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230話 王者達の協奏曲 18 幕間1



―――◇―――◇―――


【???】



─とある山中─



 パン



「……これで良し」

 目の前にある大きな岩に札を貼り、効果が発動していることを確認できた。


「こんなもので封じれるのか」

「こんなもの? 言っておくけど、この札一枚でPAの武装一つとトントンになるぐらいよ」



【制魔の札】

 制覇したダンジョン内に、術者が強制力を行使する札。本来は制したダンジョンを調査する時に魔物をムダに湧かせないようにしたり、トラップを発動させないようにするアイテム。

 持続時間はダンジョンの大きさにもよるけど、おおよそ一日から一週間ほど。



『微妙な効果な癖に高すぎなのよね』

 使用する際の意図と、あまり長くない効果時間にも拘わらず、一枚三百Gという高価さもあって、普通のプレイヤーが興味をしめすことはまず無いアイテム。


『まぁ、あの方からすれば問題ない額なのでしょうけど』

 正確にはあの方を中心とした陣営か。実際に色々と考えているのはアイツだし。

 それよりも、


「よくこんな場所にダンジョンがあるのを見つけられたわね」

「……あの街にはそれなりにいたからな。これもソロで探索していたついでに見つけたまでだ」


「まぁ、そうなんだろうけどさ。規模もそれなりだから、普通ならギルドや領主に通報案件でしょ。

 ……つーか、これを一人で見つけるのはまだ良いとして、一人でボスまで踏破するって」

「自然発生のダンジョンだ、ボスの強さも大したものではない。これが遺跡系の人工ダンジョンなら、ソロでやっていたかはわからないがな」


「ふーん……」

 ま、コイツもトップランカーに数えられたプレイヤーだったから、ソロのダンジョンクリアとか朝飯前ってことか。

 ただ、私がコイツと同じように“ソロでこのダンジョンをクリアできるか”と聞かれれば『できない』と即答するけどね。



『プレイヤーの技量(テクニック)もだけど、装備も化け物級だし』

 手にしていた武器も十分業物だったけど、あの鎧とか反則級でしょ?


『オートカウンターとか意味分かんないし!

 しかも、ただでさえ直接攻撃が当てにくいのに、鎧が持つ抵抗(レジスト)も高すぎで、私の特技で舞ったとしても魅力や心操といった特殊効果も遮断しちゃうし……本当、厄介過ぎ。


「……はぁ、アンタが味方になって良かったわ」

 対魔物にも対人にも有効に使えるカード(プレイヤー)を持てたのはかなり大きいし。


『とはいえ、気を許すことは出来ないけどね』

 現時点で味方であっても、いつまた敵になるかもしれないのだから。



「俺は自らの主の命令に従うのみだ」

「そうね、それは私も同じよ」

 この一点において、私とコイツは同じ関係。互いに主の為に、“この世界に生きている”と言っても過言では無い。

 とはいえ、そんな会話をしただけで、ちょっとだけピリピリとした空気が私達の間に流れる。

 ……うーん、気まずい。



「まぁまぁ、誰にも見つからずにこうやって仲良く無事に敵地の近くにあるダンジョンへ、僅か三人で来れたのは重畳でしょう」


 私達の背後にいた魔法使いは、そう言いながら札の前へ移動することで、変に張りかけていた空気を霧散させる。


「そうですね、三人がそれぞれの任務を確実にこなした結果がココにあるのですから」

 そう言いながら私は再度札に目をやる。



「ダンジョンのボスを倒し、自然湧きしている魔物を片付けるのは戦士の仕事。綺麗になったフロアに改めて魔物を召喚するのは……ディラン卿の仕事」

「そしてその魔物達に狂気化させるのは、サクラさんの仕事でしたな」

「ええ」


 作戦は至ってシンプル。自然に出来ていたダンジョンをクリアし、そこへ召喚師の力を借りて大量の魔物を湧かせ、私がその魔物達に魅力と狂気化の闘技……【華散乱舞(かざんらんぶ)】をかける。


 湧かせた魔物達は召喚師の命令を聞くようになってはいるけど、召喚師との接続を維持させる魔力が切れれば野良の魔物に変わる。

 私の【華散乱舞】がかかった魔物達は、野良の状態になっても“封がされたダンジョンの中”であれば効果が切れないので、あとは来たるべきタイミングにおいて、狂った魔物達をその狂気に任せ、雪崩のように突き進ませるだけ。


『言葉にすれば簡単だけど……』

 地の利・時の理・人の理、この三つが揃わなければ絶対に出来ない作戦だと思う。



「こんな作戦が出来たのも、我々異邦人(プレイヤー)では入手出来ない【魔軍召喚】の力を持つディラン卿がここまで来ていただけたからです、本当にありがとうございます」

「なに、ワタシもあの方に楽しい世を作ってほしいからと付いてきただけですからな。こうやって出番が貰えてよかったと素直に思いますよ」


 召喚師という戦闘職業は異邦人(プレイヤー)でも持っている人はいる。但し、普通は自らの分身や共闘用として、一体か二体が限界。

 だけどディラン卿はこの世界の住人のみが持つ“集団召喚”が可能な【魔軍召喚】という、特殊なスキルを使うことが出来る。


 これを使えば百体を超える魔物を同時召喚をすることも可能という、ある種バランスブレイカーなスキル。


「百体を超える狂気を持った魔物が、ダンジョン内で自然湧きした魔物と混ざりあい、新たな狂気が生まれる。狂気が狂気を、魔物が魔物を生み続け、魔物達の爆発が起きた時……この道に続く先に何が起こるのかしらね」

 自然湧きする魔物達も、いつもと異なるこの状態のダンジョンならば、もしかしたら普段は湧かないような、レア種の魔物が湧くかもしれない。



『恐怖は伝染し、狂気は伝播する』

 それは人でも魔物でも同じ。ダンジョンから出て来た魔物達なら、この近くにいる野良湧きしている魔物達をも飲み込み、とてつもない集団になるのは間違いない。


『とはいえ……』

 敵となる国の最前線に位置する街にダメージを与えるのはついで。

 本命は……これから起こる動乱を利用して、アレをこちらの手が届く場所へ誘うこと。


『正直それを思うとあまりやりたくない事だけど、あの方がそれを望むなら……』



 ギリッ……



 ついそれを考えただけで、癖のように奥歯を噛みしめる。心の中でわかっていても、楽しくない考えが頭の中を支配してしまう。


「ハァ……」

「どうした」

「いえ、ここからの事を考えていただけよ」

 別に仲間だからと言って全てを話す必要はないし、そんな気はさらさらない。




『色々と思う事はあるけど……』

 今、あの方はアレに気を取られているだけ。最終的には私が勝ってみせるから、必ず。



いつも読んでいただいてありがとうございます!

また、評価やブックマークもありがとうございます!


ヘンな箇所などあれば、ツッコミなどいただければ幸いです!


さて、次回も予定通り来週の月曜日、4月27日にアップ出来るよう頑張りますが、

相変わらずリモートワークでかえって多忙になる状態で、

次回はちょっと予定日までに校正が間に合わないかもしれません。


こんな感じのゆるゆるで申し訳ありませんが、引き続きよろしくお願いいたしますm(_ _)m


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