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282話 王者達の協奏曲 66 アルブラの戦い6(主人公視点ではありません)

すみません、当初の予定より2週間遅れての更新です……orz


【ルナ・ストーンゲートの視点】



 《アイスランス》

 《アースウォール》



 ガガッ!



 相手が戦闘モーションに入る前、間合いギリギリから放った【アイスランス】。

 ほぼノーアクションの状態で放ったそれは、命中寸前に大地から生えた、分厚い岩の盾によって完璧に防がれる。


『あのタイミングの攻撃をシールド張って防ぐって……かなりヤバい相手のようね』

 リッチは攻撃をしようとしていたのを強制的にキャンセルして防御に切り替えた。冒険者や異邦人(プレイヤー)ならまだしも、魔物がそんな行動を取るなんて聞いたことがない。


『良くてクリーンヒットからの行動阻害、悪くても初手でどれだけダメージが通るか見れるかと考えていたのに。まさかどっちの結果も得られないとか』

 ま、このリッチがただのリッチではなく、二つ名持ちかエリート系か、それとも訳あり(・・・)のリッチだということがわかったということで次の行動に移ることは出来るけどね。



「ソレデ終イカ」

「死体の癖に面白いこと言ってくれるじゃないの!」

 私の魔法が相殺されたことで、リッチが使う術式自体は特殊なものではなく、こちらと同じ系統ものなのは確定。そして属性の相性があるとはいえ、しっかりと私の放った【アイスランス】は防がれていることから、魔力という意味でも互角に近いと思う。


『ハイランクの魔法や、古代魔法とか使われたらヤバかったけど、とりあえずそこについては大丈夫っぽいかな?

 ……まぁ、それ以前に魔物とタイマンって魔法使いのやることじゃないのよね~まったく』

 愚痴ったって仕方がないか。とはいえ、タメが張れるのがわかったからには、当初の予定通りやるべきことをやるだけ。


「ニーナ、作戦通り私がこっちを押さえるから、あなたは周りをお願い」

「了解っ!」


 私がリッチに相対したのとおなじタイミングでニーナも既に戦闘態勢に移行し、自慢の双剣を構えている。


「さぁ、第一ラウンド行きましょうか!」




【ニーナの視点】



 グシャ!



「ニ十二っ!」

 足元から湧くハイ・グールを右手に持つ炎剣で両断すると、斬られたハイ・グールは再生することなく灰に変わる。


『ハイ・グールは再生能力が高いから、高火力の炎で焼き尽くすのが正解。そういう意味では問題ないけど……』

 辺り一帯の地面から、次々と湧いてくるハイ・グールの団体を倒しながらため息をつきかける。


『リッチの固有能力、死体召喚(デスパレード)を一人で相手するのは予想以上に大変だし、すっごく面倒なんですけど……火力の高い魔法でぱぱっと焼いた方が早いっしょ』

 一匹二匹のアンデッドなら問題は無い。でも、このリッチはレベルが高いのか、召喚する魔物もグールやスケルトンといった下位アンデッドではなく、中位ランクのアンデッドであるハイ・グールを召喚している。しかも数が多いだけでなく、



 ピシッ



 何もない空間に亀裂が走る。


「……やっぱり出るかぁ」

 左手に持っていく氷剣にMPを流して魔力のこもったシールドを張って防御態勢を取ると、



「ア゛ア゛ァア゛ッー!!」



 亀裂から染みだすように出てきたレイスが、【力ある叫び(バインドスクリーム)】でこちらの動きを封じにかかる。


『十匹ぐらいハイ・グールを倒したらレイスが出てくるって、やり過ぎだって!』

 倒したハイ・グールの残滓を触媒にしてレイスが生まれるとか、単なる嫌がらせ以上に冒険者殺しに特化した連続技でしょ!?

 でも、そんな厄介な連続技であっても対応するのが一流の冒険者であり、異邦人(プレイヤー)だと考えているからには、おいそれと負けるわけにはいかない。



「くぅぅぅ……」

 シールド越しに伝わる痛みを伴った冷気に左腕の感覚が鈍くなるが、ガードを緩めた瞬間に魔力による拘束で封じられる可能性があるからには、とにかく耐えて耐えて耐えまくるしかない。


『まだまだ!』

 それにこの攻撃は僅か数秒のこと。一瞬の隙も無いであろうリッチとタイマンで魔法勝負をしているルナっちに比べたら


「負けてられないっしょっ!」



 《フレイムショット》



 ドガガッ!



 【力ある叫び(バインドスクリーム)】が止まった瞬間、氷剣に流していたMPを右手の炎剣へ流しかえると、刃に溜まった魔力が形となってレイスを襲う!


「ギィエッ……」

「もう一丁!」



 《フレイムスラッシュ》



 ガッ



 魔力のこもった炎に包まれたレイスを十字に斬撃を通すと、ひび割れた空間の歪みとともにレイスは断末魔をあげることなく消滅していく。


「はぁ……、ハイ・グールとレイスの発生コンボって地味にキツイ。キツイけど、あっちはもっと地獄な感じ……」

 横目でチラっと見た限り、地面には無数に穴が開いているどころか、所々の穴から灼熱の溶岩が溢れている。


「地形破壊とか、あとで面倒ごとにならないようにしてよね」

「善処はするわ、保証はしないけど!」



 ゴゥ!



『そう言いながら【ヘルフレイム】でリッチのまわりを焼き尽くしてるし……』


 《ヘルフレイム》は術者の魔力と空気中に漂うマナを使って魔界から超火力の青い炎を放つ高位魔法で、その魔力がこもった炎に触れたものは、最低十秒は『敵味方問わず』延焼するっていう厄介極まりない炎魔法なことから、『パーティ・キラー』って呼ばれたりする凶魔法。

 その分、威力と効果は折り紙つきなんだけど……


『それを躊躇なく使うということは、あのリッチがルナっちも認めたキツイ相手であり、まわりを気にしていたんじゃ押されかねないってことよね』



 グッ



 ルナっちが高位魔法を使う相手。本気でやらないとこっちが狩られる側になる……そんな認識を改めてしてから両手の剣に魔力を込めなおす。


「百匹でも二百匹でもやってやろうじゃないの!」


 半ば空元気を伴った宣言たけど、ルナっちにも……そしてここにはいないリアにも情けない姿を見せられないからね。




【??の視点】


『なるほど、こういうことがあるのか』

 アルブラの攻略、私だけでもある程度は出来るかと考えていたが、(リュウ)の言っていたことがここに来て理解できた。


『レベルの高い異邦人(プレイヤー)、しかも噂に聞いていた魔法使いがアルブラにいたとは……なかなかに厄介な相手なようで』

 威力のある魔法を隙なく撃ちながら、的確にこちらを追い詰めるやり方は大したものと感嘆に値する。とはいえ、


『彼女達をこちらに送るためなのかはわかりませんが、城壁での防衛戦から城門を開いての野戦に移行するとはアルブラの主も老いましたか』

 【ウェーブ戦】のように戦うことで、アルブラの戦力を見極めながらも徐々に疲弊させ、いつまでも続くように錯覚する戦いによって肉体的にも精神的にもダメージを与える作戦は、場合によっては二~三日は続けてみせるつもりはあった。だが、実際にアルブラ側が門戸を開き野戦での戦いに移行したことで、こちらの攻め方も変える必要がある。



『全魔物に次ぐ、全てをもってアルブラへ進め!』



【ウェーブ戦】として組み込んでいた全ての魔物を縛りから解き放ち、街道の先にあるアルブラへと侵攻させる。


『とはいえ、侵攻というよりも戒めを解き放っただけではありますが……まぁ、あとは魔物達に任せましょう』

縛って行動を阻害していただけなので、これといって特別な命令を与えたわけではない。解き放たれた魔物達は、ただ勢いに任せてアルブラへ進み、己の障害となるもの駆逐していくだけ。

……それが人であろうと、城壁であろうと。




 ゴゴゴッ!



「クッ」

「動きが悪いじゃないの」

「煩イ攻撃ダナ」

 さすがに目の前にいる強者と戦いながら魔物達へ指示を出すのは簡単には出来ないか。


「ナラバ炎ノ獣ト踊ルガヨイ」



《ヘルビースト》

《ソウルクラッシュ》



 カッ!



 召喚した炎の獣が異邦人(プレイヤー)から放たれた魔法によって、形を維持できずに崩れていく。


「ホゥ」

「リッチの攻撃手段なんて全て記憶済みよ!」


『これは……楽しめそうですね』

リッチとして、それ以前に“一魔法使い”としても目の前に立つ異邦人(プレイヤー)との戦いは冷めていた自分の中にあるものを久々に熱くさせる……か。きっと鏡に映る自分を見たら、久しく見たことがない顔をしているでしょうね。



「面白イ」

「悪いけど魔物と遊ぶ趣味なんてないから!」

しかし、そう宣言する異邦人(プレイヤー)の顔もまた、勇ましくも楽しげな表情を浮かべていた。




いつも読んでいただきありがとうございます。

最高に忙しくて更新は遅れるわ、内容の校正もままならないわで……すみません。


次回は1/10(月)と二週間後にさせていただきますのでよろしくお願いいたします。

……落ち着いて書ける時間が欲しいものです。



また、ちょっと面白いと思っていただけたら、ページ下部の☆マークをクリックして、ポイントをいただけたら幸いですm(_ _)m


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