278話 王者達の協奏曲 62 アルブラの戦い 2
色々と繁忙やら何やらあって投稿が出来ず……今回もちょっと読み直しが甘いので、次回に修正している可能性があります、すみません。
「アルブラの東西にある橋は上げますが、魔物暴走達が侵攻してくる北の橋は上げずに、出来うる限りの防衛戦力を集めて対応しましょう~
また周辺の街や村、そして王都への伝令は南の門から出してください~、あとアルブラから退避したいという人達も南の門から出してあげてください~
魔物暴走への対策については……」
ティグさんは広げられた地図に魔物暴走への対策と、それに伴う防御陣の敷き方や部隊配置について説明を始め、一部の人達はティグさんからの命令で足早にその場をあとにしていく。
・
・
・
「失礼ですが、それで守りきれますか?」
「貴女は~?」
ティグさんの話が終わり、集まっていた人達が各々の任務や防衛策への対応などで忙しく動き出したことで室内がまばらになったタイミングで彼女に話しかける。
「異邦人ですが、出来ることがあるなら協力したいとは考えています。ただ、状況によってはここからの退避も考えているのが本心です」
王国に所属する冒険者ではあるものの、街と運命をともにする忠義なんて持ってはいない。
『異邦人だから死んでも復活できるとはいえ、経験値や装備を無駄にロストするような危険なことに望んで首を突っ込むのはね……』
もしリアがいたら、きっと彼女は「ここには護りたいものがあるから」とアルブラを離れることを選ばない。そうなると必然的に私やニーナも彼女の為にここに残って戦っていたとは思うけど。
「そうですねぇ~貴女ぐらい力を持つ異邦人が作戦に協力していただけるのであれば、アルブラの受ける被害を少なく出来るでしょうね~……“砦壊し”のルナ・ストーンゲートさん?」
「……それはまた懐かしい二つ名をご存知で」
「こういった地位にいると、色々と聞こえてくるものですから~」
「なるほど……」
『貴女は~?』とか聞きながら、しっかりと私のことを知っているとか……かなりイヤらしい人よね。
しかも“砦壊し”の二つ名は、以前に城塞都市近郊で無駄にチョッカイかけてきた帝国兵を砦ごと破壊しまくった際に付いた、私にとって黒歴史そのもの。
クランの仲間や城塞都市のギルドの人達に『もうその名は使わないように!』と強く言っておいたから最近聞くことはなかったけど、まさかここでその二つ名を聞くことになるとは……
改めてその二つ名で呼ばれると、無駄に頭の中がモヤるというかイヤな汗が出てくるわ。
「まぁ~私としても勝つために戦うだけですし~、そのためにはやれることは何でもしますよ~」
「何でも、ですか」
言うは易しな気もするけど。
「ええ、いざとなれば使えるカードは何でも切りますから。例えば、否が応でも城内にいる人達が参戦せざろう得ないような状態にするとか?」
「……」
ゆるふわな感じだった喋り方が変わると、ティグさんのまわりにあった空気までもがチリチリとしたものに変わる。
『この人は……ヤバい』
ゲームを始めてから王国内で多くの人達と会ってきたけど、私の中にここまでアラートを鳴らす人はいなかった。
それは単純な力の差というより、ティグさん自体が私と同じタイプでありながらも、常に彼女が上位にいると錯覚させられるの妙な感覚を持っていること。
正直、ここまでの感覚は始めてで私としても気持ちが焦ってくる。
『能力的なものだけじゃない、思考も含めたあらゆる面で戦いたくないと思わせるって……さすがは国のトップに認められた人ってことか』
とにかく、今は魔物暴走の群れと素直に戦うことで、彼女との関係性をフラットのままにしておくべきか。
「そうそう、ルナさんには私と一緒に迎撃のメイン部隊に参加してもらいますね。貴女ほどの火力が奥から援護射撃を撃つぐらいしか参戦しないのは無意味……いえ、惜しいですからね~」
「拒否権は……無さそうですね」
ニコニコと笑うティグさんの奥からは、拒否や否定を受け付ける感じどころか、それを口にすることすら思いとどめたくなるような気持ちにさせた。
……まぁ、そう思いながらもつい「拒否権は」って言っちゃったんだけど。
「ふふっ、貴女にはとても期待していますよ~、お互いがんばりましょうね~」
「ええ、出来る分だけは頑張るようにします」
「お願いしますね~」
そう答えるティグさんは、会った時と変わらないゆるふわな感じに身を包むと、場にいた要人達一人一人に話しかけては内詳細の説明を行っていった。
・
・
・
ズガッ!
ニーナが近くにいたレッドリザードマンを真っ二つに斬り伏せることで、まわりにいた魔物達は全滅している。
……あくまで今回攻めてきた分だけど。
「ハァ、ハァ……今ので何ウェーブ目?」
「……たぶん、五ウェーブ目ぐらいじゃない? 正直、ウェーブでカウントするなら間の休憩もしっかりと入れて欲しいわね、ほぼ連続な状態での侵攻だから、“ウェーブ”って言う括りをすると余計にキツく感じるわよ」
アルブラへの魔物暴走による侵攻が始まってから約一時間、私とニーナは配置された城壁の上での戦いに明け暮れていた。
『とはいえ、ここまではしっかりと魔物暴走を抑え込んでいるから、そういう面においてティグさんの立てた作戦は上手く回っていると思うわね』
見た目やらしゃべりやらから受ける印象と、やっていることとの差が凄いというか、かなりきているというか……まぁ、“かなり有能な領主でありながら高いスキルを持つ魔術師”というのがとりあえず今の評価になっている。
あ、怖いというかヤバイという感じについても変わってはいないかな。
「やっぱり四ウェーブ目だとこの戦い方もキツくなってきた」
「何も考えず戦うよりかは良いとは思うわよ?」
ティグさんが魔物暴走の侵略から守るアルブラ防衛戦。その戦い方は非常にシンプルなものだった。
・
・
・
「魔物暴走への第一防衛ラインは北門の城壁、第二防衛ラインは北門から中央への大通りに作る臨時の砦までの迎撃エリア、第三防衛ラインはその臨時砦になります~
基本的には城壁上部からの遠距離攻撃で敵を減らしながら、城壁を越えて来る魔物達が現れたら近接攻撃で潰す作戦でいきますので~遠距離攻撃が出来る人はもとより、近距離武器しか持たない人についても武器を貸し出ししますので攻めてくる魔物を攻撃しまくってください~
ただ、それだけ攻撃しても城壁を越えようとしてくる魔物は出てくると思いますから~その場合には近接戦闘で倒していってくださいね~」
「城壁で魔物を迎撃するのはわかりますが、大量の魔物が魔物暴走によって流れ込んでくるのを、その攻撃だけで防ぎ切ることは出来ますか?」
近くにいた騎士がティグさんの説明に疑問を呈す。
「そうですね~魔物暴走すべてが一気に攻め込んできたら厳しいとは思いますが、きっとそういう攻め方はしてこないと思いますよ~」
「一応そうならないように、こちらとしても手筈は整えています」
ティグさんの横にいた魔道士らしい人が彼女の説明を補う。
・
・
・
「ま、確かにあんなモノを街道に置かれたら一気に攻めづらいわね」
北の街道からアルブラの北門に繋がる道の真ん中には、直径十メートルを超える巨大な岩がいくつか設置してある。正確には、設置といより攻め込んできた魔物たちの目前に魔法で召喚した巨大な岩を落としたというのが正解なんだけど。
「岩石落としってあんな魔法だっけ?」
「私が知る限りでは直径一メートルぐらいの岩だったと思うけどね。あれは複数の魔法使いが集団魔法で召喚したものよ。あの岩一発落とすのに十人ぐらいの魔法使いが関わっていると思うわね。しかもあれだけの物量になれば、MPの消費量も空になるぐらいだと思うわよ」
岩は十個はあるから、少なくとも百人の魔法使いがアレにMPを使い切ったんじゃないかな。ま、使い切ったMPは青ポで回復すれば良いけど。
「でもさ、あれぐらい大きな岩を落とせるなら、最初から魔物暴走の群れに落とした方が良かったんじゃない? そうしたら半数とは言わないまでも四分の一ぐらいは減らせたんじゃ?」
ニーナはそう言いながら赤ポと青ポを飲んで状態を整え、漏らすそうにそう愚痴を零しながら街道に目を向ける。
「……そうね、それも一つの手段ではあったと思うけど、あの異常な魔物暴走が『岩石落としを絶対に回避しない』っていうのも無いとは言えないからね」
「え、あんな巨大な岩を回避するっていうこと?」
「それもあり得るだろうし、もっと怖いのはアレだけ特殊な魔物暴走だった場合、想像外のおかしな防御壁を持っていて、岩石落としを防ぐもしくは被害を軽減させるっていうことも可能性として考えておいた方が良いかも?」
「げ、そんなのマジであるの!?」
ニーナとしてもそれは想定外だったらしく、苦笑いをしながら私の方を見ていた。
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回も校正がほとんどできていないので、誤字脱字を大量に出していると思われます……ごめんなさい。
※既に二回ご指摘をいただきました、ありがとうございます
次回は10/25(月)と二週間後を予定していますが、ちょっと怪しいかもしれません……よろしくお願いいたします。
……ちょっと仕事をなんとかしたい。
また、ちょっと面白いと思っていただけたら、ページ下部の☆マークをクリックして、ポイントをいただけたら幸いですm(_ _)m




