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264話 王者達の協奏曲 49(主人公視点ではありません)


「なんだか妙に盛り上がってるじゃねーか」


 暇つぶしのダンジョン探索を終えたオレ達が報告がてらに冒険者ギルドに来てみると、ギルド内に併設されている闘技場から、いつも以上の熱気が伝わってくる。


「……また飛び入り参加しようて考えてなんかいないわよね?」

「さすがに『次やったら出禁』だなんて言われているからな」

「どうだかねぇ……」


 一緒にダンジョンに潜っていた仲間が、溜息をつきながら冷めた目でこちらを見る。


「でも熱気があるのは確かね。盛り上がるような展開でもあったのかしら」

「オッズが高くなるような……十連勝でもかかった試合か」

 金がかかかれば熱量は上がる。それを望むかどうかは別としてだが。


『とはいえ、少し熱の入り方に違和感みたいなものがあるな』

 嫌いじゃねーが、ピリつく感じとちょっと違う感覚は何かが足らねぇっていうかなぁ……



「お、旦那」

「よぅ、儲かってるか?」

 ギルドに出入りしている間に、何かとやりとりをする仲になかったギルド職員の男がオレを見つけて挨拶してくる。


「ま、ボチボチってとこですわ……と言いたいところですが、見ての通り暫くぶりの十連勝がかかった試合のおかげでイイ上りが出そうでね」

「やっぱり十連か。そうするとこの騒ぎの主役はモルゲンか? それともガラクーダか……あとはクロウってところか?」


 十連が狙える奴なんて限られている。闘技場(ここ)によく顔を出す奴っていう暇人に絞られることもあるが、それなりに力が無ければ五連勝すら出来ずに終わる。


「さすがですな、旦那がいう通りクロウの奴が十連勝かけてやってます」

「まぁ、アイツならわかるが……ただ、ちょっと盛り上がり方が普通じゃねーよな」

「ははっ、旦那の感知力は怖いですなぁ」


 ギルドの男は近くにあった映写台に手をかざし、映っていた他の試合を強制的にクロウの試合に変える。



「二本先取でやっているっていうことは、クロウの奴が対戦者に興味がある相手ってことだろうが……相手は女のモンクか?」


 悪い癖という訳じゃないが、クロウは気になる相手との試合はみっちりと戦いたくなるようで、一本勝負じゃなく二本先取で行うことが多い。

 実際、オレがここに来てクロウと最初に戦った際にはアイツから二本先取で申し込まれていた。結果としてはオレが二本連取して終わったというオチがついたが。


「あの挑戦者、なんでもマギーからの特推ってことらしいですわ。

 ま、もうすぐ二本目が決着つきますが、一本目は相手の方が取りましたし、実力自体はあるですな。レベル20のわりには大したものですぜ」


「マギーって、確かエルフのギルド職員だったやつだな」

 隠しているが実力はかなりのもの。ただ悲しいかなエルフ特有のスレンダーなスタイルによって、オレの好みからは外れている。

 それよりも、


「レベル20の挑戦者がレベル50のクロウから一本取っただと?? アイツどれだけ遊んでたんだ」

「どうでしょうなぁ、傍から見てる分にはそれほど遊んでいるようには見えませんでしたぜ? ま、時間切れっていうこともあって運良くか運悪くかわかりませんが、挑戦者の方が上手く一本取れたってことでしょうよ。

 実際、二本目も時間切れとはいえ体力を七割残してクロウが勝ってますから。挑戦者の方は残り四割ってとこですから、レベル差にあったスコアに終わってますな」


「……」

 結果としてはそうかもしれんが、経過はどうだったんだ? 一応、コイツだって冒険者ギルドで働いている奴だから、実力を見誤ることはそうそう無いはずだが。

 それに上手くいったからといって、クロウから一本取るのに運だけで片付けるのは……


『実際にこの挑戦者の女が、レベル差を超えるような実力を持っている者だとすれば』

 レベル差は単純な数値であって、それをそのまま力の差とする考えは短絡すぎる。それこそ、アイツら異邦人(プレイヤー)とこの世界で生きるオレ達とは、同じレベルであっても力の差としてはかなり出ている。



『とはいえ異邦人(プレイヤー)同士なら……』


「ん?」

 色々なことを考えている間に二本目の試合が終わり、試合の中で盛り上がったポイントが映写台に映された。そして、話題となっている挑戦者が写り……


『あの動き』

 映写台に表示された名前は知らないが、リピートで写った動きには見覚えもあれば、技を受けた記憶もある。


『気がついた?』

 横に移動してきた仲間が、映写台に映された女を見て小声で話しかけてきた。


『ああ、まさかって気持ちの強いがな』

 挑戦者の全身が下から舐めるように映される。顔は仮面をしているからわからないが、金色の長髪で装備の上からでもスタイルの良さがわかるほどのグラマーな体格と白い陶磁器のような肌……おいおい、コイツは!?


『あんな動きしていたら顔なんざ見えなくてもわかる』

『あら、体つきとか見て思い出していなかった?』

『否定はしねぇ、アレはオレが惚れた女だからな』

 あの特徴的な動きで予測はしたが、その後、映写台に写ったあの体つきを見て確証に変わった。


『乱入しないでよ』

『しねぇよ』

 オレ以外の奴と戦うところを見て熱は上がるだろうが、アイツの邪魔をする気はサラサラ無い。とはいえ、今から闘技場に行っても良いポジションで見るのは難しいだろうなぁ……



「インターバルは何分だ」

「二本目と三本目は十分だが……乱入するなよ!? 試合が無効になったら暴動が起きる!」

「なに、乱入はしないが」



 ガッ



「お、おい」

「なんだよ、ちょっと肩に手を回しただけじゃねーか」

「旦那のそのバカ太い腕で肩を抱かれたら骨が粉砕しちまう!」


 ひでぇ言い方だなぁ……


「なぁ、オレが熱くなったらヤバいのは知ってるよな?」

「あ、ああ」

「じゃ、悪いがちょっと特等席を用意してくれねぇか? オレがいても周りに迷惑かけないような……そうだな、ギルドの幹部用の席なんかちょうど良くないか?」

「旦那の頼みなら用意できなくもないが……ぜ、絶対に暴れるなよ」

「大丈夫、暴れねーよ。オレだって出禁食らうのはイヤだからよ」

 面倒ごとを起こしてアイツと一緒にいられなくなるのもツマラナイしな。


「じゃ、お二人様招待ってことで頼むわ。オマエも来るだろ、ベニ?」

「仕方ないわね、アンタだけで行かせて面倒なこと起こしたくないから、仕方がないけどついていってあげるわ、ラル」


 そう言うと嫌そうな言動とは裏腹に楽しそうな表情を浮かべてベニが近寄って来る。



『まさかビ・ディン(ここ)でアイツ会えるとはな』

 あのバカ皇子がドンパチするならビ・ディン(ここ)と予測して先回りしていたら、まさかリアに会えるとは……やっぱり女神様がオレ達のことを応援してるだろ?


「楽しくなって来たじゃねーか」

「ほどほどにね」

「頼むぜ旦那……」

「大丈夫だ、絶対とは言わないが安心しろ」

 こういう機会を与えてくれる女神様に感謝する方が先だしな。それにしても、



『良いね、悪くない』

 とりあえず楽しそうなことが増えるのは大歓迎だ。その先に何があるかまでは考えねぇがな。



いつも読んでいただきありがとうございます。


今回も誤字脱字の訂正報告、ありがとうございます。

す、少しは減ったような気がしますが過去から発掘されてプラマイはゼロですが……


次回は3/15(月)と二週間後にさせていただきますのでよろしくお願いいたします。


また、ちょっと面白いと思っていただけたら、ページ下部の☆マークをクリックして、ポイントをいただけたら幸いですm(_ _)m


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