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218話 王者達の協奏曲 6


 ザブン!



「はぁ、ゲームの中でもお風呂って良いよねー」

 ロイズさんとのPAでの戦闘訓練が終わった後、全身にかいた汗がかなり気持ち悪かったことから、夕食を作る前にお風呂に入って汗を流していた。


 最初に暮らした初期村(シーレフ)での生活、その拠点となっていた神殿にあったお風呂は泳げるほどの大浴場でとにかく広かった。

 ただ、広くても浅い形状だったこともあり、全身をお湯に浸かりたかったわたしは、縁を枕にするように寝そべった感じで入っていた。嫌いではないけど、何かちょっと違うという気がしたり。


 一方、トム店長の家というか店舗兼住居のお風呂は日本のお風呂に近く、大人が三人も入ればいっぱいになる大きさたったものの深めに作ってあったこともあり、無理せず肩まで浸かれるのが嬉しく気持ちよかった。

 でも、そんな気持ち良い気分も



『シミュレータとはいえ、リアさんはPAでの戦いを【怖がって】いないかな?』



 妙に頭の中に残ってしまっている“その言葉”によって、しおしおと萎んでいく。


 もちろん、ロイズさん自信も悪意をもって話してくれたものではないのはわかっているし、自分では気が付かなかったことを話してくれたこと自体は感謝をしている。ただ、自分の中でそういった思いが無かったことと。『何に対して怖がっていたのか』という思いが頭の中を曇らせていく感じ。



『実際の戦闘なら、戦いでの戦果とか自分や相手の事とか色々と考えちゃって、結果的に怖がってしまうことはあるかもしれないけど、シミュレータでの戦闘訓練ですら怖がるなんて本当にあったのかな?』

 自分なりに考えてみても、なかなか思い浮かぶようなものがない。


『もしかしてハルもそう感じていたのかな?』

 ロイズさんと同様、戦闘訓練に付き合ってくれたハルからも言われていればそうなのかもしれないけど、生憎とハルからそういう話をされたことは無い。もしかしたら親切心というか、わたしが気にしてしまうことを見越して話していないだけかもしれない。


『わたしがとった何かの行動がそう思わせたのか、それともわたしの奥底にある自分ではわからない何かがロイズさんに感じさせたのか……』

 うーん、やっぱりわからない。



【そ・れ・よ・り・も】

『あ、はい』

 肩どころか口の辺りまで湯船に浸かって悩むわたしの思いなど気にも止めない“もう一人のわたし”は、やや楽しそうな口調で話しかけてくる。


【結局二人との戦闘訓練で勝利するどころか、一本すら取れないって……どうなのかしら?】

『うぐっ』

 “もう一人のわたし”は、わたしの中にあったもう一つの重たく、どんよりとさせている要因に対して遠慮なくツッコミを入れてきた。



『わ、わかってはいるわよ』

 確かに二人と比べ、技術レベルや経験が劣っているのは理解している。


 でもここまで勝てないというか、二本先取の設定にもかかわらず一本すら取れない状況に、“自分自身への不満”がグズグズとした思考も頭の中を半分ほど占めていた。



【ま、それが今のあなたの実力ってことでしょうけどね】



 グサッ



 くっ、言いたいことをあっさり言ってくれるじゃないの!


『い、一応この前は敵のPAをたくさん倒してるし……』

【確かにたくさん倒しているけど、その殆どが(バリケード)を破壊する際に撃ったチャージバズからの誘爆でしょ?

 結果としてはキル数としてカウントされているみたいだけど、あなた自身の技量としてカウントしないことね】

『ぐぬぬ……』


 と、“もう一人のわたし”に悔しがってみるものの、実際にPAで戦闘をして勝利したと言えるのはモモさんとの戦いぐらい。しかもアレだってモモさんがもっと上手く立ち回っていたら勝てていたかどうか……


【勝てたのは結果、そしてもう一度同じ状態になることがあった際に勝てるかどうか。むしろ勝てない確率の方が高いのを自分自身でもわかっているんじゃないの?】

『それは……否定しないけど』

【あら、意外に素直じゃないの?】

『二人にアレだけボロッボロに負けたら素直に思うって』

 正直、アレには自分には“隠れたMっ気”があるんじゃないかと疑ってみたりもしたぐらい。


【ま、そう思ったんだったらあとはそこから上げていくだけでしょ】

『そうなんだけどね、さすがにどうしたら良いものかなって悩んでいるのよね』

 “もう一人のわたし”に対し、素直にそう口にする。


「ハマルがわたしに選ばれて“残念だった”と思っていなければ良いけどなって……」


 クセが強いとはいえ、レアな機体であるタイプハマル。

 もっと上手い人が使えば、もっともっと良い結果スコアが出せるのだろうと思うと、ハマルに対し申し訳がないというか、ゴメンと言うしかなくなる。


【とりあえず、あなたが戦ったあの二人のレベル、その高さを忘れないようにね。

 どう考えてもあれだけPAを上手く扱える人なんていないでしょ? この世界の人間にしてもあなた達異邦人(プレイヤー)にしても。

 そんな二人と吐くまで戦えたってことを素直に感謝して次に活かすことね】

『は、吐いちゃいないし!』

 ……吐きそうではあったけど。


「とはいえ、この先どうしたらいいのかな」

 ハルはわたしとの戦闘訓練を数日したあと、アルブラの街を出て自分の故郷となるダズル首長国連邦の首都、ダビドアリドへ向かって旅立っている。



「ダズルに行くには独立都市となった“ダ・リガド”と“ビ・ディン”を通らないといけないからな。この二都市も大変な状態だし、臨時国家カラドボルドだっていつこの二都市に攻め込んでくるかもしれない。

 いや、それどころか逆に帝国の方がこれをチャンスと見て動くかもしれない。そう考えると一日でも早く出発した方が良いと思うんだ。

 本当はもうちょっとリアに付き合ってPAの特訓をしてあげたかったが」


「ううん、あれだけ付き合ってくれただけでもかなり助かっているから」

 わたしの戦闘訓練に付き合ってくれるのは嬉しいし助かっているけど、ハルにはハルが思う行動を優先して取って欲しいと思うし、わたし自身もその方が嬉しく感じる。


「大丈夫よ、PAの戦闘訓練だってしっかりしておくから」

「おっ、そっか! じゃあ次会った時にどれだけPAの戦闘技術が上がったか見ものだな」

「え、まぁ、そうかな~……」

「よし、じゃあロイズさんにはリアがサボったらキツ~イ特訓をしてもらうようにお願いしておくよ」


「あは、はは……」

 うん、これはサボれない。サボってたら間違いなく帳特訓(地獄)が待っているから! キチンとやることやっておかないと後が怖い!



【っていうか、時間は大丈夫なの?】

『時間?』


 ・

 ・

 ・


 あっ。


「夕食の準備するの忘れてた!」



 サバッ!



『っていうかもっと早く教えてよ!』

【あら、てっきりワザと忘れているのかと思ったのだけど?】

『そんなワケないでしょ!!』




 “もう一人のわたし”と言い合いながらお風呂から出ると早々に着替え、急いで台所へ向かうのだった。


いつも読んでいただいてありがとうございます。

また、誤字脱字のご指摘もありがとうございません、本当に助かっていますm(_ _)m


なんとか順調に書き進められているような、でも思ったほど進められていないような……難しい限りです(苦笑)


とりあえず次回も順調に2月3日にアップ予定出来るよう頑張りますので、何卒よろしくお願いいたしますm(_ _)m

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