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254話 王者達の協奏曲 39(主人公視点ではありません)



「そうね、とりあえず私としては神官としてやれることはやっておきたいと思っている……そんなところかしら」


『嘘はついていないと思うけど、何かが少しだけ引っかかる』

 ただ、それが何かわからない以上は無闇に聞くことは出来ない。


「大変なんですね色々(・・)と」

「ええ、色々(・・)と大変なの」


『何かがあるのは確定ね。とりあえずそれだけがわかれば良しとしておく』

 今の私にはここまでが精一杯、そう考えることにする。



「改めて見てみると守りやすく攻め難い所よね」

 マチュアさんに説明を受けた後、アルブラの北門、その城壁に隣接する場所から周りを見渡すと、普通にそんな感想が出る。


 大きな湖に浮かんでいた島を元に作られた街は島を囲うように作られた壁と、都市の主要な部分を囲うように作られた城壁の二重構造。そして島というか街へ入るには東西南北に作られた橋 (幅的には百メートル近い)を渡るしか道がないことから、一旦籠城状態にでもなればかなり堅固な要塞と化す。

 とはいえ、



「対人間なら難攻不落な都市になるけど、壁を苦もなく登ったり、そもそも飛行が出来る魔物達だと無意味とは言わないけど、防御力が低くされてしまうねぇ」

「しかも、それが狂化した魔物だと計算し辛いってとこですね……ファナ司令代行殿」

「やめてくれないか? ただでさえ無意味な肩書きでウンザリなのに、リアの知り合いに言われるとむず痒くなる」


 気配は感じていたものの、悪意や敵意は無かったから気づかないフリをしていたが、それを無駄にするかのように、彼女の方から私にわざと存在を知らせるような感じで話しかけてきた。



ファナさん(この人)にしても、マチュアさんにしても悪い人ではないのが分かるわ。本当にリアは良い人達と仲良く出来ていたみたいね』


 マチュアさんに連れられ、北門近くに設けられた臨時の対策室に着くと、そこでアルブラの小さな領主であるティグナルア・リファルテッドさんと、その娘で防衛対策隊長であるファナさんに紹介された。

 ティグナルア・リファルテッドさん……ティグさんはその後対策本部となる領主の館に戻っており、今はファナさんを中心とした直接魔物暴走モンスター・スタンピートとの戦闘を指揮する人達がこの場に集まっている。



『基本的には橋に渡ってくる魔物達を遠距離系の攻撃を主力としたカウンター部隊で倒していく。ただ、魔物暴走モンスター・スタンピートで狂化した魔物達は痛みに怯えることなく侵攻をしてくるから、カウンター攻撃部隊とそれを守りながら侵入して来た魔物達を倒す部隊。そして東西の橋には遊撃部隊を置き、北門へ集中する敵のヘイトを奪わないレベルで攻撃しながら、東西の門へ流れてきた魔物を撃破する。

 城壁内では後詰めとしての部隊も控えていることから、それぞれがキッチリと役割を果たすことで、例え強力な魔物暴走モンスター・スタンピートの集団であろうとも撃破できると考えている』


 対策室に作られた櫓から、そう話すファナさんの言葉には味方を鼓舞する強いバフが入っているのか、横で聞いていた私やニーナですら内側から力が湧くのを感じることが出来た。



「でも、実際に戦ってみないと何とも言えないのよね」

 ダンジョンの中で魔物暴走モンスター・スタンピートと出会った場合には、ダンジョン内に隠れるところがないことが多いことから正面からぶつかることになる。ただ、ダンジョン内で起こった魔物暴走モンスター・スタンピートであれば数も多くて二十か三十ぐらいなので、迎撃するこちらの準備と気持ちを整える時間があれば対応出来ないことはない。


「屋外での魔物暴走モンスター・スタンピートってどんな感じなんだろ?」

「ニーナ、お願いだから『血湧き肉躍る』とか言って城門越えて突撃しないでよ」

 色々と無謀なことにチャンレジしがちなニーナのことだから、突撃できそうなタイミングが存在してしまえば躊躇なく突っ込みそうで怖いのよね……


「さすがに最初に突っ込むことはないよ!」

「でも、最後には突っ込むのね……」

 ま、魔物の数が少なくなった場合には突っ込んで殲滅戦をしかける必要があるから全否定することは無いけどさ。


「とりあえず通常よりもランクの高くなった魔物がおバカになって突っ込んでくるってことだから、城門さえ破られなければ大丈夫だと思うけどね。

 問題はどれだけこちらが想定している域を越えた行動をしてくるかよ。橋を渡ることすなら億劫に感じた魔物が湖を泳いでくることまでは想定内だけど、それ以外にどういった行動をしていくるか」


『一番厄介なのは、目の前に注意が向いている間に違うところから何かが起こることだけど……』

 狂化した魔物がそこまで頭が回ることなんて無いはずだから、そんなことがあった場合には魔物以外の何かがこちらにちょっかいを出してくるって話かな。



「斥候部隊より連絡! 魔物暴走モンスター・スタンピートをテイムした鳥から確認、アルブラまで約二十分の距離まで接近中! 数はおよそ千体ぐらいとのこと!」

「わかった! 各自持ち場へ移動して迎撃の準備! 合わせて東門・西門の部隊へも伝達せよ!」


「「「「はっ!」」」」


 ファナさんの号令のもと、アルブラの兵だけでなく異邦人(プレイヤー)を含めた冒険者達が指示された持ち場へと移動する。


「千体かぁ、能力的にランクアップした魔物になるから倍の二千体ぐらいの戦力と見たほうが良いかな?」

「……うん、まぁそうだけど」


『最初の話だともっと多くなかった?』

 もちろん、アルブラに到着するまでの途中で狂化が切れ、元の状態に戻ったことからした魔物もいるかもしれないけど……


「とりあえず私達も配置に着こうよ」

「そうね」

 感じている違和感については魔物暴走モンスター・スタンピートを迎撃しながら考えることにしましょうか。


 ・

 ・

 ・


「わりといるのね」

「報酬よりも名誉ポイント狙いじゃない?」

「ま、異邦人(プレイヤー)ならゴールドよりもそっちがメインになっていてもおかしくは無いか」

 

 名誉ポイントが貯まることで所属する国から評価され、レアなアイテムを貰う機会や、侵入が限定されている高レベルダンジョンに入れることもあり、異邦人(プレイヤー)なら少しぐらい損な戦闘イベントでも参加する人は多い。


『でも、緊急イベントなわりにこれだけ参加しているのは意外というか、この街が人気がある証拠かしら?』


 北門に連なる城壁、その上部に私達を含めた迎撃部隊と、それを守りながら魔物達の侵入を防ぐ部隊、合計で五百名近い兵士と冒険者が陣取っている。


「んで、ニーナは」

「勿論、メインは双龍剣(コイツ)よ。でも、折角だから」


 そう言ってインベントリの中から折り畳まれた武器を取り出す。


「やっとこの子にも出番が」

「それもダンジョンでゲットした武器だっけ、相変わらずニーナのレア運って羨ましいわね」



 ガシャン



春雷弩(インディラータ)、やっとお披露目出来るよ」

伝説級(レジェンドクラス)だけあって、キレイで物騒な武器ね」

 大型なクロスボウでありながら折りたたんで運べる強力な武器であり、霊鳥が羽を広げたような見た目の美しさを持ちながらも、城壁を容易く貫く威力の高さに初めて見た時には驚いた。

 ただ、伝説級(レジェンドクラス)というだけあって、この武器を扱うのにもそれだけのスキルレベルを要することから今まで実戦で使うことはなかったけど……


「クロスボスのスキルレベルいくつになったの?」

「5」

「……は?」

 あっれ、確かその春雷弩(インディラータ)って使いこなすのにスキルレベルが20必要だったような?


「大丈夫大丈夫、レベルが5あれば撃つことは出来るから」

「どこに向かって撃つことになるのやら……」

 暴発して味方に撃つなんてことはしないでよ!?



「で、あなたの鷹の目(ホークアイ)で見てみてどう? もう範囲内?」

「うーん、まだ照準の範囲内には入らないけど確かにいっぱいいるのはわかるね~、これなら撃ちさえすれば魔物のどれかには当たると思う」

 まぁ的は多いからね。


「ただ、思ったより魔物が小粒っていうか、ゴブリン・オーク・トロールっていう感じで。それでも普通じゃないのはわかるけどね」

「商人が乗っていた馬って軍馬レベルの強力な馬だったわよね。いくら狂化して潜在能力が上がった魔物とはいえ、ゴブリンやオークが追いつけるレベルな馬だっけ?」

 追いつけるとしたら狂化自体がワンランクどころかもっと高いレベルまで能力を上げているってことだし、違うとすれば……



『嫌な予感しかしないじゃないの!?』

 現時点で得られる情報が無い以上、過度に怯えても意味はない。意味はないけど


「ニーナ、とりあえず何が起きても対応出来るように備えはしておいて」

「りょーかい」


 とにかく今は目前に迫った魔物暴走モンスター・スタンピートに備えよう。ただ、想定外のことが起きても対応出来るだけの余裕を持ちながらだけど……



いつも読んでいただきありがとうございます。

今回も校正がほとんどできていないので、誤字脱字を大量に出しているかもしれません……ごめんなさい。


あとすみませんが次回は10/26(月)のアップが難しそうなので、一週間ずらして11/2(月)にさせていただきますのでよろしくお願いいたします。



また、ちょっと面白いと思っていただけたら、ページ下部の☆マークをクリックして、ポイントをいただけたら幸いですm(_ _)m


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