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211話 幕間 国の形 6


■ 旧公都リ・ゼルロア 演壇



 ヒュン……



 演壇の向こう、オレ達三人を捉えるように立っていた人型のカメラがゆっくりと消えていくと、それと同じタイミングで外に映し出されていた神代(かみよ)映証(えいしょう)も消えていく。

 どういう理屈かまではよくわからないが、面白い機械……いや、神器があるものだな。アレがいつでもどこでも自由に使えたら面白いというか、世界を統一するのも簡単に出来そうなものだが、さすがにそんなイージーなことは神々が許してくれるはずもない。


『ま、こっちはこっちのペースでやらせてもらうだけだ』

 やること自体は変わらないしゴールも動かない。コチラとしてはとにかく今やるべきことを淡々と熟していくことで結果は勝手について来る。

 さて、



「あんな感じで良かったか?」

「大体は良いですがね、大体は……でも、私が書いた筋書き以外の部分が大問題ですから!

 なんですかアレ!  彼女(リア)のことを話すというのは聞いてましたよ、ええ聞いてました。でも、あんな公開プロポーズの話だなんて一言も聞いていませんでしたが!?」

「……そうだっけ?」

「そうです! 何勝手にトラブルが起こる種を思いっきりバラ撒きますか!?」


 最近、シリュウ(コイツ)がいろいろと頭を使いすぎて大変そうだと思ったから、少しでもそれらが飛ぶように労りを込めたサプライス発表だったんだが……うーん、どうやらお気に召さなかったか。

 いや、ちょっと吹き飛ばすベクトルが違ったか?



「ま、気にするなよ。

それに言っちまったものはどうにもならないからな。あとはオレやお前が色々と頑張ってやり通すしか無いってことだ。

 それにいつも言っていただろ、『話したらダメなことは事前に言ってくれ』って。とりあえずリアについて話したらダメだって言われていないから、普通に話しちまったんだし?」

「い、言うに事欠いてそういう事を言いますか!? というかそういうレベルの問題と!?」

「ああ、まぁ、オレにとっちゃそういう問題さ」


 色々と筋書き書いてからやるシリュウと違って、オレはその場の感性で思いついたら言葉にしちまうからなぁ。


「はぁ……、もう良いです。箇条書きにしてでも話して良い内容とダメな内容をあなたに伝えていなかった私の落ち度です」

「おいおい、そう自分を攻めるなよ。そんなに自分を攻めると……ハゲるぞ?」

「誰のせいですか、誰の!」

 うん、まぁ多分オレだろうなぁ……自覚はないが。



「あんまり軍師さんを困らせてはダメですよ?」

 近くに来たフーラがシリュウの肩をポンポンと叩かながらこちらをみる。


「あはは、気をつけるよ」

 フーラまでシリュウの味方につかれたら仕方がないな。


「さて、とりあえずこれが最初の一歩目だったワケだが、どうだったかな?」

「そうですね、今まで見ることが無かった景色にドキドキしています。そしてあなたの喧嘩の売り方と熱いプロポーズにも」

「ははっ、フーラ的にはどちらもドキドキしたみたいだな。まぁ、でもドキドキしたとはいえ、一部は血が滾るようなドキドキだったみたいだが?」

「ふふふ」


 フーラはオレの問いかけに笑って答えるだけ。もっとも、その笑みの中に見え隠れする()()は相変わらずというか、出会った時より強くなってねーか?


『あー怖えなぁ、亜人のお姫様は』

 とはいえ亜人の場合、狂気すら力の一部と考えている民だから、あれもまた平常モードの思考なんだろうなぁ。



「二歩目は予定通りか?」


 フーラとそんな会話をしていると、彼女の兄であり、オレ達と一緒に演壇に立っていたもう一人の亜人が話しかけてくる。


「ああ、その為にさっきのアレをやったわけだし、ここまで大将(アンタ)にも来てもらったわけだからな」

「まったく、貴様も人使いが荒いな」

「オレもシリュウ(アイツ)に色々と言われて動いているからなぁ、オレも使われる方さ」

「ふむ……ま、そういうことにしておこうか」

「いやいや、買い被られても」

 うーん、大したことなんか何もしてねぇんだがな。実際、ここまでよりもこれからの方がもっと大変になるわけだからなぁ……とはいえ、オレ一人じゃないしな。



「というわけで」

 オレは演壇の縁近くから並ぶ兵達の方を向く。


「まぁ、みんな悪いがこれから面倒なことが加速して起きていく。大変だとは思うが、我々の為、ひいてはこの世界の為に気合い入れて頑張って行こうや。

 目指すゴールはまだまだ遠いが、こんなところで足踏みしている暇も時間も無いからさ」


「「「「はっ!」」」」


 よし、まずは最初の一歩だ。これからの事を考えるとブルっちまいそうだが、オレも気合入れてやっていこうかね!



―――◇―――◇―――



■アルブラ 領主の館


「あらあら~」

「これは……」

さすがのお母様も、いま全土放送で流れた内容を聞いて苦笑していた。もっとも、最初は新国王となったヴェルフの話を聞いて厳しい表情をしていたのが、リアへの公開プロポーズからは何とも言えない表情へと変わっていた。


「彼女は人気ね~」

「でもこのような公開プロポーズをされたら、嬉しさよりも迷惑でしか」

「関係ないわよ~あくまでアレはあの男の発信でしかない内容だもの。そこにリアさんのことなんてこれっぽっちも無いわ~、良くも悪くもね~」

「じゃあ、今のは」

「もちろん嘘なんかじゃないわよね~ただ、これから彼らが動き出す内容を少しだけでも隠すことができるわ~それだけでも価値があるってとこかしら〜」

 厄介な話だな……


「とりあえずあなたはリアさんの所へでも行ってきたら? 色々と面倒なことになる前に彼女と話しをしておいた方が良いもの」

「……そう、ですね」

 実際、これからリアも含め彼女たちがどう動くかは知っておきたい。



 ガチャ



「きっとまだ自動生活(オートモード)へはなっていないと思うので」

 私は手元の書類を机の片隅に片付けると、必要最低限の荷物を持って席を立つ。


「うん、いってらっしゃ~い。何かあれば私にも教えてね~、手伝えることがあれば権力振るうから~」

「そ、そんな簡単に個人の意思で好きに権力を振るうとか言わないでください!」

 お母様が言うとあながち嘘に聞こえないから困る!


「では、行ってきます」

 この時間帯なら、まず間違いなくトムさんのお店のはず。


「はい~、だいぶ静かになったとはいえ気をつけてね~」

 お母様は手をひらひらと動かし、私が部屋を出るのを見送っていた。

 

 ・

 ・

 ・


「さて〜」

 少し温くなったお茶を一口含んでから部屋の隅を見る。


「とりあえず部屋に入るのは許可しているけど~あの子だってそれなりには鍛えていますから、気付かれるかもしれませんよ~?

 できるだけ気をつけてくださいね~」

「この街で私の気配を察知できるのはティグ様ぐらいですよ」


 そう言うと部屋の隅からメイドの服を来た女性が現れる。


「うーん、評価してくれるのは嬉しいけど、たぶんリアさんのところにいる神官さんも気付けると思いますよ、ミゼルさん?」

「……そうですね、確かにあの女であれば。さすがに私もあの女の前では無茶なことはしません」


 うんうん、そういう自重は大事よね~、でもそんな苦々しい顔をしちゃダメですよ~? せっかくの美人さんが台無しになっちゃいますから~



「そうそう、気が付くと言えばリアさんもあなたの存在に気がつけるレベルになっているかもよ~、あの子の成長速度はかなりおかしいから、もしかしたらその域に達しているかもしれないもの~」

 最初に会った時と比べ、あの子から感じる力は別人かと思うぐらいになっているものね~


「彼女がこの世界に来てから見てきましたが、確かに異常ですね。正直、想像以上に厄介な存在になりました。

 この先の動向如何によっては」


 そう言うとミゼルさんは仕事をする時特有の表情でこちら見ます。


「別に許可はいらないわ~でも、事を成しても失敗しても私とは関係ないようにしてくださいね~」

「承知しました」


 そう言うとミゼルさんは再び部屋の隅へ移動して気配ごと姿を消していきました。



『本職ですから自信はあると思いますが、大丈夫でしょうかね~?』

 私はどちらの味方もしませんから~私の仕事はただ女王陛下の益になることをするだけですからねぇ~……



誤字脱字の連絡ありがとうございます!

いつも大変助かっています、なかなか減らずすみません!

とりあえずこのあともう一つだけ幕間を書いて、その次は新章へ移行します。

ただ、その際に書いた内容を一度まとめる時間が必要ですので、

新章を始める前に少しだけインターバルをいただく予定です(たぶん二週間ほど?)


ただでさえ一話あたり文章も少なくても申し訳ありませんが

よろしくお願いいたします m(_ _)m


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