215話 王者達の協奏曲 3
『それにしても……ここまで機体の、そして操縦者の差があったなんて』
“自分の手足を使った”人としての対戦は何度もしてきたけど、PAでの対戦は今までほとんどしていなかった。
もっとも、PAで対戦しようにも操作系のスキルは取っていなかったから操縦できなかったし、シミュレータを使ってPAでの対戦が出来るということを知らなかったというのも事実。とはいえ、なんとなくそれらを理由にするのは言い訳でしか無いと思う自分もいる。
『一応、モモさんとこの前戦ったし、暴走状態だったもののバンダナ野郎とも戦ったことがあるから、PAでの対戦が皆無というわけないけど……』
「俺と比べれば無いに等しいレベルだよな」
「なんで心のボヤキが聞こえるのよ!?」
「いや、表情に出てたぞ」
「うぅ……」
もしかして、わたしってそんなに表情に出やすい質!?
『確かにそれは分かっているわよ』
ここまで結果として出ればね……でも、
「単純な経験の差、という言葉で終わらせられないと思うのだけど……」
あまり負けっぷりというか、出ている戦績に思わず愚痴が溢れる。
「まぁ、確かにそれだけではないかもしれないが、リアに関しては手っ取り早く経験を積むことで見えるものが出てくると思うぞ。経験が不足していることは間違いないからな。
とはいえ、時間が無いから促成栽培的な状況になってしまっているのは申し訳ないが」
「ううん、こうやって先生として付き合ってくれるというか、教えて貰えるだけでも助かってるから」
ま、先生としてというか鬼コーチ的な気がするけどね。
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『個人での戦闘とは違い、PAでの戦闘はもっと大きく考える必要がある』
戦闘訓練を始める前にそう言ったハルの言葉が、ボンヤリとだけどわかってきたような気がする。
ただ、まだ“気がする”というレベルでしかないことだから、それを自分の中にしっかりと落とし込み、きちんと自分のものにする必要があるわけで。
『でも、こうやってボンヤリとでもわかってきたことで、改めてハルと自分とでPAを操作する技術の差の大きさがわかってきて歯がゆいというか、到達すべきゴールまでの遠さにため息が出てくるといういか……』
うーん、こうやってわかってきただけマシだと思おうことにしよう! しっかし、
「手も足も出ないってこういうことよね」
ハルとの戦闘は一方的な消耗戦。あ、もちろん殆どの消耗はわたしですけど。
最初のうちはスタート位置から移動しながら、互いの武装 (わたしはバズーカ、ハルは狙撃銃)が当たる位置での撃ち合い。
とはいえ、わたしの型ハマルとハルの型シリウスでは機体が持つ索敵能力がまるで違うし、狙撃型のシリウスは武装である狙撃銃が持つ長射程射程の能力もあることから、わたしがバズーカを撃てる間合いに辿り着く頃には、ハマルの耐久値が半分以上減った状態になっていた。
もちろん、そこから撃ち合いをしたところでジリ貧状態を返せることなく、負け・負け・負け。
「チャージバズに頼るスタイルを否定しないが、その分動きが鈍くなっている。
それに最初から溜めてくるのはわかっているから狙いもわかり過ぎだし、溜める時間の分だけ行動が遅れる以上、リアは常に後手にまわる状態になっていると認識して欲しい。
正直に言えば、俺としてはやり易いどころかリアが格好の的になっていたな」
と、ハルからしっかりとダメ出しをいただくことに。
さすがにそう言われた以上は考えを改め『まずは近づく』ということに戦略を変え、とにかく間合いを詰めるまで被弾を減らすことにした。
左右へ回避行動をとりながら移動したり、移動時にちょっとしたショートダッシュ組み込むことで動きに緩急をつける。これらの動きにより、今までハルがこちらの攻撃範囲に入るころに減っていた耐久値の残値も三分の一から四分の一ぐらいまで減らすことが出来た。
『これならいける』
……ええ、そう思っていた時もありました。思っただけで、実際に結果が変わることもまったくありませんでしたが。
やっとわたしの射撃範囲にハルを入れたと思ったらハルは速攻でこちらの範囲外へ。そしてハルはちょっとだけ範囲外に移動した場所から確実にこちらを狙撃。
結局、この、“範囲に入れる”・“逃げられる”・“狙撃される”の繰り返しから抜け出せずに、またまた負け・負け・負け・負け!
「仕方がないさ、リアが背負っていたステータスのマイナス補正がPAの搭乗機会を与えていなかったのは事実だ。実戦経験が不足した状態、それを今得る機会が出来たとプラスに考えよう」
「うん……」
やればやるほどハルとの差を痛感するだけの戦闘訓練だった。それに
「まさか遠隔操作で攻撃することもできるなんてね」
一番最後の戦闘、正面にあった障害物の向こう側にハルの機体があることがわかったわたしは、横から回り込むように移動して射撃しようとした。
『もらった!』
そう意気込んで撃とうとした瞬間、
バシュッ!
「え?」
ボン!
「……はい?」
何をされたのかを理解する間もなく、スラスターごとコクピットを貫通されたわたしの機体は、爆発四散していたのだった。
いつもありがとうございます。
ちょっと切る部分が難しかった(文字が多すぎた)ので、少し短めにしてアップしました。
こういった塩梅を上手く調整できるようになりたいですね……
というわけで、短い分だけ次回は早め?に1月16日にアップ予定です、短いとはいえ久々週二話アップだったり(^O^)
今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m




