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244話 王者達の協奏曲 29


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「……結構奥はありそうね」

 瓦礫をどかして中に入ると、そのまま奥へと続く道が。ちなみにさっきの黒い珠は幻影愚者人形イリュージョンマリオネットを入れた魔法鞄マジックバッグの中へ。

 代わりに鞄の中から『どこでも使える簡易照明器カンテラ』なるものを取り出し、それで辺りを照らしています。


 あ、これはフィーネから借りた魔法鞄マジックバッグに入っていた便利グッズです。

 ……借りてて良かった。


【とはいえ、最奥部までは残り二十メートルも無さそうよ。ま、突き当りに階段があって下に降りられるとかあるかもしれないから何とも言えないけど】

『ま、まぁ敵というか魔物さえ居なければ……』

 わたしとしては、あくまで休みたいだけですから!



「って、もう突き当りみたいだけど……これは」

 通路を突き進んだ先には小部屋のようになっており、中央には背の低い石柱とそれを囲うように円形に段差が作られ、その中には水が張られていた。


『パっと見は水が出ていない噴水とかモニュメントみたいな感じかな』

 水が張っているところは直径三メートルぐらいの大きさ円形で、深さはおおよそ四十センチほどと然程さほど深くも大きくもない。


「もともと地上に石柱があったり石畳があったりしたから何かの遺跡だとは思っていたけど……」

 地下にここまでキレイな状態で遺跡の一部があるとは思っていなかった。ただ、


『さっき通った通路もそうだけど、遺跡というには床に埃が積もった様子も無いし、そこに溜まった水も飲めるぐらいの澄んでいるのがかえって気持ちが悪いわね』

 ……まぁ実際に飲んだりはしないけど。


【それだけここ(・・)が特別な場所ってことなんでしょ】

『特別な場所……ここがどういうところかわかるの?』

【正確に何かまではわからないわよ? でも、そこにある石柱に彫ってあるものが古代文字だと思うから、多分、ここがどこぞの神を讃えた神殿だったということまでは推測できるわね。

 上にあった神殿に対し、地下にあるこの施設も何かしら意味のあるものだとは思う。とはいえ、古代文字で何て書いてあるかまではわからないから、結局どういう施設かまではわからないというのが結論よ】


 なるほど……確かに現状においてはかなり正しい推測だと思うかな。でも何で神様を讃えた施設だってわかったんだろ。遺跡だということまではなんとなくわかっていたけど、ここが神殿だということまでは結びつかなかった。

 というか、ここからじゃわたしの目にはあの石柱になんて書いてあるかサッパリ見えなかったんですけど? それこそ、古代文字とかそんなレベルでなく、何か凹凸があるかな~っていうぐらい。



【あくまで、“読めない=今では普及していない文字=古代文字”という推測からであり、古代文字が記されたものであれば古い時代に存在していた神殿だろうという見立てなだけよ?

 昔の人の文字や言語は今とそれほど変わりがないから、普通に生活していただけだったらそこに書かれたような古代文字を使っていないからっていう話】

『……なるほど、読めなかったから古代文字であり、そんな文字を使っているから神殿とか特殊な施設跡ってことなのね。ちょっと感心したかも。

 これで古代文字(アレ)が読めたらもっとカッコ良いけど』

 というか、すこぶる便利? 見えるだけでなく、読めたら最高なんですが。


【さすがにそれは求めすぎだから。

 一応、AIとしてあなたがこの世界(PAW)の中で快適に過ごせるような知識は持っているけど、古代文字を理解できるほどの高い知識は私だけでなく、どのプレイヤーの自動生活(オートモード)AIだって持っていないわ。

 というか、古代文字読解(そういうの)を取得するのがプレイヤーの楽しみじゃなくて?】

『あ、はい。すみません……』


 あくまで“もう一人のわたし”というのは、基本的にわたしがこの世界にいない(ログアウトした)時に“代わりに生活している自動生活(オートモード)としてのサブ人格”なわけで。つい、こうやって対話モードで話したりしていると、何だか色々と出来るのでは無いかと思えてしまう。



「とりあえずあの石柱がどういったものかを見てみた方が良いとは思うけど……そうすると水の中を歩かないといけないのよね」

 今履いているブーツ自体には防水効果が付いているのでブーツの中が濡れることはないけど、ここが神殿の一部と聞かされれてしまうと、この水が張られた場所が神聖な場所に見えてしまい、土足で入るのを躊躇してしまったり。


【だったらブーツを脱いで入れば良いじゃないの】

『いや、ブーツを履いた状態で入るのを躊躇っているわけじゃないからね!?

 わたし達の世界だと“神聖な場所には簡単に入っていけない”って考えたりするものなんだって!』

【……ふーん、でも近寄らないとどういったものか見えないのでしょ?】

 ぐぬぬ……


『はぁ、確かにそうよね……』

 石柱には何かが彫ってあるのはわかるけど、それが何かまではここらでは確認できない。まぁ、無視するっていう手も無いわけじゃないけど、気にならないと言えば嘘になるし。

 


 チャプン



「冷たっ!」

 ブーツを履いたままで水の中に足を入れるのにはどうしても抵抗があったので、脱いでから水の中に足を入れたけど、張ってあった水の冷たさ湧き水にでも足を入れたかと錯覚するほどのレベルで冷たかった。

 っていうか、なーんかこの冷たさもどこかで体験していたような……


【冷たいのがイヤならサクサク歩きましょ?】

『……わかってるわよ』

 “もう一人のわたし”から見ると、どうやら今日のわたしはイマイチ動きが悪いという評価なようで。



「えーっととりあえず彫ってある内容が読めるとこまで来たけど、さすがに古代文字とやらは読めなかったわね……当たり前だけど。

 でも、近づいて見てみるとこの古代文字の下にある彫られた絵と丸く出っ張った突起をしっかりと見ることが出来たから、収穫はあったってことで。

 でも、この絵と突起って何か意味はあるのかな?」


 彫られた絵は人かな? その人の背後には渦巻のようなものがいくつか描かれている。

 その絵の下にある突起は尖ってはおらず、大きさはゴルフボールを半分に切ったぐらい。軽く触った限りでは何もなさそうだから、そういった飾りなのか、それとも何か特別な仕掛けがあったりするのかも。


『って、とりあえず興味本位で思ってみたけど』

【とりあえずさっき拾った黒い鎧のコアを近づけるのは止めておきなさいね】

『も、もちろん!』

【その割には目が泳いでいるわよ】

『あっ、はい……ほんの少しだけ黒い鎧のコアで触ってみようかな~って思ったりしていました、すみません』

 ま、そうなると突起(コレ)は放置して入り口に戻れば良いかな。回復もまだ出来てないし。



『じゃあ荷物を……ん? これは』

【どうかした?

『えーっと、ここに存在をアピールするように光っているものが』

 フィーネから借りている魔法鞄マジックバッグではなく、元から所持品入れとして使っているバッグの中から淡い光が溢れている。これって、


「玄武様から貰った勾玉……」

 弱々しくも存在をアピールする勾玉。でも、その光は手に入れた時に比べればかなり弱い。


『そういえば、アルブラにあったメテオス神殿でもこの勾玉が鍵になって変な場所に入れたんだっけ』

 あそこでこの勾玉が光って存在をアピールしてくれたからあの中に入ることが出来た。そういう意味で考えると、もしかしたらここでも使えるのかもしれない。でも……


「玄武様から貰った時と比べるとかなり光が弱まっている……」

 玄武様に貰った時、そしてメテオス神殿で依り代(大きな歯車)に当てた時と比べてもその光はかなり弱く、ちょっと目を離したら消えてしまいそうなレベル。


【使えそうならやってみれば良いじゃないの】

『わかっているわよ。ただ、何だかこの勾玉に申し訳ないっていうか……』

 あくまで自分のエゴというか、本来の使い道と異なる使用に後ろめたさを感じているだけ。


「……うん、もしもここで使って光が消えちゃったら……キチンと玄武様に謝りに行こう」

 そこでもう一度この勾玉を光らせる方法を聞いて、最初に貰った状態に戻して返そう。


【色々とやることが増えているわね】

『うん。でも、そういうものでしょ? ゲームでのクエストって』

 何かをすることで別の何かのトリガーが引かれて行動範囲が増える。ま、わたしの場合は行動範囲をそれほど広めたいとは思っていないけど、結局、何かをすることで派生して違う物事が動いていくものならば、わたしとしてはそれらを受け止めて進むだけ。



「ごめん、また力を借りるね」

 バッグから取り出した勾玉を両手で握りしめてから突起部分へ近づける。その瞬間、 

 


 - #$%/5$8、:@357"?/% -



「なっ、何!?」

 石柱に刻まれていた古代文字が赤く光ると、その下に描かれていた人の絵の辺りから理解出来ない音声が聞こえた。そして、わたしの目の前には



 - y@# - ・ - &o -



 と二つの文字が浮び上っている。


『最初に石柱から聞こえたものが何かはわからなかったけど……多分これはその内容に関した選択肢よね』


 きっとこれは“yes”と“no”って意味だとは思う。ただ、選択内容がサッパリわかっていないから、無闇に選択できないというか、押す勇気が無いというか……


『このまま放置してここから出るっていうのは』

【残念だけどそれは無理みたいよ?

 ほら、水を囲っていた段差の部分から天井に向かってフィールドを仕切る壁が出来ているわ。あの壁自体もかなり強力なエネルギー体で出来ているみたいだから、無闇に触ると……】

『……了解』


 実際のところ、触ってみないとアレが何かは分からないけど、無闇に触って高ダメを受けたらただのお馬鹿でしかないし、HPが減っているこの状態だと、受けたダメージによっては死亡してこの世界(PAW)から永久退場となるかもしれない。


「となると、もうこれに触るしかないわよね」

 “yes”か“no”か、どちらかを触ってこの状態から開放されるしか道はない。まぁ、この選択肢自体も選んだ先には最悪の結末が待っているかもしれないけど、考えだしたらキリがない。




『はぁ……やるしかない、か』

ため息をついてから気持ちを固め、わたしは両手をじっと見ていた。



いつも読んでいただきありがとうございます。

次回は8月ですね……早いなぁ。


まずはいつも通りに8/3(月)アップ目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。

※ちょっと仕事が立て込んでいるので遅れるかもしれません……四連休とか無いに等しかったし、


また、ちょっと面白いと思っていただけたら、ページ下部の☆マークをクリックして、ポイントをいただけたら幸いですm(_ _)m



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