256話 王者達の協奏曲 41
すみません、再びボケて一週後に予約していました……orz
「色々とわかったぞ」
「早っ! っていうか、どんなことがわかったんですか?」
統合が終わったあと、シュルツさんと約束していた身の回りのお世話として、わたしは準備されていた食事の配膳や、食後に出すお茶の準備をしたりとそれなりにメイドっぽい仕事をしていると勢い良く扉が開き、ややボサボサになった髪に疲れた表情をしたリスドさんが現れた。
「それよりまず茶をくれ」
「あ、はい、すみません」
部屋に篭っていると聞いていたのに、つい何がわかったのかを聞きたくて焦ってしまった。
統合した時に共有した記憶の中、リスドさんと“もう一人のわたし”は色々と話していた。
それこそ、初期村から始まりここに飛ばされるまでの事だからわりと長い話だったけど、リスドさんはそれらの話を黙って聞き、時折質問や聞いた内容をメモしたりと第三者的な目で見たら、取り調べをしている刑事と犯人みたいな図だったけど……
『捕まるようなことなんて何もしていないでしょ』
『そ、そのつもりだけど……妙に落ち着かなかっただけよ』
過去の記憶を見ているだけなのにもかかわらず、あの画像から妙にプレッシャーを感じていたのはわたしがビビリだからだと言われても仕方がないのかな。
「先にコイツを返しておこう」
リスドさんはそう言うと懐から勾玉を取り出すと机に置く。
「はい」
それはわたしがログアウトしている間、“もう一人のわたし”がリスドさんからの聴取された際に渡していたアイテム。
『これが色々な場所でキーとなっているのは確かだけど、入れない場所やな入れたり、今回のような謎のシステムが起動する役目になったりと、あまりに有能なアイテムすぎて……怖いぐらいなのよね』
元々は山神様と交信できるようになる、巫女的な能力を使用できるようになるアイテムだったはずなのに。
「嬢ちゃん、そいつは神器に近しいアイテムだ。入手の意図や経緯なんざ関係ねぇ」
「これが神器……って、この前視た神代の映証と同じものってことですか!?」
え、いや、ちょっと待って??
「あくまで“近しい”だ。だが、一般に出回るようなレベルのもんじゃねーのも確かだがな」
「はは……」
近しいって言われても、本質の部分で考えたらそれなりの物ですよね………わたしが持っていて大丈夫??
「ま、元々は山神様って呼ばれていた魔物との交信用のアイテムらしいが、そもそも魔物使いですら魔物との意思を取り合うことが出来るっていうレベルでしかねぇのに、魔物と直接 交信できるってこと自体が、普通に考えればありえない事だ」
「そ、そうですね……」
とはいえ、結局のところわたしは山神様と会話することが出来ていないから、よくわからないというのが現時点での考えなわけで。
「問題は魔物と 交信できるっていうアイテムが、別の用途である“鍵としての役割”を持っていたことだ。アルブラの神殿然り、件の洞窟で起動させた転送装置然りだ」
リスドさんはそう言いながら勾玉を不思議そうに睨みつける。
「はい、わたしとしても勾玉をそういう意図を知っていて持っていたものではありませんでした。
ただ、偶然というか流れでその場所へ行くことになったこと、そしてその場で勾玉自体がアピール……っていうのもアレですが、結果としてわたしに使うことを知らせてくれたことで、今こうなっているとしか言えませんので……」
実際、勾玉が自らの存在を示すように光らなければ、あの場で使うことなんて考えなかっただろうし。
「そのあたりは嬢ちゃんに起因したものだろうよ」
「はぁ……」
起因って、結局はわたしに何かあるってこと? 別に何も無いと思うけど……よくわからない。
「とにかく、嬢ちゃんに【所在固定】がかかっていることについては、勾玉がまともに動かないことによる不具合の可能性が高いと儂は見ている」
「じゃあ、勾玉を直せば」
【所在固定】の状態が解除され、自由に動けるように?
「はっ、神器を直す? 神の手で作られたアイテムを人の身で直せると思っているのか」
「それは……確かにそうですね」
壊れているのなら直せばと考えたけど、神器なんていう特殊なアイテムなのだから、そうそう簡単に直せるようなモノじゃないよね。
『結局振り出しかぁ……』
この状態から抜け出せそうな糸口が見えたとおもったのに。
「何を勝手にしょぼくれてる」
「え、だって」
壊れた神器は直せないって……
「そもそも儂は勾玉が壊れたなんぞ一言も言ってねぇだろ」
「……はい?」
「まともに動かないとは言ったが、壊れたと言った記憶はねぇぞ?」
……そう言えば確かに。
「いいか、勾玉は神器に近しいものだ。だからこそ、そう簡単に壊れるようなもんじゃねぇ」
「じゃあ」
「嬢ちゃんの自動生活に聞いた話では、勾玉は使うことで光が弱くなったってことだったが?」
「はい、神殿で鍵として使用したときはそれなりに光っていましたが、ビ・ディンに来るきっかけとなった遺跡で使った際には、その光もかなり弱くなっていました……って、もしかして」
「たぶん、この勾玉に溜まっていたエネルギーが枯渇したことで、所有者たる嬢ちゃんの存在軸が引っ張られて欠落。
結果、ビ・ディンが持つ……正確にはビ・ディンの核となるダンジョンが持っている膨大なエネルギーが、不安定になっていた嬢ちゃんの存在を取り込み、アイテムに近しいものとして存在を保有したことで【所在固定】がかかり、ビ・ディンから出られなくなったんだと推測出来る」
『存在が不安定になったことで、強い力を持つビ・ディン縛られている?』
『普通なら無いと思うけど、神器級のアイテムがマイナスの影響を及ぼすのなら。一冒険者じゃ簡単に飲み込まれても仕方ないわね』
勾玉に負けるプレイヤーが悪いのか、それとも勾玉が強力過ぎるのか……どっちにしろ、勾玉の力に頼ったツケってところかな。
でも、
「勾玉のエネルギーが枯渇しているとして、どうやってエネルギーを回復させるんですか?」
コンセントから充電みたくする?
「神器の取り扱いなんざ、儂らにだってよくわからんさ」
「えぇっ?」
いやいやいや、ちょっと待って。
「慌てんな。儂らにだってわからなかったからこそ、過去の記録や伝聞を調べて調べて……似たような事象を見つけた」
「おお!」
これでアルブラに帰ることが、
ガッ
「うぇ?」
勾玉にエネルギーを充填し、アルブラに帰れる見込みが立ったことで喜ぶわたしの両肩をリスドさんがガッチリつかむ。
「やる事は恐ろしく簡単だ。だが、そこに行くまでがクソ面倒くさくてなぁ」
「は、はい」
近い、顔が近い!
「そこへ行くにはそれなりのパーティーを組む必要がある。とりあえず腕利きを最低二人連れて来い、続きの話はそれからだ」
「二人……」
知り合いなんて誰もいないこの都市で、腕に覚えがある人を二人連れて来るってかなりハードなんですけど!?
いつも読んでいただきありがとうございます。
うーん、週を勘違いしてのアップ二度目……駄目ですねぇ(´・ω・`)
次回のアップは12/7(月)アップ目指して頑張ります。もう12月ですねぇ……年の瀬です。
なかなかリアルの繁忙が収まらないので毎週アップがキツイとは悲しいなぁ……
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