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273話 王者達の協奏曲 57


「構わん」

「……えっ?」

 予想と異なるリスドさんの返答に変な間を作り出してしまい、慌てて聞き直すも内容は変わらず、


「それとも『上出来だ』と褒めた方がよかったか?」

「い、いえ、大丈夫です。ありがとうございます」

 ロックドワーフという希少(レア)な種族であるリスドさんは、手に持った資料から目を離すことなくわたしの話に即答すると、別の資料に手を伸ばす。



 ここは領主の館に連なる建物の一つ、様々な資料が纏めてられている資料館兼保管庫。まぁ、格好つけずに言えば、所謂“物置き”とか“ガラクタ置き場”と読んでも差し支えがない場所。


『リシュさんに聞いたら「多分ここにいるだろう」と言われて半信半疑で来てみたら、本当にこのフロアの奥まった一室にいてビックリしたわ』

 およそ重要なものが無いようなこの建物、その奥にやや丈夫に見える扉を抜けた先にリスドさんはいた。


 どうやらこの部屋には建物をはじめ、中にあるものすべてを来訪者にはガラクタに見せる偽視界(フェイク)の力を持つアイテムが置いてあるらしく、それが起動していることでわたしにはそう見えるらしい。

 それにしても、


『絶対に「駄目だ」って言われるかな〜って予想していたからなぁ……駄目と言われてから説得するための想定回答集が無駄になったのはちょっと悔しいかも』


 正直な所、すんなりというか少しは問題にされるかと思っていたので、ここまで即答されるとわたしの方が却って狼狽えてしまう。


『ま、今はこれ以上考えても仕方がないわよね』

 何にせよ先に進めることになったのだから、あとはとにかくやるしかない。


『問題は……ラルさんが本当にわたし達の言うことを聞いて行動してくれるかってことなんだけどね』



 ……話は少し遡る。



 ・

 ・

 ・



「なぁ、リア。なんか面白い話があるらしいじゃねーか。ちっとばかり聞かせてくれねーか?」

「え、いや、その……」

 ラルさんは医務室に入るや否や、わたしの側までやって来ると心底楽しそうな笑みを浮かべながら問いかけてきた。


 っていうか、わたしの呼び方が“嬢ちゃん”から名前にかわっているし。まぁ、別段イヤってことはないけど、なんだかちょっとむず痒い感じ。

 それよりも、


『マ、マギーさん!?』

 不意に視線を向けた瞬間、となりにいたマギーさんも同じタイミングで明後日の方向を見てから、ゆっくりと視線だけをわたしに向ける。


『ごめん! でも仕方がなかったのよ、死撒剛腕(テンペスト)が私を見つけるなり、凄い勢いでこっちに来て「アルブラの異邦人(プレイヤー)が顔と名前を隠した訳有りで闘技場で参戦してるなんて普通じゃねーよなぁ?」って超至近距離で問い詰められるのを想像してみてよ! そんな状態で話を躱しきるなんて絶対に無理だから』

『あぁ、まぁ、容易に想像は出来ますけどね……』


 押しが強いというより、こちらの話をしっかりと聞いていないようにすら感じてしまうラルさんからのプレッシャーに、距離を詰められる感じに若干とはいえ気後れしてしまう。



 バン



「イっ!?」

 会話中によそ見をしたのが気に入らなかったのか、ラルさんはわたしの両肩に手を置く。痛みというか、その衝撃に思わず声が出る。


「相手は人間の女の子なんだから、そんな勢いで肩に手を置いたらビックリするわよ」

「いや、ちょっと手を置いただけなんだが……すまんな、痛かったか?」

「だ、大丈夫ですよ」

 いや、結構痛かったけどラルさんに悪気がないのだったら仕方がない。


「でだ、強い奴を探してるって話なんだろ? まぁ、何するか知らねぇけど、強い奴が必要ってことならオレ達で事足りるだろ?」

 ラルさんはそう言ってから自分とクロウさんを指差す。

 ……あ、クロウさんがため息ついてる。ということはラルさんに言われて仕方なく同行しているってことなのかな?


「えーっと、確かに強い人を探していますが、ちょっと上の人に確認をしないと……わたしだけでは決定できないので」

「よしっ、だったらその上役とやらに確認しに行こうぜ!」


『えっ、行こうぜ……?』



 ・

 ・

 ・



 その言葉の意味を確認する間もなく、わたしはラルさんに急かされるままに闘技場を後にし、リスドさんがいるということで資料館へ連行され、最初の質問と返答になった。


「あの、リスドさん。確かにかなり強い人にお願い出来そうですが色々と……」

「下手な奴を連れて行くより、癖があろうが強い奴の方が良い……例えそれが死撒剛腕(テンペスト)だろうとな」


「!」

 え、まだラルさんのこと言ってないですよね!?


「言わんでもわかるわ。扉の向こうから儂にガンガン気当てをしてくるバカなんてそうそういて堪るかよ」

 そこで初めてリスドさんが手持ちの資料から目を離すと、扉の方を軽く見る。


「さすがに炎骨か」

「もう少し年長者を敬え死撒剛腕(テンペスト)


 リスドさんに名前を呼ばれると、悪びれた表情をすることなくラルさんが扉の向こうから姿を表し、一緒にベニさんとクロウさんもその後ろに並ぶ。



 ギン!



『……うわぁ』

 見えないはずなのに火花みたいなものが二人の間でバチバチしているし……怖っ!



「なに、最初に言った通りなるべく強い冒険者が必要な以上、訳ありの人物だろうと構わんという話だ」

「はぁ……」

 この状況からどう話を進めるべきかに頭の演算能力を使っていたわたしとしては、やや拍子抜けな感じに。


『大丈夫かなぁ』

 とりあえず話が進められるってことなら良しとするけど、ただただ不安しかない。

 というか、このメンバーで行くところってどこなんだろ?


「クロウと死撒剛腕(テンペスト)の二人か。それに儂とリシュに嬢ちゃんなら行けるだろうよ」

 リスドさんは手にしていたいくつかの資料を懐に入れると改めてこちらを見る。



「あの、結局どこに行くんですか」

 肝心な行く場所を聞いていないんですが?


「なに、そう足した場所じゃない」

 そう言いながらリスドさんは指先を地面に向ける。


 ……地下? 地下って


迷宮(ダンジョン)都市ビ・ディンの名所だよ」

「やっぱりそうですよね……」

 なんとなく、そんな気はしていました。


「ああ、言い忘れたが」

「はい」

「ちなみに目的地は地下五十階だ。探求者の推奨レベルも五十ってところだな。まぁ今の嬢ちゃんのレベルじゃ気を抜いたら一瞬で死ぬことになるかもしれんから、死なないように気合い入れてついてこいよ」



 ……は?



いつも読んでいただきありがとうございます。


連休中に書き溜めするつもりが、オリンピック見ていたら連休が終わってました……

まだまだ週間掲載までの道のりは遠そうです(自業自得)。


次回は8/9(月)と二週間後にさせていただきますのでよろしくお願いいたします。

……もう八月の掲載です、時間が過ぎるのが早いなぁ。



また、ちょっと面白いと思っていただけたら、ページ下部の☆マークをクリックして、ポイントをいただけたら幸いですm(_ _)m


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