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260話 王者達の協奏曲 45



「さぁ、インターバルも終了! ただ今より一番闘技場では十連勝を狙うクロウ選手の一戦が始まりますが……その前に冒険者ギルドのチーフ、マーガレットさんからこの一戦について案内があります!」



「「「「「マギーさーん(ちゃーん)」」」」」



『……すっご』

 場内アナウンスから名前を呼ばれたマギーさんが闘技場に現れた瞬間、建物内に響き渡る凄まじいコールが。


「冒険者ギルドでも一番人気ですからね、彼女」

「なるほど」

 まぁ、この声援を聞く限りそれが真実なのは間違いない。


「っていうか、中には“抱いて!”とか“そのヒールで是非踏み抜いて下さい!”とか、一部ヤバそうな内容がありますが」

「あぁ、まぁ、色々な人がいますから。色々な人が……」

「はは……」


 わたしの横にいるギルド職員の人も困ったような表情でため息をつき、わたしもそれに釣られて愛想笑いを浮かべる。



「皆さん、次のクロウ選手の一戦ですが、急遽冒険者ギルドからの推薦選手との戦いとします!

 相手はレベル二十、戦闘神官(モンク)のヒソウ(仮)選手です!」



「「「「「えぇーっ!?」」」」」



『反応というか、ざわつきが凄いですね』

 単純に驚いている声だけでなく、中には『ふざけるな!』とか『ちょ、待てよ』とか色々な内容が飛び交っている。


闘技場(ここ)での試合は賭け事としてもかなりの人気で、一戦一戦でかなりの額が動きますからね。とくにクロウ選手の次の一線は“十連勝を賭けた大一番”ですから、特に注目度が高かった分、予定外のことがあった場合だと、どうしても荒れてしまいことになりますね』

『……えーっと、そんな大事な試合の相手がわたしって本当に良いのでしょうか?』

 え、なんか場違いというか、不味くないですか。


『そうですねぇ、マギーさんの考え全てを理解は出来ませんが、アレ(・・)を見ている限りでは良いんじゃないかと思いますよ』


 職員さんが見た先、そこには真っ赤な文字で点滅する【注目!】の文字と、その横に表示されたオッズを見てざわつく冒険者達が。


『あの“注目”の文字が付くオッズ表示は冒険者ギルドだけでなく、ビ・ディン中にある賭博施設でも閲覧が多く、大量に賭けられている証拠です。

 それにクロウ選手対ヒソウ選手のオッズに釣られて、他の三試合も軒並み良い感じで入ってます。これならかなりの金額が動くことになりますから、胴元(ギルド)としては有り難い話ですよ』

『賭けられる対象としては複雑ですね……』



 一応、第一から第四闘技場までの同一ラウンドの勝敗を当てるタイプであれば出場選手も賭けることは可能らしい。ただ、わたしは自分の対戦相手だけでなく、他の試合に出ている選手がどういった人かわかっていないので、四つ全ての試合を当てるのは正直なところ難しいとかいうレベルでなく、ただの無謀な行為にしかならないという判断ぐらいは出来る。


『下手したら数百万とか凄い額が手にはいるかもしれないとはいえ……ねぇ』

 わたし自身の戦いだってわからないのに、それ以外も当てるとか到底無理でしょ? それよりも、



『この人とどうやって戦いを進めるべきかが目下の懸念事項なんですが……』

 そうボヤきながら手元にあるプリントに改めて目を通す。


 ・

 ・

 ・


「はい、これがあなたの対戦相手のプロフィールね」

『あ、はい。ありがとうございま……す!?』

 マギーさんから手渡された相手の情報。その内容を見て思考が止まる。



【名前:クロウ・マドゥルマーナ】

【種族:人間】

【性別:男】

【職業:冒険者 (所属ナシ)】

【戦闘職業:魔法剣士】

【レベル:五十】

【戦闘スキル:片手剣、両手剣、黒魔法、青魔法】

【獲得記録:十連勝十五回、トーナメント優勝二回】



「メチャクチャ強い人じゃないですか!」

 明確な数値として出ているのが“基礎レベル五十”ってことだけど、基礎レベルがそんな値(カンスト)になっていたら戦闘スキルもカンスト、もしくはそれに近しいレベルになっている可能性が高い。


 というか、連勝記録とかトーナメント優勝とか、タイトルホルダーな冒険者と戦うって……マジですか?


「正直な所、物凄く大変な一戦になるわね。

 でも、それぐらい強い人と戦って出た結果じゃないと、あなたが希望している“強い冒険者”と接触出来るチャンスは無いと思うわよ? まぁ、名前出したら集まるだろうけど」

「あ、いえ名前を出すのは止めておきます……」

 マギーさんに言われてから想像した結果、身バレしたらどう考えても面倒事になる未来しか見えなかった。ただ、


「とりあえずマギーさんの言う通りに出場しますが、大丈夫でしょうか?」

 名前を出さずに出ることもそうだけど、実際問題としてかなり格上のクロウさんと戦っても敗戦濃厚だし……


「大丈夫、勝てば問題ないのは当たり前だけど、負けたとしてもそれなりの結果を出せていれば求人しやすくなるから」

「そういうものですか?」

「そういうものよ。ま、だからリアちゃんには最初から負けるつもりで戦うんじゃなく、クロウくんに勝つつもりでやって欲しいかな〜」


「……善処します」

 やるからには勝つつもりでやらないと、わたしを鍛えてくれたマチュアさんにも顔向け出来ないし。



「さて、クロウくんのプロフィールについては見てもらったと思うけど」

「はい、レベル五十(カンスト)異邦人(プレイヤー)は想定外でした。まぁまだこの世界の冒険者じゃなかっただけマシとはいえ、厳しいことに変わりはないですね」


 異邦人(プレイヤー)とこの世界の冒険者、同じレベル五十であっても力の差というか、質の部分で別次元とも言えるだけの差が発生しており、異邦人(プレイヤー)から見た場合、この世界の冒険者のレベル五十は異邦人(プレイヤー)のレベル七十〜百に相当しているのではないかと言われている。


「ま、普通に考えたら異邦人(プレイヤー)同士の戦いだとしても、レベル二十のリアちゃんとレベル五十のクロウくんとの戦いとなれば」

「大差で負ける、ってことになりますよね」

 そう答えると、マギーさんはニヤリと笑う。


「リアちゃん、確かにあなたのレベルは低いけど実力差はそこまで無いわよ。そこは私だけでなく、リシュからもお墨付きを貰っているから間違いないわ」

「リシュさんが?」

 はて?


「リシュ自体が強いってこともあるけど、彼女は他人の強さを感じ取ることが出来るの。ま、数値的なものではなく、感覚的なものにはなるけど」

「なるほど」

「人によってはそれを眉唾ものと評することもあるけど、私は長年彼女と同じ時間を過ごし、彼女が評価した人達を見てきたわ。

 その結果をもって私は彼女の力を信じるし、あなたが簡単に負けないと思っているの」



「……そこまで言われたら負けられないですね」

 マギーさんと、マギーさんの信じるリシュさんのためにも。



新年あけましておめでとうございます。

また、いつも読んでいただき、ありがとうございます。


久々の三週連続更新、ストックも空になりました。

やっぱり毎週更新は楽しいですね。早くこのペースにもどして……はぁ。


次回は1/18(月)と二週間後にさせていただきますのでよろしくお願いいたします。


また、ちょっと面白いと思っていただけたら、ページ下部の☆マークをクリックして、ポイントをいただけたら幸いですm(_ _)m


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