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21話 渇望したもの

ワンツー・ワンツーアッパー、浮かしてからの……

※18/01/16 文頭の不要な空白を修正しました。

※18/02/16 誤字脱字修正しました


 戦う手段。

 今のわたしには存在しない、渇望したもの。


 ルナさんと話した『スキルマイナスの状況から少しでも好転させよう』とした中で、何らかの手段でスキルを覚えることを考えていたけど、もしマチュアさんから教えてもらい、覚える事ができたら その問題を根本からクリアできるかもしれない。


 ただ、格闘ってことは素手とかで魔物を倒すんだよね……出来るのかな?

 でも魔物を倒さないと料理の素材が入手できない訳だし。


 それにすごーく簡単そうに話してるけど、それはマチュアさんのような才能ある人の場合じゃないのかなぁ。人並みの運動神経はあると思うけど、あくまで普通のレベルだし。


「大丈夫、私だって元々普通の女の子だったのよ、優れた才能があったらそれこそ戦士とかになってたと思うし」


 素質が違うような……なんては言えないよねぇ。



「僕もその意見には賛成だな。リアさんがマチュアさんから格闘術を、せめて護身術ぐらいは習った方がいいんじゃないかと思うよ。いつどこで何があるかわからない世の中だからね」

 トーレさんまで……これはイヤとは言えない雰囲気だわ。


 まぁ、確かにレベル11まで戦う術が何も無いのは無用心というか、この世界を甘く見ているのかもしれない。何かあった時に対応できないのはイヤだし。


「わかりました、確かにこれからの事を考えたら少しは戦えた方がいいと思うので……よろしくお願いしますマチュア先生!」


「オッケー、じゃあ今日の夜からでも始めましょうか」

「はい!」



―――◇―――◇―――



 その後いつも通りお昼過ぎまで治療を行い、昼食を作ってから買い出し。ベリルさんのお店に顔を出そうとしたけど【本日休業】の看板が。

 どうやらやりたい日にしか営業しないようで、前回来店できたのはかなり運が良かったみたい。


 神殿に帰ってからは夕食の仕込み。今日はシチューです。ある程度準備ができてから午後の治療に参加。



「はい、これで大丈夫ですよ」

「ありがとう! やっぱキレイな子のヒールは格別だね! あ、ここスクショ禁止エリアかよ~」

 ……本当にわたし目当てなんているのね。


 とりあえず気にしないように装ってはいるけど治療にも慣れてきたせいか、つい聞き耳を立ててしまう。

 別に見られても減るものじゃないから……とは思っていても気にならないと言えば嘘になるかな。


「皆さん魔物退治頑張っているんですね」

「そりゃ頑張りますよ、イベントだからだと思うけど経験値も高めだし、こうやって無料で治療してもらえるからゴールドも節約できますからね」


「他の街でも無料で治療は受けられないのですか?」

「う~ん、魔物が多くポップするのはシーレフに関するイベントだと思うから、たぶんここにしか無料で治療できる場所はないと思うよ」


 なるほど。

 全地区でのイベントならもう少し状況も変わってくるのだろうけど、こうやってシーレフ近郊で魔物が活性化している状況だから、ここだけ無料の治療をしているのか。


 住民もケガしている人が多いのは事実だし、多い魔物を退治しようにもポーションなどで回復していたら赤字とは言わないまでもゴールドが貯まらないわよね。


 かといってレベルの高い人が参加したら魔物なんて簡単に駆逐されているような気がするから、低レベルとは言わないまでも、中級以下の冒険者を対象にしたイベント的なものなんだろうなぁ。

 ……早く平穏になればいいけど。



「あの~コーデリアさん」

「はい、なんでしょう?」

 それからも半ば作業と化した治療を進めていくなかで、ある冒険者が話しかけてきた。


「コーデリアさんはプレイヤーですよね、魔物狩りには行かないのですか?」

「うーん、思わないこともないけど、今はこうやって皆さんを治療することに専念していますからね」


 この質問も結構何度か聞かれている。



『冒険者なら、プレイヤーなら、スキルがあるなら魔物を倒す方に参加しないのか』

『ここは元々NPCがいるからプレイヤーが回復役でいる必要はない』

『こんな場所にいるよりパーティー組んで外で戦う方が効率的だ』



 確かに間違っていないと思うこともあるけど、この街にいる人達、この神殿にいる人達を単純に『NPCだから』と言って割り切ることができない自分が既にいる。


『辛い思いや痛い思いをするのはNPCも同じならば、それを癒すことにPC・NPCの垣根なんて存在しないですよ』と言ってもほとんどのプレイヤーは納得しきれていない表情をしていた。


『プレイヤーは魔物に倒されて死んでも復活できるけど、NPCは死んでしまったら通常は復活なんてできない(五分以内に蘇生魔法がかけられれば大丈夫らしいけど)。

 この世界で生きている人達にとって【死】は【死】であることに変わりはないのだから、少しでもそうならない為に治療が役立つのであれば、わたしはここでずっと治療をしているわ』


 そこまで言って渋々納得されるというか、こちらの言い分を聞いてもらえるのは、わたしと他のプレイヤーとでNPCに対する感じ方が違うからなのかな。



―――◇―――◇―――



「さて、準備はいいかしら」

「はい、たぶん……」


 午後の治療が終わり、夕食の準備もほぼできたタイミングでマチュアさんから「格闘術の修練を始めましょう」と声をかけられ、今は神殿の中にある訓練室に。

 というか、神殿の中にこういった施設があるんだ。


『とりあえず基礎的な部分から始めるから楽な恰好できてね』と言われたので、汚れてもいいようルナさんに貰った作業着ツナギで来ているけど、場所の雰囲気と全然合ってないです……


「あら、気合い入った格好ね」

 マチュアさんはラフな部屋着で登場。

 『うっ、わたしも部屋着で来ればよかった』


「じゃ、とりあえずは基礎から行きましょうか。リアは『まだ魔物と戦った事がない』であってた?」

「はい、魔物どころか街の外にも出たことがありません……」


 そう言うとマチュアさんは「かえって良かったわ~」とこたえてくれた。


 え、……良かった? なにがですか!?





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