257話 王者達の協奏曲 42
20/12/9 後書き追加しました(書くの忘れていました……)
「二人……ふたりかぁ……」
色々な偶然が重なって初めてビ・ディンに来たということもあり、この都市に知り合いなんて誰もいる訳がなく、途方に暮れかけていたわたしにリスドさんは「ギルドにでも顔を出してみろ」と冒険者ギルドを勧めてくれた。
「冒険者でも異邦人でも構わん、とにかく強い奴を連れて来い。
あそこに行くなら、それなりに強い奴で最低五人のパーティーにする必要があるからな。
まぁ二人はこっちで用意してやるから、あと二人は嬢ちゃんが何とかしろ」
「あ、はい。
……というか、リスドさんが二人を手配してくれて残り二人って、足しても四人にしか」
ガッ
「いいっ!?」
「おいおい、まさか自分の事なのに嬢ちゃん自身が行かないとか言わねぇよなぁ?」
両肩をガッチリと掴みながらリスドさんはわたしの顔を覗き込む。
「つ、強い奴って話でしたよね!?
あ、あの、まだわたしはそこまで強くないですよ?」
なんだかんだで、レベルもまだ30に満たないですし。
「なに、気合いでカバーすれば良い」
「いやいやいやいや、気合いで強くなれたら」
「や・れ・る・よ・な?」
「……ハイ、ガンバリマス」
・
・
・
『うーん、アレはかなり怖かった』
強面なリスドさんが僅か数センチの距離にまで迫ったあの状態は、とても拒否なんて出来るものじゃなかったし。
「とは言ったものの、実際どーしよ」
確かにわたし自身の問題というか、どうにかすべき課題であることに間違いはないけど、リスドさんが言う“強い奴”っていうのはどれぐらいの人のことなのかも掴みきれず、ちょっとというか、かなり頭が痛かったり。
で、
「これがビ・ディンの冒険者ギルド……」
困っていたわたしに対し、心配したリシュさんがギルドの幹部に手紙をしたためてくれた。さすがにそこまでしてもらった以上、踏ん切りをつけて来てみたけど、
「なにこれ、デカすぎでしょ!?」
目の前には武道館に匹敵する巨大な建造物が。そしていくつかある入り口の殆どには、多くの冒険者達がたむろっている。
『建物の中に入る前から人の多さに酔いそうなんですけど……というか、中に入ったら二度と出られなくなりそ』
実際にはかなりの人が出入りしていることから“出られなくなる”ということは無いけど、なんて言うか……
「頭が止まりそう」
ただでさえ“強い人に声をかける”という難題に加え、リアルですらそこまで多くの人が集まるような場所になんて行ったことの無いわたしとしては、それらはわりとプレッシャーというより、感じないはずの胃痛を感じさせる。
『大量に人がいる場所、いわば圧縮された人混みの中に入ったら、わたしなんか簡単に飲み込まれそうなのがね……大丈夫かな』
飲み込まれるというより、パンクするという表現の方が正しいかも?
「……とはいえ、行くしかないか」
意を決して冒険者ギルドの中へ入り、その内部の状態に言葉を失う。
「なにこれ」
巨大な建造物の入り口付近には総合案内所があり、四方の壁には無数の受付所。そして受付所の上には大小様々なディスプレイが設置されており、そこには冒険者の名前やパーティー募集の案内が表示され、ものの数秒で流れたり消えては新しい内容ヘ目まぐるしく変わっていく。
ちなみに施設の中央には闘技場が四面設置してあり、どの闘技場も多くの人達が観戦している。どの戦闘もかなり白熱しており、その熱量は入り口まで伝わってくる。
『ヤバっ、ここまでとは思っていなかったわ……』
わたし的には他のゲームでよくあるような、
【パーティー募集、タンク優遇! レベル50台で】
【ソロ剣士レベル40台、レイス討伐&素材集め参加希望!】
といったものが張り出してあって、それを見てパーティーの勧誘や紹介があるかと思っていたから、想定とは全く異なって映る目の前の状況に乾いた笑いが静かに溢れる。
『さて、どうしたものかな』
って言っても出来るとこからやるしかないわけで。となると、リシュさんから貰った紹介状を受付の人に渡して……
「こちらへは初めてですか」
「は、はい」
ちょっと考え事に耽っていたわたしを覗き込むように一人のエルフが話しかけてきた。よく見れば腕に腕章を付けていて、確かこのデザインは
「冒険者ギルドの方、ですよね」
「はい、ビ・ディンの冒険者ギルドの職員でマーガレットと申します。お困りでしたら相談にのりますよ? もちろん、ご相談いただいた内容は守秘義務で他に話したりはしませんのでご安心ください」
うん、これはツイてるかも。
「実は……」
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・
・
「なるほど、色々と大変そうですねぇ」
簡単にわたしの今の状況と、それを打開するために強い人を探していることを話しながらリシュさんに書いてもらった手紙をマーガレットさんに手渡す。
「そうそう、マーガレットじゃ呼びにくいのでマギーで良いですよ」
「はい、マギーさん」
マギーさんはわたしと同じぐらいの身長で、スレンダーな体型とスラリと伸びた手足は雑誌で見るモデルさんみたい。聞いたり話したりする仕草一つとっても様になっている。
『くっ、美人でカッコイイとか』
『ギルドの職員しているぐらいだから強さもそれなりよ』
『いっその事、マギーさんに手伝ってもらうとか……』
まぁ、さすがに冒険者じゃないから無理か。
「リシュの手紙を読む限りだとかなり急いでいるみたいね。あと彼女が要求している冒険者ってかなりレベルが高いわよ、それこそトップランカーレベルだけど」
「そこまでですか」
ルナさんとニーナがいたらサクッと誘って、こんな問題も速攻で解決していたんだろうなぁ……いないから仕方がないけど。
『とすると、やっぱりあの掲示板から……』
それはそれで大変なのに変わりはないけど。
「あ、掲示板ですか?」
わたしの視線を辿った先にある掲示板を見てからマギーさんは苦笑する。
「一応、掲示板も見ていたんですが、いっぱい書いてあるわりに速攻で流れたり消えてしまって、読み終える頃にはもう」
「あー、アレはマッチングリストみたいなものだから読むものじゃないかな」
「……え?」
「この都市の冒険者って、それこそ冒険者ギルドの中に入りきれない位いるのよね。だからパーティーの受付もここだけじゃなく、宿屋や酒場とか色々な施設から出来るようになっているのよ」
「なるほど」
「そんな訳で、基本的に自分が希望する依頼や採取対象を入れておくと合う人がマッチングしていくの」
「とすると、この場に来ている人達って」
「時間つぶしか、マッチングされないようなレア依頼探しか、あとは……アレね」
マギーさんの視線の先、そこにあるのは盛り上がっている闘技場。
……えっと、これって闘技場に行かなければならない流れですか!?
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回も校正がほとんどできていないので、誤字脱字を大量に出していると思われます……ごめんなさい。
※既に二回ご指摘をいただきました、ありがとうございます
あと次回も12/21(月)と二週間後にさせていただきますのでよろしくお願いいたします。
……早く毎週に戻せるようにしていきたいなぁ。
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