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279話 王者達の協奏曲 63 アルブラの戦い 3


「あの異常な魔物暴走モンスター・スタンピート、正直なところ違和感の塊でしかないから『岩石落とし(ロックストライク)を絶対に回避しない』っていう考えも置いておいた方が良いかもしれないのよね……」

「え、あんな巨大な岩を回避するっていうこと?」

 ニーナとしてもそれは想定外だったらしく、苦笑いをしながら私の方を見ている。




「ま、なんにしても“ウェーブ型”に近い侵攻って色々考えさせられるわね」

「私としては“ウェーブ型”の戦闘って戦いやすいから好きだけど、こうもキツイ連戦が続くのはイヤかも」



【ウェーブ型の戦闘】

 戦闘をスムーズに出来るようにゲーム(PAW)内に組み込まれている戦闘パターン。数百人規模での戦いに使われることが多く、大型マップで戦う乱戦型とは異なり、互いが持つ戦力がゼロになるまで戦う殲滅型であることから、戦い易さに比例して犠牲が出やすい。

 通常は一回の戦闘で三から五ウェーブで終了となるが、総戦力が多い場合には十ウェーブを超えるものもあり、状況によっては都市一つが完全に滅ぶこともある。



『とはいえ、ウェーブ型の戦闘だからアルブラが受けている被害はまだ少ないけど、さっきのウェーブなんかは魔物の戦い方が最初に比べて飛躍的に上がってきているのが想定外なのよね……』


 五ウェーブ目ということもあり、アルブラを守る兵や冒険者に少しずつ披露が見え始めてきている。ただ、それでも被害という面で見てみれば比較的少ない方だとは思う。

 そういう結果から考えると、ティグさんが打った手……街道に巨大な岩石を落として魔物の侵攻を絞る策は当たっている。



『実際、これだけ特殊な魔物暴走モンスター・スタンピートである以上、ティグさんとしては確実性の怪しい直接的なダメージより、“戦いやすさ”を重視してアレを落としたわけだし』


 街道に無造作に設置された複数の大岩。街道を完全には塞いでおらず、岩と岩との隙間からアルブラへ侵攻することは可能になっている。とはいえ、隙間といってもゴブリンなど小柄な魔物ならまだしも、トロルなどの大型の魔物になれば一匹通るのがやっとのレベル。

 よって魔物達は少しずつ大岩の隙間を通って進むか、岩を登って進むしかアルブラへ侵攻するが出来ない状態となり、そんな疎らな状態で侵攻してくる魔物達は城壁から遠距離攻撃で狙うには丁度良い的となっていた。


 ちなみに侵攻してくる魔物達の速度も、魔物暴走モンスター・スタンピートで強化されているのにも拘わらず、通常よりも遅くなっている。


「そういえば、あの岩ってただの邪魔な障害物だけじゃないの?」

「そうね、あの岩の影響だとは断定できないけど、あの辺りのフィールドには行動に制限がかかるデバフが入っているみたいね」

 アレのおかげもあってか、最初こそこちらからの一方的な攻撃となっていた。


 ……でも、今は



「ねぇ、魔物達の侵攻方法って誰かが考えてやってない??」

「……否定はしないわ」


 一方的な攻撃もニウェーブ目まで。三ウェーブ目からこれまでの行動とは異なり、魔物暴走モンスター・スタンピートによって狂化されたはずの魔物達が、ある程度の群れとなって攻め始めていた。しかも、まるで何かの意図を汲んだような戦い方に。


『攻撃内容や侵攻方法を変えてくる魔物達か……やっぱり普通じゃないわよね』

 普通の魔物ならだいたい何も考えず侵攻してくる。しかも今回は魔物暴走モンスター・スタンピートによって狂化された魔物だから、余計に考える間もなく狂ったように侵攻してくると誰だって思うはず。


 しかし、ある程度纏まって攻撃してきた三ウェーブ目はもとより、四ウェーブ目には虫型の魔物が先行して城壁にいた冒険者を牽制している間に足の速い魔物が城壁を一気に登って侵攻してきたし、ついさっきの五ウェーブ目には飛行型の魔物が攻撃することなくオークやリザードマンといった攻撃能力の高い魔物を運搬して城壁に落とすという行動をし始めていた。



「それに問題は他にもあるのよね……」

「えーっと……問題?」

 私のボヤきにニーナは頭の上にクエスチョンマークを付けて小首を傾げている。


「さっきの五ウェーブまで終わったわ。一ウェーブにつき魔物の数は約五百体ぐらいで攻めてきていたから、約二千五百体近くは倒したはずなんだけど……あの街道に塞がる大岩群の向こうには、まだまだ数多くの魔物達がいるみたいなのよ」

「え、まさかまだ集まっているの!?」

「狂化によって集められているというのが正解なのか、もしくは」


「誰かが意図的に増やしているのでしょうかね~」

「「ティグさん!?」」


 声のした方を振り向くと、全体の動きを把握・指示するために第二防衛ラインで指揮をしているはずのティグさんが。そしてその横には


「あら、あなた達アルブラ(ココ)に来ていたの」

「ええ、リアを迎えに来たのですが一足遅かったようです」

「そう」


 ティグさんの横には、前に見た時とは異なり戦闘系の神官服に身を包んだマチュアさんの姿があった。


「戻ってきた商隊の話によればリアは現地での対処が終わり次第、魔物暴走モンスター・スタンピートを避けて大回りしてアルブラに帰ってくるって話だから、それまでに魔物暴走アレらを片付けないと」

「リアのことだから色々と自分のせいにして考え込んでしまうでしょうね」

「こんな魔物暴走モンスター・スタンピートに対して責任なんて負う必要なんてないのに、損な性格ね」


 とりあえず今私達がやるべきことは一つしかない。その前に、



「ティグさん、誰かが魔物を増やしているという話は」

「あくまで予想ですけどね~、大岩の向こうから感じる魔物の圧があまり減っていないんですよね~

ウチの索敵班に調べさせていますが、見えないように何か仕掛けられているみたいなんです~、かえっておかしいと思いますよね~」


 どうやらティグさんもこの状況に違和感を感じているようで。


『とすると、かなりヤバイかも』

 信頼できる情報がなく、勝っているのか押されているのかわからない状況って良くないことこの上ない。



「今の話を踏まえ、一つあなた達に相談があるのだけど」

「面倒事なら避けたいですね……避けられるのであれば」

 ティグさんとマチュアさんがわざわざここまで来た理由なんて、どう考えても碌な話じゃないでしょ!?


いつも読んでいただきありがとうございます。


今回も校正がほとんどできていないので、誤字脱字を大量に出していると思われます……ごめんなさい。

※粗な文です…



次回は11/8(月)と二週間後を予定していますが……よろしくお願いいたします。

……ちょっと仕事をなんとかしたい。


また、ちょっと面白いと思っていただけたら、ページ下部の☆マークをクリックして、ポイントをいただけたら幸いですm(_ _)m


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