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269話 王者達の協奏曲 53 vsクロウ 5

前話上書きしちゃった……バックアップない orz

 


「ハァ……」

 大きく息を吸ってから、やや中腰に近い構えをとると右腕をクロウさんに向かって真っ直ぐに伸ばす。


『前よりももっと速く、今よりももっと速く、イメージするのは高速で相手を貫く一本の槍』

 構えによって両脚に強い力が宿る。


『クロウさんとの距離は約八メートル』

 現実世界なら一歩や二歩じゃ届かない距離だけど、この世界(ゲーム)の中、そして【羅刹の息吹(バフ)】が切れていない今のわたしなら……行ける!



 ダッ!



()っ!」

 両脚に宿った力を床に叩きつけるようにしておもいっきり踏み込む。


『……前よりも、速い』

 今までと同じ【羅刹の息吹】がかかった状態なのにも拘らず、視界に写るまわりの様子は、いつもよりもさらに超スローな状態。それこそコマ送りに感じるほど。



 ダダッ!



『この速さなら!』

 クロウさんに攻撃が当たる間合いまで、あとほんの僅かな距離。


【さっきも言ったけど彼の反射技(カウンター)、その肝となるの“勁聴”は、発動している限り普通に攻撃を当てるのは無理よ。どうするつもりなの?】

『フェイントもブラフも効かないんでしょ、だったら反射技(カウンター)で返せないレベルの速さで技を叩き込むしかないじゃないの』

 その為の【羅刹の息吹】であり、より強い意思を込めた行動なのだから。


【そういうモノでもないと思うのだけど?】

『これでダメなら今のわたしに打つ手なんてないわよ』

 わたしはマチュアさんやクロウさんのように高度なテクニックを持つ訳じゃない。だから今の自分が持つ最大最高のリソースを、最も有効と思える行動に割いて戦うだけ!


 そう思い、構えから手刀を繰り出した瞬間。



 ピシッ



『んっ?』

 どこかから聞こえた、何かが壊れるような変な音。発生元は……わたしの中から!?



 ビシッ!



「!」

 更に大きな音が聞こえた瞬間、音と共に体中に衝撃が走る。それは“痛み”という言葉で収まらないもの。



「ガハッ!!」

 心臓から指先に、そしてお腹から爪先へ燃えるような激しい痛みが伝播する。その痛みは尋常なレベルではなく、あまりの痛みによって【羅刹の息吹】が継続できなくなり、赤く染まっていた視界が普通(クリア)に戻る。



 ヴン



『あっ』

 水の中に入って体が重たくなったような、そんな感覚に思考までもが固まりかけたところで目の前にある状況に息が止まる。


『止まれ』

 【羅刹の息吹(バフ)】が無くなった状態で出す闘技【方天月牙(ほうてんげつが)】。勿論、威力や速度はわたしが使える闘技の中でも最高レベル。

 普通の相手に出しているのであれば問題ないけど、目の前に立つ相手には簡単に防がれるし、彼の持つ反射技(カウンター)であれば格好の餌食にしかならない。


「止まれ!!」

 しかし、既に出している手刀は止めることが出来ず、そのままクロウさんの胸元へ。

 結局、さっき反射技(カウンター)で防がれた時よりも更に速さで上回るつもりで出していた攻撃は、半ばブレーキがかかったような感じでそのまま進み続ける。


『やば、これ、じゃ』

 痛みで朦朧とした頭でもわかる結果に少しでも抗おうと考え、クロウさんに当たるタイミングをずらそうとするものの体は全く言うことを聞かない。結果、ほぼ惰性に近い感じで出してしまった攻撃はクロウさんに軽くあしらわれ……



 ドッ!



「えっ?」

 『反射技(カウンター)で反撃され、負ける』、そう思っていた予想とはまったく異なる状況に変な声が出る。



「やってくれるね」

「……」

 深々とまでは言わないものの、クロウさんの腹部に刺さった手刀から感じた与ダメ感はそれなりのものになっているはず。

 そう思っていた矢先、


【逃げなさい!】

『!!』


 “もう一人のわたし”からの喚起によって止まりかけていた意識が元に戻ると、密着状態だったクロウさんとの間合いを急いで離す。



 ゴッ



【何をボサッとしているのよ】

『ごめん、ありがとう』

 ついさっきまでわたしがいた場所に巨大な氷の塊が落ちていた。


『正直、あんなにキレイにヒットするとは思っていなくて。というより、完全に反射技(カウンター)で返されると思っていたわ』

【ただ単純に運が良かっただけよ? 攻撃の途中に【羅刹の息吹(バフ)】が切れたことで、本人と意思とは異なる挙動となるとか普通はあり得ないでしょ】

『意思と異なる挙動?』

【だってそうでしょ、意思を持って行動していた攻撃がバフ切れによって当初の予定とは異なる速度でヒットする。彼が“勁聴”で見ていたものと、あなたの実際の行動が大幅にズレた行動によって“運良くヒットした”っていう結果でしかないわよ】

『ははっ、手厳しい評価で』

 偶然の産物という内容に対し、“もう一人のわたし”は辛口というか何というか……


【ちなみに与ダメが大きかったのは反射技(カウンター)を空振ったことで、発生した隙に上手くハマったていうことよ。クリティカルヒットした分、ダメージは通常よりも二倍近くにはなったみたいね。ま、それでも彼のHPは四割ぐらいしか減ってないけど】

『一撃でそれだけのダメージが与えられれば十分』

 与ダメと被ダメ、現状での数値的なもので言えば勝負になっている。


【でも同じ攻撃はできないでしょ、【羅刹の息吹(バフ)】も使わないみたいだし】

『ええ、でも今の攻撃でヒントが貰えたから』


「ようはズレ(・・)ればいいのよね」

 構えからの一連の動作としてポケットに手を入れると、手にそれ(・・)を忍ばせる。


【使えるの?】

『使うのよ』

 確かに実践では使ったことはないし、練習でもイマイチ威力を出し切れていない。でも、


「やってみる価値はあるから!」



 《修羅の息吹》



『“羅刹の息吹”に比べて効果は落ちるけど……やれるものは全部やってやる』

 【修羅の息吹】を唱えてから意を決すると、わたしは再度クロウさんに向かって走り出していた。



いつも読んでいただいてありがとうございます。

うっかりミスで前話を消してしまうボケです……


バックアップもないし、どこかで思い出して書くことにします……


次の話を書く前に、前話を直すので、次回はちょっと先になります……すみません。

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