27話 聞いてみなくちゃわからない
ド○じゃないですよ、たまたま色とか重なっただけで!?○ムは好きですけどね……
「強運か凶運かって言われたら強運なんだろうけど、選ぶかどうかと言われたら間違いなく選ばないPAよね、アレは」
「うーん、ジェットコースターお持ち帰り?」
翌日、生徒会で昼食を食べなから昨日の出来事を二人に話していた。要さんは呆れたというか何とも言えない表情だし、那緒ですら流石に引きつっている。
「どーすんの?」
「どーしましょ?」
PAは関連するスキルの熟練レベルがトータルで一定値を超えることで、二体目を入手する資格を得ることが出来る。だからどこかのタイミングで違うPAに乗り換えること自体は可能にはなっている。
ただし、初めて四日目で熟練レベルどころか、PAの操作スキルすら未入手な状態で、そんなことを考えること自体が不毛でしかない。
そして例のスキルマイナス問題が解決しない限り操作スキルは入手できない訳で、いつになったらPAの熟練レベルを上げて普通のPAに乗り換えられることやら。
「ていうかさ、それ以前に型:ハマルなんて操作しきれるの?」
「そうなんですよね……」
型:ハマルが目撃されているのは各国で数台、メインの戦力として活躍しているのは帝国と首長国、共和国で一体ずつ確認されているだけで、他に情報が無いのは単にレアPAだからというより、『使いづらくて倉庫の肥やしになっている』と聞くのは本当なようで。
複雑な操作、クセの強い動き、パイロットを酔わせる機動力に『慣れるか諦めろ』という言葉が似合うとまとめサイトに書いてあるのを見て、思わずため息が出る始末。
まぁ更にレアな半飛翔の型じゃないだけましと考えれば……うーん、同じレベルじゃないかな、多分。
でもあっちは『全てがハードなスペックに希望と絶望を』と更に酷いことが書いてあったから、型:ハマルよりハードル高いのは間違いないよね。
ちなみに半飛翔の型が活躍しているのは帝国で一体のみという状態で、しかもそれを扱うのはパイロットのエースとのこと。
見てみたいような、見たくないような……だって、見るってことはその場にいることだし。戦場では会いたくないよねぇ……どうやったてそのエースさんに落とされる未来しか浮かばないし……
「で、召喚はもうしたの?」
「していませんよ! 扱えないというか操作できないのに召喚しても他人の邪魔するオプジェにしかなりませんし」
見てみたい気持ちがあるのは事実だけど、そのあと扱えないのを見られて笑われるのはイヤだし悔しい。
「でもせっかく産まれたPAが主の顔を見られないのは悲しいんじゃないのかなぁ」
うっ、那緒の言葉が地味に痛い!
「まったく、本当にスキルマイナスが悪い方に効いてるわね、選択肢がおもいっきり削られてるし」
要さんも色々と情報を仕入れて何とか抜け道がないか探してくれているけど、やっぱりそんな都合がいいのは無いみたい。
「ん~」
「どうしたの那緒? 食べ過ぎでお腹痛い?」
「んーん、まだまだ入るよ~」
おかしい、自分のお弁当の他に約束したわたしのお弁当(大盛り)を追加で食べてるのに……
「じゃなくて、どうして阿里沙はスキル取れないんだっけ?」
「前にも説明したけど、スキルマイナスって借金みたいなものがあって、レベル11まで新規のスキルを取れないのよ」
「だったらサクっとレベル11まで上げたら?」
「だからレベル上げようにも戦闘スキルもPAスキルも無いから戦えないんだって、今だってその代わりにマチュアさんに格闘術習っている訳だし」
「でも戦おうと思ったら魔物と戦えるよね?」
「そうだけど、まだパンチとキックとか……型っていうのかな? そういうの習っただけだし。そもそもマチュアさんから魔物と戦う許可出てないし」
「どうやったら許可出るの? 試験? 一定の経験値? それとも一発勝負?」
「それは、ほら……」
ん? そう言えば魔物と戦っても良いっていう許可ってなんだっけ? 聞いたかな? 聞いてないかな??
「じゃ、今日はそれ確認してみようよ」
この子はマチュアさんに聞くのを何かのアトラクションと勘違いしていませんかねぇ!?
「ま、いまのままじゃ埒が明かないのは確かだし、ここは正面からぶつかってみなさい!」
「骨なら拾うよ~」
「いや、最初から骨になるの前提にしなくても!?」
「骨……残るかなぁ」
ぎゃー、なに那緒も不吉なこと言ってんのよ!
「とりあえずあの人と戦うとかなりそうなら教えてよ、応援に行くよ!」
「なんだろう、その不安要素マックスな那緒の応援ってば!?」
そうなってもお願いだから乱入しないでよ。
結局、そこから話を押しきられる形で、今日のログイン時にマチュアさんへ魔物と戦う許可について聞くことに…… 何も考えなしで大丈夫かな?
―――◇―――◇―――
「あら、やっと聞きに来たの?」
「え?」
ログインしてからいつもの感じで朝食の準備をし、午前の治療を経てから昼食を済ませた後にマチュアさんに聞いてみたところ、意外にもあっさりとした返答に驚いた。
もっとも、まだ許可も出ていないけど。
「試験とかは無いから安心して。ただし私と組手をして、納得した一撃が出るまでは許可しないわよ?」
ほら、やっぱり課題あるじゃん!
「まぁ、まだ習い始めて一週間だから大したことはできないと思うけど、いまリアができる最高の一撃が出せたら大丈夫。それに今日がダメでも後日何回だってチャレンジ受けるわよ?」
「今のわたしができる、最高の一撃ですか……」
そこまで考えて攻撃したこと無いけど、機会あるなら挑戦しないとね!
「じゃあ、夕食後に行いましょう」
「はい!」
「あ、そうそう。とりあえず今日だけでいいから夕食はそれが終わってからにしましょう」
ニコニコとしながら言うマチュアさんはいつもと同じように見えたけど、どことなく違和感が。
『なんだろう……』
違和感が不安になったけど、やると言ってしまった以上はもう逃げられない。
そしてその不安を、わたしは後で体で知ることになる。




