255話 王者達の協奏曲 40
「ふぅ、やーっと終わった……」
相変わらず統合で入ってくる情報多すぎでしょ。
『そこまで言うならあなたが二日ともログインすれば良いのに』
『無茶言わないでよ』
まず仕様として連続24時間のログインなんて出来ないし、PAWの世界で三日ということは現実で一日ログインしっぱなしってことになるから、さすがにそんなことをすれば肉体的にも精神的にも保たない自信がある。
『あなただったら……ま、いいわ』
『な、なによ』
そんなふうに言われたら気になるじゃないの!?
『で、そんなことより統合したことは理解した?』
『ええ、おかげさまでね』
“もう一人のわたし”がこの二日間でやっていたことは依頼されたメイドの作業半分、そしてもう半分は
『自己紹介も兼ねた、私が今までPAW内で送ってきた生活とか戦ってきた相手やその内容とかって……ねぇ、わたしのプライバシーは!?』
『あなたが経験したってことは私も経験してきたことだもの。そこにプライバシーなんて無いわよ?』
『……』
た、確かにわたしが経験していることは統合によって“もう一人のわたし”にも共有されているけど、わたしに了承を得ることなくされたことに納得がいかなっていうか、モヤモヤする。
『ま、でもあの人達のことも色々と知れたからイーブンって……ところなのかなぁ』
『情報は大事よ、攻めるにも逃げるにも……戦うにもね』
『戦う……って、絶対勝てないし!』
そう、わたしの情報が包み隠さず話されたことを対価に、四人のフルネームなどを知ることができた。とはいえ、さすがにステータスとかまでは教えて貰えなかったようで。
『教えて貰った方が色々と問題出るわよ? 仮にも一国というかこの都市における最上位とそれに連なる三人の詳細情報なんて知ってしまったら、いよいよもってここから出られなくなるって話』
『ですよね……』
ま、わたしとしてはそこまで知りたいということもなく、とりあえず四人がどんな人たちなのかが知れたらそれで良いって感じなわけで。
シュルトス・ランド・ラクルーレ
種族:人間
年齢:33歳
職業:独立都市ビ・ディン代表、旧公国の第二王子、魔法剣士
得意武器:小剣
リスド・ガッバーランド
種族:ロックドワーフ
年齢:96歳
職業:大魔道士、別名 炎骨の魔道士
得意武器:杖、魔拳
リシュリール・カラフィナーラ
種族:ハイ・ダークエルフ
年齢:467歳
職業:騎士、別名 褐色の鉄甲騎士
得意武器:片手剣、盾
キール・ドレスデン
種族:草原人
年齢:49歳
職業:神官 (風神カシオス信仰)、別名 落鎚蜂
得意武器:フレイル
『なんか、もうこれだけでお腹いっぱいになりそ……』
シュルツさんはどういう人か解っていたから大丈夫だけど、他三人はツッコミどころが満載というか、たったこれだけの情報にも関わらず、見ただけでクラっとしそうになる。
まぁ、シュルツさんの“魔法剣士”っていうのは凄く気になるけど。
……ほら、やっぱり魔法を使える戦士ってカッコイイし!
さて、見返すことから逃げるのは置いておいてっと……まずはリスドさんから。
リスドさんの種族【ロックドワーフ】はドワーフ族の中でも特殊らしく、身長も人族とあまり変わりがない。ただ、肉体はドワーフの屈強さをそのままに、魔力や知力にも高い能力を持っているようで、ドワーフの中でも魔法に強い種族とのこと。
ただし、高い能力を持っているとはいえ不足している値もあるということで、魔法を使うロックドワーフの殆どがそれら足りない能力を補うべく神官になり、神様から力の補助を受けているらしい。
そういった面から考えると、更に魔法を使うことに特化している魔道士という職業になっているリスドさんは異色というか、ドワーフ界の変わり者というか……いや、もしかしたらレアな力を持つドワーフなのかもしれない。
『それに“炎骨の魔道士”って何!?』
炎? 骨? いったい魔道士と何が関係しているの??
正直、謎は深まるばかりです。
そして二人目、リシュさんは年齢の数値を見てビックリというか、唖然。
『よ、467歳……』
えーっと、この世界自体は現実世界とは異なり時間の流れが早くなっているし、サーバがオープンするより前、わたしたちの世界とは異なる時間を過ごしたことで、既に三千年以上の昔から世界が存在しているとのこと。
そういうわけだから、特殊な種族であれば100歳とか200歳超えの人がいてもおかしくはないのだろうけど……
『400歳超えって何ですか?』
しかも見た目っていうか、全裸を見た感想からしても、どう考えたって20代にしか見えないって。
『エルフだからね、しかもハイ・ダークエルフ』
『やっぱり凄いの?』
『そうねぇ、ハイ・エルフにしてもハイ・ダークエルフにしても長寿で有名よ。1000歳超えたっていうハイ・エルフの話もあるぐらいだから』
『せ、1000歳!?』
なんかもう、世界が違いすぎてよくわからないかも。っていうか、そんなに長く生きたら自分の中の何かが摩耗して行きそうで:歳
『この二人に比べるとキールさんはわりと普通よね……年齢と見た目以外』
草原人だということは聞いていたし、落鎚蜂の落鎚っていうのは、以前に使った戦神落鎚から来たものだと想像がつく。ま、言えることは
『リシュさんが20代だとしたら、キールさんは10代っていうか、中学生か下手したら小学生ぐらいにしか……』
『草原人も若く見える種族だからね。ま、エルフやハイ・エルフとは異なり寿命は人間と同じぐらいだけど』
『え、じゃあどこかで急に老けたりするの?』
『いえ、彼らの見た目は60歳ぐらいまではほぼ変わらないわね。人間でいうところの30代ぐらいで止まる感じかしら。ま、70歳を超えると年相応な見た目にはなるわ。
とはいえ、キールの見た目がかなり幼いのは、草原人の中でも中々なものだと思うわ』
『……ははは』
幼い見た目だけならファナさんのお母さん、ティグさんとタメを張るのでは?
『ティグは……まぁ、やめておくわ』
『??』
なに、妙に気になる言い方なんですけど!? でも、聞いたら聞いたで『知らなきゃ良かった』ってことにもなりかねないから、素直に聞くことはやめておこうかな。
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回もまた校正が出来ていないので、誤字脱字を大量に出しているかもしれません……
あと、次回のアップは前回同様一週間ずらして11/16(月)にさせていただきますのでよろしくお願いいたします。
コロナのせいでリアルが相変わらずな状況です……オノレコロナメ!
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