268話 王者達の協奏曲 52 vsクロウ 4
21/5/17 上書きで「268話 王者達の協奏曲 52 vsクロウ 4」が無くなっています、すみません……
復旧できましたがあってるかどうか……ちょっと違うかも!?
【クロウの視点】
『おいおい、今の動きというか一連の行動は……』
使っている当の本人は否定しているが、本当にチートじゃなかったとしたら、さっきのは何なんだ?
『高速の動きはスキルか闘技か、それとも……』
消えたと思った瞬間、相手はボクの真後ろにいた。
『走って移動した気配は感じられなかったから、さっきのアレは瞬間移動系のものだとは思うけど』
スキルとすれば短距離のテレポート系、闘技なら縮地か。どちらにしても伝説級であり、極僅かな冒険者が使えるモノ。ちなみに異邦人プレイヤーで使える奴をボクはまだ知らないし、使える異邦人がいたらネットニュースに流れていてもおかしくはない。だか、
『問題はその後の異常な回復だよ』
彼女が出した高速移動からの大技は【桜花乱気流】で返した。あの闘技自体、それなりにMPを消費するから連発出来ない分、決まれば良くて瀕死、下手すりゃ即死になるだけの大技であり、さっきのタイミングなら最大級のダメージ……即死扱いの与ダメになってもおかしくなかったと思う。
それなのにあまつさえ立ち上がり、ただのヒールで見た目ではあるが完全回復とか、冗談はよしてほしい。
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「世界は広いというか、理解しきれないことばかりで困ってしまうよ」
「何か?」
目の前に立つクロウさんが驚いてから何とも言えない表情でこちらを見ている。まぁ、驚いているのはわたしも同じだから仕方がないか。
『そもそもカウンターって簡単に出来るものじゃないわよね』
しかもあんなに高威力なカウンター……って、クロウさんが使った【反射技】のダメージについては、半分はわたしの放とうとした闘技によるんだっけ。
【カウンター技ならあなたも使うし、あなたの師匠も使っていたじゃない。アルブラを出る前、【霞当て】からの【朧炸夜】って強烈なカウンター技を食らっていたのに忘れた?】
『あぁ、そう言えばそうだったわね』
あの時も【羅刹の息吹】で能力を上げてからの超スピードで攻撃に行ったところをカウンターでガッツリやられたっけ……
【ま、同じカウンターと言っても、彼女が使っていたカウンター技は“誘罠型のカウンター”で、彼の出したのは“反射技のカウンター”だからタイプ的には違うけどね。
『どっちにしても痛い闘技に変わりはないし』
どういう過程で出された技であっても痛かったものは痛かったわけで!
『はぁ、どうしたものかな……』
マチュアさんクラスの高い技術を持つ冒険者の、予定外で予想外となった相手の攻撃に対し、わたし自身がどう対応すべきか……
【で、どうするの?】
『それがわかったか苦労しないのだけど』
【羅刹の息吹】の効果時間は残り一分を切ろうとしている。とにかくこの効果が終わる前に何とかしないと。
【あなたが使っている【羅刹の息吹】って、効果が切れるような時間設定なんか無かったわよね? 延長して使えばいいじゃないの】
『ん、まぁ確かに効果時間は無いけど、使っている間に来る負担がかなりキツイわよ。それに……』
【それに?】
『約束したから、マチュアさんと』
─── 使わざるを得ない場面に出会い、使うことになったとしてもリアの命の負担が限られるように。そしてそれ以上使うことが物理的に出来なくなるよう、使用についての制限を禁として課せてもらったわ。
課した内容については“羅刹の息吹”を“一日一回、発動を三分以内”とさせてもらったわ。だから三分を超えたり、二回目を発動させると印に溜まった力をトリガーに、印の描かれた左手が爆発する。そうなれば戦闘を継続することは出来ないでしょ?
【約束っていうより制約でしょうに、しかも肉体が破裂するとかマゾの極み】
『マゾじゃありません!
それに傍から見てそれが制約であっても、わたしとしてはマチュアさんとの繋がりであることに間違いはないし、大事な絆なの』
わたしがわたしらしく、そしてゲームの中とはいえ家族と思ってくれている人との約束であるなら、守りたいという気持ちであることに誇りを持ちたい。
【まぁ、私はあなたの一部というか半身みたいなものだから、あなたが決めたことにイヤとはいわないけどね。
……面倒な生き方を選ぶのね】
『否定はしないわ』
面倒で結構! それが“わたし”なのだから。
【とりあえず、あなたの師匠にしても目の前にいる彼にしても高レベルのカウンター技を出す為に“勁聴”の闘技をマスターしているから、カウンター待ちに対してこちらの攻撃を当てるのは至難の業ね】
『“勁聴”って?』
勁に関する技や知識はマチュアさんから色々と教えてもらったけど、勁聴に関しては習った記憶がない。
【まぁ、簡単に言えば“事前に相手の気配を察知する能力”だと思えば良いわ。彼女があなたに教えていないのは時間がなかったからだと思うわよ、一朝一夕で憶えられるような闘技じゃないもの】
『そんな高レベルな闘技をクロウさんは身につけているってこと?』
【そうね。しかもあなたのように化勁や発勁を使う格闘型の冒険者ならまだしも、彼はたぶん勁に関する闘技は使えない】
さらっと凄いこと言ってない!?
『……えーっと、さっき食らった技は』
【さっきも言ったけど、あれは相手の力や闘技を利用したものだし、反射技から【桜花乱気流】っていう闘技を使っただけよ。
どちらもMPを大量に消費する非効率な闘技だし、彼が使った反射技は対格闘専用の闘技っていう趣味レベルのものだった記憶があるわね】
『趣味レベルの闘技にやられかけたって地味に泣きそうなんだけど……』
もの凄い技だと思うのに、“趣味レベル”っていうラベルを貼られただけで、やられたわたしの方が悲しいというか、複雑な気持ちになるんですが……
『ま、それはさておき“勁聴”という闘技でわたしが技を出すタイミングが知られてしまっているのがわかっただけでもマシかな』
やりようが無いわけではない、と思えるのは不思議な感じ。
【言うまでも無いとは思うけど、今やっている三本目の試合までにあなたの動きは見切られているわ。だからある程度のブラフやフェイントは読まれて通じない可能性が高い】
『でしょうね』
そもそも虚々実々的な動きとかもそれほど習っていないし。
『だから』
ガッ
「正面からブチ当てる」
【あら〜汚い言葉使い】
“もう一人のわたし”が何か言っているけど今は聞き流す!
「どうやらボクが何をしたかを知った上で正面から来るって宣言するなんて何が狙いかな」
「お好きなように、どうとでも捉えてください」
端からレベル差が違うことだって分かっていた訳だし、格闘系の闘技においても段違いな強者であっても今更な話。
『迷う必要なんて無かったのよ』
なまじ一本目で勝ったことから色々と欲をかいてしまった。ここはもう一度スタートラインというか、何を考えてクロウさんと戦うことにしたのか思い出す。
スッ……
大きく息を吸ってから、やや中腰に近い構えをとると右腕をクロウさんに向かって真っ直ぐに伸ばしてから強く床を踏みつけた。
いつも読んでいただきありがとうございます。
休日出勤という予定外によりアップ時間が遅れました……
次回は5/17(月)と二週間後にさせていただきますのでよろしくお願いいたします。
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