31話 再びディメール様と
のじゃ語~
※18/02/16 誤字脱字修正しました
「時間は……まだ大丈夫ね!」
慌てて自分の部屋に戻り、ログインすると時刻は夜十一時過ぎ。なんとか約束に間に合う!
部屋着から神官服に着替え、わたしは祭壇のある部屋へ向かった。
『ほほぅ、よく覚えていたの。あんな激しい事をしたから、妾のことなど痛みと共に忘却したかと思ったわ』
「申し訳ありません、ついさっき思い出しました」
ディメール様は『カカッ、素直に言い過ぎだの』と笑っていらっしゃったけど、こっちは冷や汗モノですよ。
『あれほど一方的な惨状を体験しても尚、進められる者とは稀有よのぅ、意思があるのか意地があるのか、それとも只のバカなのか。ん、そういう行為が好きという物好きもあるのかの?』
「できればバカじゃないようにしたいと考えますが……あとそっちの趣味はありません」
『カカッ』
わたしの返答に再度笑うと、
『まぁそれはよい。今日来てもらったのは他でもない、貴様の事よ』
「わたしの……事ですか?」
『うむ、じゃがこのままで話すのも、ちと面倒じゃのぅ』
ディメール様がそう言うと、目の前に光が溢れると同時に視界が歪む。そして眩しさが徐々に解消されると共に一人の女性が現れる。
その女性の上半身は透けるほど薄い衣を羽織った絶世の美女。たが、下半身は部屋いっぱいに広がる蛇の胴体。
まだ若干光で視界がボヤけるけど、その姿だけはしっかりと見る事ができる。
って、姿を見たら眼が潰れるんじゃなかったっけ!?
「ああ、あれは嘘じゃ。妾一流の冗談よ」
……えぇぇ。
さっきまでは頭の中に直接話しかけてくるような感じだったが、今はディメール様の姿が確認できるからか普通に声が聞こえる。
「ふむ、妾の姿を直視しても立っていられるか」
ディメール様はちょっと面白くなさげではあるものの、どうやら想定内の様子。
実際、感じる威圧感は姿が見えない時に比べ大きくなっているが、立ち竦んだりはしていない。
「まぁ良い、本題に戻ろうかの」
心の奥底まで見透すような鋭い眼光がわたしを捉える。
「軟弱な人間よ、貴様は何故この世界に来た。何を求めた、何を得た」
「わたしがこの世界に来た理由……それは を」
……あれっ、声が出ない!?
「妾の世界に偽りの言葉は通らぬぞ?」
はは……そういうことですか。
別段嘘を言うつもりは無かったけど、若干フィクションが入った返答をするつもりだった。でも、どうやらそれはディメール様の許容の範囲外だったようで。
はぁ……誰にも言ったことを無いようなことをここで喋るというのも癪にさわるけど、ここまで来たらもう止めないよ?
「わたしがこの世界に来た理由はみんなと一緒に居たかったから、一人がイヤだったから、もっといっぱい楽しい事がしたかったから」
「なるほどのぅ、それほど向こうの世界は退屈かぇ?」
「退屈ではありません、貪欲に求めたかったんです。もっと自分が欲しかった、求められたかった」
その返答が面白かったのかディメール様は『クク』と笑い、再び話しかけてくる。
「この世界で貴様は求められたか?」
「たぶん、少しぐらいは求められたか、居てもいいとは思われた、そう想いたい」
「……フレリアが貴様に見たのはコレか。一見普通に佇むが、その実全てに己を映そうとしておる。貴様は【華】になりたいのかのぅ、カカッ」
『華……』
言われてストンと何かが落ちた。
だけど同時に自分の考えが大きすぎた事にも気がつく。それが本当に【自分の望み】かと。
「良いではないか、人の短い生で己を表現しきれる機会なぞ、そうもあるまいて」
「そういうものでしょうか?」
その返答にディメール様はニヤリといやらしい笑みをし「そういうものじゃ」と一笑する。
「貴様自身が己を望み本能として動じれば、また回りも貴様を己に組み込もうと躍起になる。世とは平々凡々にあらず、常に……いや、この先は己の耳目で見聞すべきよのぅ」
「はぁ」
なんだか言ってることが正論のような、うやむやにされたような複雑な感じでスッキリしない。
だけど、これ以上先の言葉は聞けないとも思うので突っ込まないでおこう……やぶ蛇にならないとも限らないし。
「ふむ、久々に人の子と話せて面白かったわ。やはり内面をさらけ出しての会話は愉快じゃのぅ」
そう言うとさっきまであった微かな光すら収まり、視界全てがクリアになる。
……あれ?
『えっ、うん? なんだかわたし、さっき凄いこと喋ってなかった??』
先程までの会話が頭の中にフィードバックされ、いつもの自分では言わないような内容に思考が固まる。
「それが貴様の内に秘めていた想いよ。ま、実に人らしいではないか。ああ、言い忘れておったが妾の世界には己の心を素直に吐き出す力があってのぅ、スッキリしたかぇ?」
え?
・
・
・
「ええええっ!」
うわぁ……わたしそんな風に思ってたんだ。すっごい内面を赤裸々と恥ずかしくもなく話してたんだ、うわぁ……
「おや、大丈夫かぇ?」
「……大丈夫じゃないです」
ヤバい、穴があったら潜って蓋して冬眠したいよ!
とりあえず回りに知り合いがいなくてよかった、本当によかった……
「さて、そろそろ時間のようじゃの、なかなかに楽しい時間であったぞ」
「それは何よりです……」
「まったくさっきまでの威勢は」
「内面をさらけ出した会話をして、元気でいられるほど頑丈にはできていませんから……」
そう簡単には切り替えできません。
「まぁ良い。さて貴様には妾に楽しい時間を供物として捧げた礼をせねばな」
わたし自身がお供えものですね、わかります。
そんなわたしの思考など関係なく、ディメール様はこちらを見直すと、手のひらを上に向け何やら唱え始める。
「華を望みし人の子よ、大地を配する豊穣が神、その慈しみを己が身体にて体感せよ!」
そういい放つと手のひらの上に光が集まり、テニスボール程の大きさの珠に。
……なんだかイヤな予感が。
「なに、一度味わっておるなら二度目など塵が芥に変わったぐらいのものよ、カカッ」
言うが早いか、光の珠が霞んだかと思った直後、
ゴッ!
「かはっ!」
光の珠はマチュアさんによって最もダメージを受けていた鳩尾に当ると、衝撃だけが背後に抜ける!
『痛い……痛いけど』
似たようなものは一度受けている、だったら……
「げほっ、負げられ、ない……おえっ」
ううぅ……気持ち悪い。あとやっぱり痛い痛い!
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