うと、クランチャットが切断される。
「なにがあったか気になるけど」
ミシッ
目の前の木々が悲鳴を上げて倒されると、その向こうには再び毒されたトロールの姿が。
「お~おかわり大盛り?いや、特盛りかな~」
見える限りで八体、感じる気配は倍ぐらいある。
「でも、先を急ぐからサクサクやらせてもらうよ!」
―――◇―――◇―――
「オォオオォ……」
ゆっくりとした動きだが、一歩一歩進む度に地面が爛れていく。
【ヴェノムゴーレム】
推定レベル40以上。毒素の集合体を魔力で固めた体は強力な毒性を含んでおり、存在するだけで辺り一面を死の大地に変える。
「まったく、初期村近くでやる依頼じゃないでしょ、こんな化け物まで出すなんて」
マイコニドの大群だけではないと思っていたけど、まさかこんな大物がいたとはね。
「間違いなくこんな奴は近くにいなかったんだがな、どうなってるよ」
トゥーエも自慢の危険察知を潜られて近づかれたことに愚痴をこぼしている。
「湧いたんじゃないな、群生地の下にいたんだろ」
マルコメが指す方向、地面が裂けた所から魔物が出てきた跡があり、そこはさっきまでマイコニドが群生していた場所。
「自然に湧くような魔物じゃないよな?」
「ええ、もとは魔法や呪術を使った際の廃棄物を再利用した過程で偶然生まれたって話だったはず」
そう、この魔物は自然発生じゃない、人工魔物だから、
「ハッ!初期村近くに仕掛けてくるか、帝国は」
「手っ取り早いわよ、育ち盛りの冒険者を邪魔するならね」
マルコメがキレながら文句を言うのに私も同意する。ま、文句を言いながらもやることに変わりはない。それに、
「近接戦闘攻撃のみなら苦戦しただろうけど」
私がそう言うと同行している魔法使い達が、皆一斉に武器を構える。
「残念ながら遠距離攻撃が得意なのがこのパーティには多くてね……全員火力最大!青ポならあとで浴びるだけあげるわ、一気に片付けるわよ!」
「「「おおぅ!」」」
さぁ、私も負けられないわね。さっさと倒して中継地に戻るわよ!
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