38話 さぁ行ってみよう!(主人公視点ではありません)
主人公とまわりとの自分の呼び方が曖昧になる……
※18/02/16 誤字脱字修正しました
※21/10/11 スポアをマイコニドに変更しました(きのこ系の魔物をスポアと誤記載)
「ふっふふ~ん」
「ニーナ、えらい機嫌ええな?」
私と一緒に白班として行動するナンバレが、物珍しそうにこちらを見て話しかけてくる。
「そりゃ、友達と一緒にフィールド来ることが出来たからね~」
まだレベル低いからかなり先の事と思っていたけど、別動隊とはいえ同じクエストに挑戦出来ているのは嬉しい。
「あー、あの不思議神官かいな」
「不思議って!?」
悪意のない言い方だから良いけどなんか引っ掛かるなぁ……
「あ、不思議って『不思議ちゃん』やないで。まだレベル6て聞いてたのに、出てくる魔物ワンパン祭りやわ、トロールの突撃を初見で避けてるわ、どんな娘やろて思いますやん?」
「ん~あんな感じというか、普段と変わらないからなぁ」
家や学校でも別段動じることなく、飄々となんでもこなしてるし。
「それや、普段から~言うてますけど、それをこっちの世界でトロール相手にできまっか?」
まぁ、ナンバレの言いたい事もわからない訳でもないけど、それほど特異なものとも思えないし……
「ま、今後仲間になる可能性が高いなら問題ないけど、敵にはまわしたくないなぁ……」
「どうして?」
ナンバレのレベルなら今のリアは大したことないじゃん?
「正しい言い方やないけど『怖い』やな、なんかじっと見られただけで、こっちの本質まで見透かされそうや」
「そんな大袈裟な……何か後ろめたいものでもあるんじゃないの?」
「そないなこと団長やニーナの友達にやってみ、明日の朝日拝めませんやん」
うん、まぁその可能性は否定しないけどね!
「ま、今回たまたま初期村近くに仕入れがあったから会えたというのは運が良かったと思うわ、そういう意味ではいい縁やろな」
「ま、ウチらの団長とサブ団がそろっていたのも運はいいよね~」
そんな事を話ながら三十分ほど歩くと、不意に肌がピリッとし始める。
私はハンドサインでパーティを止めると聞き耳を立てて……
『数は三つ。この感覚は……間違いなくノーマルではない、毒されたトロール』
二体は同じ方角、一体は少しはなれているけど騒がしくしたらすぐに来れる距離。
『皆、あと二十数えたら奇襲、その後は派手に』
『了解』
さて、ちょっと騒がしく暴れて、この辺りにトロールを呼び寄せますか!
―――◇―――◇―――
「ん?」
微かに魔法が炸裂した音が聞こえた。
「始まったようだな」
隣にいるトゥーエが辺りを探り、間違いなく戦闘があった事を知らせる。
「少なくとも三つ、あとこの近くにいた二つも向かったな……五つはさすがに苦しくないか?」
「大丈夫よ、いくら回復力が高いトロールでもニーナの武器なら確実にダメージを与えるし、自慢の能力も無駄になるから」
だからこそ信頼し、白班のリーダーを任せているし。念のためにナンバレも向こうに入れてある。
「アタッカー五人に回復一人だけど、補助二人を除けば全員がレベル30オーバーだから問題ないわ」
「ま、確かに問題あったら困るメンツだな」
さて、
「そろそろこちらも先を急ぐわよ。向こうが奮戦してこの辺りの魔物のヘイトを稼いでくれているんだから、その隙にマイコニド群生地を叩くわ」
「マイコニドだけならラクなんだかな」
「そんなわけ無いだろ」
悲観もしなければ、楽観もしない。
さすがにこのレベルまで来ている二人、何事も安心して任せられる。
『ま、こんなもんよね』
そんな中、森が少し開けた先で眠るように座る、一匹の毒されたトロールが。
「さすがに全部は行ってくれないか」
「他のを呼び寄せないよう、速攻で倒すわよ」
間合いギリギリの所で杖を構えると、毒されたトロールがゆっくりと目を開く……だけど
『残念ね、もう遅いわ』
「もっと深い死の眠りを……《次元氷結》」
発した言葉が形となり白い気流が発生すると、毒されたトロールを含め辺り一帯を氷の世界へ一変させ、対象を含め全てを氷漬けにする!
「永遠におやすみなさい……《砕》」
ガシャン!
杖から伸びた『力ある影』が氷となったトロールを粉々に砕き、やがてポリゴンとなって消えていく。
「……相変わらずえげつないコンボだな」
「シンプル・スマート。魔法の究極系よ。さあ、先を急ぐわよ」
なんだかイヤな予感もするし、早々にクエストを片付けてリアの家でご飯にしましょう。
―――◇―――◇―――
ギィン
左手に持つ、青い宝石が埋め込まれたショートソードで斬られた毒されたトロールは、自らの傷口が凍り、回復出来なくなった事にパニックしている。
ゴォォ
右手に持つ、紅い宝石が埋め込まれたショートソードで斬られた毒されたトロールは、傷口から噴き出す炎に全身が飲み込まれていく。
【氷華絶影】と【炎龍昇禍】。
二本のショートソードが今の私にとって全てだと言っても過言じゃない。
ダンジョンの奥深く、『とにかく戦わず、避けまくってどこまで行けるか』というバカなチャレンジで偶然に得ることが出来た二振りの宝剣。
ただでさえ制御が難しいところに、左右で異なる性質の武器を持つと言う無駄に難易度の高いを装備。おかげで何度自分を凍らせ、燃やしたか……
『大変だったな~慣れるまでのデスペナで、レベルが二つも下がったし……』
今では笑い話だけど、当時はかなり凹んでた。そんな時に阿里沙が気遣ってくれたのが凄く嬉しく、励まされた。
『きっとゲームの事とは思ってなかったよね~』
だから今度は自分の番だ。阿里沙のキャラは妙な展開になりつつあるけど、頑張っているなら私が手伝う。だって、
「まだまだ!」
乱戦の音に誘われて次々毒されたトロールが現れるけど、全然問題なし!
『だって、一緒に楽しく遊ぶことが出来るのだから!』




