37話 前哨戦!
うーん、魔物の咆哮ってどんなのがいいのかな
「シッ!」
拳を振るう際に声が出てしまうようになりました。無意識なんだよね~
元々はマチュアさんがやってるのを真似てみたらいい感じに拳が振り抜けたので、そこからなんとなーく。
ちなみに今のは向かってきた毒されたキラービーを正面からワンパンでした。
キラービー以外の魔物とも戦っているけど、今のところ拳や蹴りが当たれば即ポリゴン化してくれるので、グロいのを見なくて済んでる。
「あんな動きが速く、的としても小さいのによく拳を当てられますねぇ」
と同じ中継地班のミーアさんが誉めてくれるけど、マチュアさんが不意に投げてくるボールの方が小さくて速いからなぁ……稀に曲がるし。
「今リアは鬼教官に鍛えられてるからね~見かけのレベルと中身別人になってきてるから。ほら『脱いだらスゴイ!』みたいな」
「あ、なるほど」
「いや、その例えはおかしくないかい?」
ニーナの返答に頷くミーアさん共々とりあえずツッコミしておく。
うん、今までNPCとの会話ばかりだっから、こうやってルナさんやニーナ以外のプレイヤーと話すのは新鮮です。
西の門を出てから約一時間、我々中継地班の四人とトゥーエさん、ニーナが先頭で目標地点まで魔物狩りを行いながらすることに。現れる魔物については一応対応できるレベル内であることからそれほど苦戦はしていないので、あくまで経験値貯め用の戦闘といった向きが強い。
といっても、わたしはこれが初めての対魔物戦闘になることからかなり苦戦することを予想していたけれど、意外に冷静に対処できているというか現状出てくる魔物についてはほとんど突きか蹴りを一発放って終わっているので緊張する暇もなかったり。
「見た目によらず意外に怪力だった?」
「いや、コツを掴めているんだよ。クリティカルとまでは言わないけど、的確に倒すべきポイントに攻撃をヒットさせている。教えている人が優秀なんだろうねぇ」
ナナハンさんとトゥーエさんもわたしを見ては興味深そうに話しているし、
「これだけできてレベル6なら将来有望……今が売り時やないか!?」
「私のリア友を売ってどうする」
向こうでもルナさんとナンバンさんが不毛な話を……なんだか複雑。
ワンパン(ワンキック?)で魔物を倒せているのって、単純にここの魔物のレベルが高くないだけで別段特別なことじゃないと思うし、結局素手(一応グローブはしているけど)で倒せるレベルの魔物としか出来ないことだから、この先もずっとこんな感じで同じようにできない訳だし。
『もっと強い魔物となんて戦ったらきっと瞬殺されるって』
痛いのイヤだから、極力そんな場面に出くわさないように……
「ん? どうやら今までの雑魚とは違う奴が来るぞ」
トゥーエさんは戦闘職業で危険察知に優れたスキルを持っているらしく、索敵などの対応にその能力を発揮しているとルナさんから説明は受けていたけど、魔物が見えない状況で本当に察知できるのは凄いと思うし正直羨ましい。
ドッ!
トゥーエさんが警鐘を鳴らしてから数秒後、一メートルはあるような巨大な岩がわたしたちに向かって飛んでくるけど、事前にわかっていたこともあり問題なく回避。でも、こんな大きなものを飛ばしてくるってことは、
「ルォロロロロロッ!」
三メートルは超える巨体が木々の合間から姿を見せ、こちらに向かって威圧の咆哮をする!
「見た感じあのトロールは成体になったばかりで毒化もしていないようだから、頑張れば四人でやれるんじゃね?」
「じゃ、ナナハンがメインアタッカーでミーアが牽制兼ねたサブアタッカー、ロキシーはバフ・デバフで補佐、リアは誰かダメージ受けたら回復で」
「「「はい」」」
トゥーエさん他人事だと思って気楽にいってくれてますよ。あとルナさんもいきなりパーティプレイでって指示ですか!? ……まぁ一応パーティの場合の動き・連携は教えてもらっているから良いけど、さすがに緊張するよ。
「危なかったら私達が横入れるから安心しなさいって」
「はい」
そこからは皆の動きは速かった。ナナハンさんは片手斧と盾で攻防を隙間なくしているし、ミーアさんもヒットアンドウェイで注意を引きつつトロールのヘイトを分散している。
でも一番目を引いたのはロキシーさん! 巫術ってよく知らなかったけど精霊信仰ということで、場面に応じた精霊を使役しては味方の補助から魔物の阻害までしている。そのタイミングが絶妙で、まるで裏から戦いを支配しているって感じ。
扱える精霊はまだ数種類らしいけど、あれだけ出来たら十分戦力になってるよねぇ。
ま、わたしは後方で見ながら回復魔法をかける準備はしているけど、いらないんじゃない?
……あ、トロールと目があった。
「グルゥオアアア!」
「え?」
『ちょっ、なんでわたしに!?』
トロールはわたし目掛けて急に駆け出すと勢いそのままにタックル! なんとか避けて振り返ると、今度は手にした棍棒をわたしめがけて降り下ろしてくる!
ズドッ!
「危なっ!」
まともに受けるほどわたしもバカじゃないから避けるけど、ギリギリに避けたからトロールの巨体が超至近距離だし。とりあえず、
「セイッ!」
逃げる目的でトロールの脛をおもいっきり蹴飛ばし、その反動で後方へ宙返りで移動すると目を切らさず適度に間合いをとる。
「リアさん下がって!」
「下がりたいけど後ろ見せたら殺られるって!」
「とりあえず自分が当たります、位置チェンジで!」
ナナハンさんはダッシュしながら盾を前に出し、勢いを乗せた状態でトロールの背後から腰のあたりへ体当たりする!
「《シールドバッシュ》」
ズガッ!
「ヲッヲヲヲヲッ」
不意討ち状態で攻撃を受けたトロールは苦痛の叫びを上げながらそのまま倒れる。
「逃がさない《召喚 幻影の茨》」
ロキシーさんが倒れたトロールに拘束する魔法をかけ、
「チャーンス、追い討ち! 《スマッシュ》」
ミーアさんは大きくジャンプすると、落下する最中に何やら魔法を唱え、手にした短刀に魔力を込めながらトロールの頭部へ勢いよく突き刺す!
キシィッ!
「ッグォアァァ……」
ミーアさんの攻撃がヒットし、あたりに何かが裂けるような異音が響くと、トロールは叫び声を上げながら巨体をポリゴン化して消えていく。
「おお、ホントに四人で倒したね」
「最後隙丸出しでしたからね」
「というかリアさん平気?」
「うん、まぁ平気と言うか何もしてないし」
さすがにトロールダッシュはビックリしたけど。
「でもヘイトはきちんと管理してたはずなのに、どうしてリアさんに突撃したんだろ?」
「美味しそうに見えた?」
「え?」
いや、本当マジで勘弁してください……
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「じゃあ、いってくるわ」
「こっちも行ってきます!」
白班・黒班と別れたルナさんとニーナ達が中継地から出発。中継地を作成中に結構魔物が出現したけど、みんなで戦ったこともあり割と早めに倒せた。まぁ、防御無視でとにかく攻撃しまくりな感じだったので毒に侵された冒険者が出たものの、そこはわたしが回復魔法をガンガン使って全快状態になりました。
「いってらっしゃい、気を付けてね」
「任せなさい」
「大丈夫、大丈夫!」
二人は余裕な感じだな~さすが。わたしもあんな感じに……なれないと思うけど、ちょっとだけ憧れます。




