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25話 ロイズさん

個別にひとりひとりを掘り下げたいな~と思うけど、そうなると話が逸れまくりに。


「お疲れさま」

「お、おつかれさまでした……」


 朝はまだ体も脳も起きてないということで、軽いランニング(但し途中で当たると痛いボールが飛んでくる)と、体幹を鍛えるということでマチュアさんと綱引き(但し綱が激重い)。


 昼練は歩き方や何かの型の練習(但しバランス感覚も鍛えるらしく丸太の上)と、筋肉の使い方を知ることを目的とした鉄球ジャグリング(但し落とすと最初からやりなおし)。


 夜練は疲れきった頭と体が一瞬でシャキッとする目隠し殺気祭。時々、気分転換(リフレッシュ)にマチュアさんとの鬼ごっこ(但し絶対に捕まえられない)、その後拳の出し方や立ち方、足の運びや目線などを復習。


 ……うん、わたし頑張ってる。



「初日に比べたら動きがスムーズになったわね」

「……よ、よくわかりません」

 もう言われた事をこなすのに必死で振り返る余裕すらありませんよ、マチュアさん。


「あら、じゃあわかるまで延長してみる?」

 ニコニコしながら言うマチュアさんはとっても素晴らしい方です、本当です。


「ま、直にわかるようになるから安心してね」

「はい、また明日もよろしくお願いします」


 そう言うとマチュアさんは手をひらひら~と振って訓練室をあとにする。


『し、仕込みだけでもしておかないと、明日のわたしに申し訳ない……』

 プルプルと震える両足に力を込めて立ち上がると、調理場へ。すると、


「ちょっといいかな」

 訓練室の入り口で立ってたロイズさんが声をかけてきた。



「君には本当に感謝しているよ、ありがとう」

「はぁ」

 

 ロイズさんと一緒にリビングへ。

 開口一番感謝されるというのも頭にクエスチョンが浮かぶ……なんだっけ?


「あぁ、妻の事だよ。魔物騒ぎもあって最近は考える余裕も無かったとはいえ、どうしても彼女には忘れることを許されない過去があってね。たぶん黒百合と付き合いのある君は知っているんじゃないのかな?」

「……帝国でのお話ですか?」


 ロイズさんは『やっぱり彼女は怖いね』と言うと話を続ける。というか、黒百合ってルナさんの事だよね。

 こっちでも既に有名人ですか!?


「ま、そんな過去が陰となって、なかなか素を表に出すことが無かったどころか、ああやって君に格闘術を教えるなんて一昔前からは考えられないんだ」

「そこまでですか!?」


 以前のマチュアさんがどんな感じかは知らないけど、いろいろ思うところもあったのかな。



「それで妻と話をしてね、俺からも君の助けになるような事ができればと思うのだが……どうだろうか?」

「そうですね、とりあえず今すぐは大丈夫かと思います。治療と皆さんのお食事の準備、そしてマチュアさんからの修練で空きがないというのが本当のところでして……」

「ははっ、それでは確かに時間に余裕は無さそうだ」

 ロイズさんはククッと笑いながらそう答える。


「個人の戦闘能力はマチュアに負けるけど、PAだったら幾分自信はあるからね、そっちの面でなにかあれば遠慮なく聞くといいよ」


 PA……あ、そうだ。


「ロイズさん、PAで思い出したのですが」

「うん、何かな?」


 わたしはPAをまだ取得していない件、そしてPAのスキルでリペアしか持っていないことからPAの操縦ができないことなどを話した。


「なるほど、リペアを選ぶというのは珍しいけど、ついでに覚えることができた《精密作業》のスキルは悪くないね。アレはPAの細かな操作に適応できるだけでなく、普段の生活にも役立てられるスキルだから」

 お~、もしかしたら料理などで今まで役に立っていたのかも。他にも応用できるといいな。


「あと君が言う通り、PAの取得には神殿で祝福を受ける必要がある。ただ、それはウチではなく街の東部にあるPAを守護する龍を奉ったミルネルバ神殿だよ。あそこでPA用宝珠(タリスマン)に祝福をかけてもらう必要がある」


「そうですか……」

 ロイズさんの話だと、ここからはかなり遠いようでお昼休憩に行くのは時間的に難しいみたい。

 うーん……


「本職ではないが、良かったら君のPA用宝珠(タリスマン)に俺が祝福をかけようか?」

「えっ、できるんですか!?」

 これはちょっと予想外。


「元々はPAの事を研究する一環として龍の神殿に足を運んだことがあってね、その際にあそこの司祭と意気投合して色々やってみたのさ。おかげで一通りできるだけの知識と技術は手に入れたよ」


 ロイズさんは自分を『器用貧乏なだけだよ』と笑うが、いろいろと出来るだけの素材の良さが無ければ簡単にはいかないはず。


「では、PA用宝珠(タリスマン)への祝福お願いできますか?」

「ああ、喜んで」


 宝珠(タリスマン)は初期装備の一つとして手にしているものの、祝福がかけてなければPAを操作どころか呼び出す事すらできない。

 呼び出しても操作ができないとはいえ、何かの拍子に使えるように……ならないよねぇ。


「さすがにそこまで甘くないと思うよ」

 苦笑しながらロイズさんは『神官長に許可は取ったから祭壇の間へ行こう』と歩き出す。



 祭壇は治療部屋と反対の位置にあり、基本的に神官以外の立ち入りが禁止されているらしいが、ダレスさんも『リアさんなら問題ないよ』と了承してくれたらしい。


「ここがディメール神殿の祭壇だよ」

「ここですか!?」


 そこはわたしが生活している部屋とあまり変わらない大きさで、きらびやかな装飾も無ければ、奉る偶像や肖像画も無かった。

 あるのは古びた机と鈍く光る水晶のようなものが一つ。


「何もなくて驚いたかい?」

「え、ええ……」

 祭壇と聞いたのでもっと凄いものを想像していたのは事実だったので素直に頷く。


「ここの神様は飾ることを嫌っていてねぇ……」

『何か問題でもあるのかえ?』


 あれっ、いま声が?


『ふむ、妾の声が聞こえるだけでも上々よ。そこの者では、ちと足らぬからのぅ……カカッ』


 なるべく不審にならないよう辺りを見渡すが、やはりどこにも姿を確認できない。

 そして声がしたのと同時に、全身にのし掛かるような重たい気配(プレッシャー)が。


「ロイズさん、この神殿で奉っているのは女神ですか?」

「ああ、そうだよ。大地に恵みを与える豊穣神と言われているよ」


 となると、


『その豊穣神が妾、ディメールじゃよ小娘』

 言葉一つ一つが不遜。だけどそれが当たり前と思わせる威圧感が声から溢れる。


『あの、お姿は』

『見れば目が潰れるかもしれんが構わぬか?』


 いえ、素直に遠慮しておきます……




いつも読んで頂いてありがとうございます!


通勤途中にぼ〜っとしてるとポンと考えが浮かぶのですが、それを話にいれようとするとあと何話かかるか考えると溶けそうになります(´・ω・ `)

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