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232話 王者達の協奏曲 20 幕間3


 上手く話が切れずに長めな感じに……




【臨時国家 首都リ・ゼルロア】



「攻め方は公国を落した時と似たようなやり方にはなります。とはいえ、今回はそれと同時に二つのことをやる必要があります」


「じゃあ、部隊を三つに分けるのか? さすがにそこまでの兵力は今のオレたちには無いだろ?」


 独立国家(ロイゼン)とオレたちの兵で公国へ侵攻した時とは異なり、今は統治下においた旧公国領を守る兵も必要となる。


『一応、防衛線には旧公国兵をそのまま使ってはいる。ただ、オレたちが完全に信用していないのと同じように、旧公国兵(アイツら)もオレたちに忠誠を誓うまでには至っていない』

 故に少数ずつとはいえ、国境沿いにある拠点に監視的な意味合いも兼ね、独立国家(ロイゼン)や帝国からついてきた兵を送っており、自由に使える手持ちの兵は減った状態なのだが……



「いえ、兵は二つに分けるだけです」

「足りるのか?」

「足りませんよ」


 おいおい……


「だからこそ、こうやって皆さんに来ていただいている訳ですよ」

「皆さんにって……オレは別に構わないが、まさかザヴォルやフーラも部隊に投入するのか?」

 確かに二人の強さは本物だが、危険(リスク)が高すぎじゃないのか。


「ええ、彼らの強さは私自身も知っていますし、危険(リスク)の高さも認識しています。

 ですが、今回彼らに求めているのは自身の強さだけではなく、彼らが先頭に立つことで旧独立国家(ロイゼン)兵の士気が格段に上がることです。これで不足する兵力の幾分かを補えます」


「いや、まぁ確かにそうだろうが……」


(わたくし)は構いませんよ」

「俺も構わんぞ。正直、玉座に座っているよりかは、部隊の先頭に立って武器を振り回した方がラクだからな」


 うーん、さすが亜人と言ったところか……戦う話になった瞬間に目がイキイキとしているじゃねーか。

 ……これは、もうどうにもならねーや。



「とりあえず、二人が部隊に加わるのはわかったし止めねーよ。で、二人が侵攻部隊に加わるのはわかったが、残ったオレたちはどうするんだ?」

 さすがにこのまま待機ってことは無いだろうが。


「やる事は三つ。一つ目が今話の上がった首長国(ダズル)へ攻めること。とにかくスピード重視です。

 二つ目はここを攻め落とすこと」


 シリュウはそう言うと地図に印が打たれた場所を指す。


「こっちを攻めるのか」

「はい、対帝国の足掛かりとして必要ですし、旧公国民にとっての逃げ道を断ちます」

「ま、確かにそれ(・・)がある限りは、ウチに属することになった奴等の忠誠度はなかなか上がりにくいが……でも、こっちは良いのか?」

 対のように存在する、もう一方の都市を指差す。


「それが三つ目です。ただし、攻めることはしません」

「攻めないけど、やることがあるのか?」

「ええ、あそこは向こう(・・・)に任せます。ただし、我々の役に立ってもらうだけの重石的なモノとして、になりますがね」


『重石ねぇ……』

 抽象的な表現だが、地図を見ていて何となくシリュウの言いたいことが透けて見えてくる。



「ちなみに、首長国へ侵攻する部隊指揮はザヴォル殿に。こちらへ侵攻する部隊指揮はフーラ殿に。

 もちろん、それぞれの部隊は旧独立国家(ロイゼン)の兵だけではなく、ヴェルフと一緒に来た帝国の兵や、公国侵攻に一役買ったPAPも使います」

 話しながらシリュウは部隊に見立てた駒を動かす。


『ん?』

 二箇所へ侵攻するのはわかるが、もう駒がほとんど無いが……


「じゃあ、残った“ここ”へは誰が攻めるんだ?」

 本格的な侵攻じゃないとはいえ、ある程度まとまった戦力はいると思うのだが?


「ここはですねぇ」

「ふむふむ」


「あなたが」

「オレが」

「一人で行ってください」

「あ〜、一人でね。確かにそれなら兵はいらないな……」


 って、


「待て、さすがにオレ一人は無理だろっ!」

 無茶振りにも程があるぞ?



「さっきも言いましたが、ここは落とす必要が無い都市です。あくまで重石(・・)にするだけですから。

 やることも至ってシンプルです、ここに行って……」


 シリュウの説明を聞いて皆がオレの方を見る。



「確かに……そうすることが出来れば、ここはオレ達以外には“邪魔で役に立たない場所”にはなるな」

 もし、オレが逆の立場でやられたとすれば、頭痛のタネになるのは間違いない。


「はい、これをする為には出来るだけ少人数で、目立たないように行動する必要があります。

 そして、それをするのに“あなたの能力”がうってつけなのです」

「ま、それはわかるが……アレは高レベルな奴には効きにくいぞ?」

 誰にでも効くようなら、色々と楽に物事を進められるが……まぁ、出来ないものは仕方がない。


「そこは上手くやって下さい。何もあの都市のトップ達を惑わせる必要は無いのですから」

「……はあ、わかったよ。何とかやってみるさ」

 ここまで話の筋書きが出来ていたら、イヤだなんて言える訳がないだろうが。



「つーか、仮にも国のトップを単身で向かわせるか?」

 扱い酷くね?


「あなたなら大丈夫ですよ、ソロでも十二分に強いですし、何より他の方々と違ってバレても逃げ切れますから。

 ま、それに万が一あなたに何かをあったとしても、あなたの代わりは何とかなりますし」


 うわっ、しれっと無茶苦茶なこと言いやがった。



「ヒデェ……シリュウの扱いが酷えよ、フーラ」

「よしよし」

 シリュウの扱いにの酷さに嘆いたら、フーラが頭を撫ぜてくれた。


「そうですね、少しでもあなたのヤル気が出るよう、こちらでも一つ手筈を進めておきましょう」

「へぇ〜、それが何か聞いても?」

 そう問いかけたオレを見ると、シリュウはニヤリとした嫌らしい笑顔を見せてから話しかける。


「今から二十日後ぐらいを目処に、あなたが気にしている異邦人(プレイヤー)を、その都市へ向かわせましょう。

 正確には、“行かなければならない”状況に追い込むだけですが」


「乗った!」

 シリュウがどんな手を使うか知らない。ただ、アイツがアルブラにいる限り、手が出し辛い状況にあるのは変わらない。



 ミシミシ……



「って、フーラさん!? オレの頭から変な音が!」

「あら、ゴメンナサイ」

 『オホホホ』って手を放してくれたけど、顔が笑っているのに目が笑っていませんよ?

 ま、それは置いておいて、




『シリュウはやると言ったら必ずやるからなぁ』

 勿論、アイツと会えるのは嬉しいんだが、願わくば非道な手段を使わずに連れてきて欲しいものだな……



―――◇―――◇―――



【神界 悠久の間】



「相変わらず、好き勝手やっているようじゃのぅ。離れている妾の耳にも聞こえてくるわ」

「そう?」

 話しかけてきた【豊穣神】ディメールに対し、ボヤけた返事で相槌をうつ。


「どうにも楽しそうな実験をしているように思えるんじゃが?」

「別に……そんなつもりはないわよ」

 実験であることに誤りはないが、楽しいかどうかと聞かれると、答えが難しいものへと変わる。



「ハッ、目の前でテメェの姿がチラチラして苛つくオレの気にもなりやがれ」

 すると、離れた場所にいた【機械神】メテオスが苛ついた表情を見せながら近付いてくる。


「相変わらずヌシは気性が荒いのぅ、やかましくてかなわん」

「本当、煩くて仕方がないわ。

 というより、“機械にしか”興味がわかないあなたが、私のことを気にしているなんて……メンテナンスの不良かしら?」



 ガンッ!



「言うじゃねぇか、戦バカの戦女(イクサメ)が」

「私が戦バカなら、あなたは……歯車がズレてカチカチと煩い機械時計って所かしら?」


「……言うじゃねぇか」

 余程その言い方が気にいらなかったのか、メテオスは近くにあった柱を殴りながら、こちらに歩み寄って来る。


『単純よね』

 こんな所で騒がしくしても、面白くも無いでしょうに……



 ヒュ……



「止めないか二人とも」

「あら」

「……チッ」


 凍てつくような風が部屋を通り抜けるのと同時に、冷ややかな声が私達を静止させる。


「ここは争いを生む場ではないぞ」

「あら、貴方がこういった場に来るなんて珍しいわね、ヒューリム」


 【水神】ヒューリム。世界に生きとし生けるもの全てに“癒しと厳しさ”を伝える神であり、保持する力やそれに纏わる教示から、人の世において広い地域で信仰対象して崇められている。

 そういうこともあってか、主に自分を水の流れに任せて世界中を巡り廻ることが多く、定期的に開かれる“神会”に来ることなんてないのに。


『とはいえ、水の神のクセに意外に神出鬼没だったりするからイヤラシイけどね』

 水があればどこにでも現れることが出来ると言うのは有名な話。



「其奴だけではないぞ、今日の集会は十二柱全てが揃うらしい」

「ッテコトハ、明日ニハ世界ガ滅ブノカモナ」


『【時神】モルフィスに【獣神】ジラルドまで……』

 本当、明日には世界が止まるのかもね。


『って、全員揃うってことは』

 まさか……



 ピシッ



「貴方まで来るなんて……本当に世界が滅ぶのかしら?」

 モルフィス達が来た扉とは真反対の通路から、空気が軋むイヤな音が聞こえる。正確には、アイツが放つ強すぎる魔力によって、空気の中に含まれる魔素が耐えきれずに爆ぜていく音。



「オレがいただけで滅ぶなら、そんなクソな世界など滅べばよい。なんならヌルに言って力を分けてもらおうか?

 ……そうだな、ヌルの持つ力の1パーセントでも貰えば、三日で大陸にいる奴ら全てを魔物達のエサに変えてみせるぞ」

「……やめてよね、マルガレオス。貴方が言うと洒落に聞こえないのだから」


 【魔神】マルガレオス……仮初として生を得た魔物に力を与える神。もう一つの呼び名である“創造と破壊の担い手”は、情に傾けられることなく物事を完遂出来る冷徹さから付いたもの。



「オマエは随分と楽しそうなことをしているようだな、羨ましいよ」

「そうね、色々なことが知れて……悪くないわ」

 話しながら、ふと違和感を覚えて言い淀む。


『この男が“羨ましい”なんて言葉を使う?』

 良くも悪くも、今まで自分の物事以外に興味が湧くなんてなかったはず。


『いや、今はこれ以上詮索する事は止めておきましょう』

 下手に関わって、こちらの手の内を晒すはめになってしまったら面白くない。


「ここにいても仕方がないわね、ヌルがいる間へ行きましょう」

 私は皆に移動を促しながら先に進む。



『十二柱全員が揃う』

 それは即ち、全世界的なレベルで厄介事が起こると予告するようなもの。


「久々に皆の顔が見れて嬉しいわ」

 前に進みながら、ギリギリ聞こえるぐらいの声で呟く。


『あなた達が何を考え、今のこの世界で何を望むのか……時間を掛けてでも調べさせて貰うわよ』



 ……私の思惑を誰にも悟られない為にも。



いつも読んでいただきありがとうございます。

とりあえず幕間はこれにて終了、次回から元に戻ります。


話の切れ目を入れるのって難しいですね。

とりあえず読みづらくならないように気をつけていますが

自分が第三者担ってみると『あれっ?』と思うことも……


次回は5/11(月)予定ですが、もし遅れたらすみませんm(_ _)m


引き続きよろしくお願いいたします。

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