200話 アルブラ動乱62
「これから……どうなるのでしょうか?」
わたしの中にあるのは、滅んだ公国とそれを飲み込みながらも生まれ変わった旧独立国家。というか今は臨時国家カラドボルド……言い難いから臨国でいいかな。
「公国については既に滅んだってこと以外は何も無ぇだろうが。まぁ、一応あの国の中でも帝国に面しているという理由からそれなりに武装を整え、兵もPAも含めた軍事力を持っていた二つの都市についてはすぐにどうなるかはわからんだろうがな。
といってもあくまで“すぐ”というだけじゃないだけで、遠からず消える運命には違いねぇさ。
いくら戦う力があろうとも、臨国と帝国という強国に挟まれた一都市じゃあ、ずっと抵抗し続けるなんていうのは土台無理な話だ。そのうち臨国か帝国に攻められて終わりだろうよ」
「なるほど……」
言われてみれば、さっき強制見返しした際の記憶にあった放送でも二つの都市は臨国の支配下に入らず、独立都市として統治すると言っていた。
『とはいえ確固たる力があったとしても、今までのように“公国の中における一つ都市”とは異なるわけだから』
【国力の差、特に食料をはじめとした補給線が無い以上、遠からず干上がってしまうでしょうね】
……二つの都市。今のわたしには直接関わりが無いとはいえ、この先の状態が見えてきてしまうと、やはり心苦しいというか何か出来ないかという思いはあるけど、
【さすがにあなた個人じゃ無理よ? 無駄にすら達しない、愚かなレベルだから】
『うん、それはわかっているから……』
“もう一人のわたし”に言われなくてもそんなことぐらいはわかっている。ただ、思う気持ちだけはどうしようもないわけで。
『もちろん、“もし何かしら手伝うようなことがあれば”っていう感じよ?』
【だったら良いけどね、あなたはそういう所が甘いというか、ダメな所だから】
うっ、自分にそこまで言われるというのもキツイかも。
「はぁ……相変わらずグダグダとしとるみたいだな。まぁ、最後はテメェが決めることだから好きにすればええ、というかしろ。
でだ、さっきの話の続きだがワシは臨国の方が問題だと思っとるぞ」
「そうなんですか?」
そこまで問題が出るとは思っていなかったけど……
「今回の戦争で国の広さとしては王国以上、連邦と並ぶぐらいにはなった。その分国力も高くなるだろうよ。
ま、北の連邦は国土が広くても人が住めねぇところが大半だから、比較しても仕方ねぇ。そうすると比較対象が帝国になっちまうが、如何せん奴らとじゃ統治レベルも民度も雲泥だ。
骨が折れるというレベルじゃ済まねぇだろうよ」
「なるほど」
大変だろうというのはわかるけど、そこまで大変だとは。
「まぁな。独立国家というクセのある土地だけなら強さを持って統治できるだろうよ。
だがな、元公国の国民の半数がエルフやドワーフを始めとした異人やそのハーフ達だ。元々王国と公国とが国を分けた理由も種族問題に端を発しているぐらい、厄介な問題よ。
あそこは独立国家のように“力が正義”にならないお国柄だからな、ただでさえそういった問題がある以上、下手なコトをすりゃ国のアチコチで内紛・反乱が起こりまくって、国力なんざ一瞬にして低下するだろうて」
「一瞬で、ですか」
「ああ、気がついた時には大体手遅れだ。戦争だけでなく、そうやっても国は滅ぶもんよ」
「国が……」
今まで生きてきた中で、国が滅ぶところなんて見たことが無かった。
さっきの統合と見返しで、公国が滅んだというを知ったのもそれなりにショックがあったけど、こう何度も国という単位で色々なことがあるのを見聞きすると、複雑というか、なんとも言えない気持ちになる。
【あんまり引っ張られないようにね】
『え、あっ……うん』
一応、歴史の授業で過去にどうやって国が興亡したとかを習っている。ただ、ゲームの中でとはいえ自分の身近で見聞きすると、つい考え込んでしまう。
とりあえず、“もう一人のわたし”が気にするぐらいだから、あんまり深く考えないようしておこう。
「ま、そういう意味でも旧公国領における臨国の舵取りは見ものだぞ。
産業的にも生産的にもこれといって目ぼしいものが無かった公国が栄えたのは、テメェの土地に生い茂る木材や、隣接していた独立国家と首長国から搬出された特産品が通る際の通行料が主体だからな。
国としてこれといった下支えの力が無い以上、都市も民も地盤が崩れたらすぐにグチャグチャになって……」
そう言うとトム店長はわたしの前に出した手のひらを強く握ってからパッと開いて見せた。その意味は……あんまり考えたくないかも。
うん、とりあえず話をずらそう。
「あの、ちなみに独立国家と首長国の特産品って何ですか?」
「独立国家の特産品はPAの外装や補強・修復にも使われる“魔鉱石”だ。昔からあそこの土地は火山の影響で痩せちゃいるが、逆に火山が持つ桁違いなエネルギーから生み出される鉱石は、あの土地に染み付いた膨大な魔力と混ざり合うことで強力な魔力を帯びた魔鉱石になる。
そして首長国の特産品は砂漠の下に眠る良質な“魔晶石”だな。こっちはPAの心臓部の代替エネルギーとして使える代物だ。
まぁ、あとPAPの心臓部としても使われとるわ。
結局どの国だろうとこの二つが切れちまえばPAやPAPの維持が圧倒的に滞る。
ま、それらの国からしか取れねぇって訳じゃねぇから、王国や他の国が魔鉱石や魔晶石が枯渇してPA共が動けなくなるっていうことはねぇだろうが、一回デカい戦争でも起ころうものなら、そのリカバリーにはかなり苦労するだろうな」
「なるほど」
「っつーかよ、オメェもPAをイジる側の人間だったらな、こんな基礎的レベルなことぐらい覚えておけよ!」
「は、はいっ! すみません!」
ううっ、話をずらすんじゃなかった……
「まったく、勉強不足のテメェと違ってテメェの自動生活はよく働いたぜ。
どこぞのバカが強制換装なんていう無茶苦茶な手を使いやがったことで、ダメージを受けたパーツ類は全部修理させたからな。
……まさかとは思うが、換装と違って強制換装は外した装甲にダメージが出るのを知らなかった、なんてコトは無ぇよなぁ? あ?」
「あはははは……」
強制換装でパーツを外した場合、外した装甲にダメージが出るというのは知りませんでした、はい。
『換装と同じで問題ないかと思っていたから……ゴメン』
【ま、私もそれは知りませんでしたから。次回以降、もし強制換装使った場合、外装の修復は全部任せますので】
『あ、はい……』
そう話す“もう一人のわたし”の語尾から感じる冷たく重たい何かが、非常に怖いのですが!? とはいえ、
『改めて、本当に大量の修復をこなしてくてありがとう。ログインしてステータスを確認した時、“リペア”と“精密操作”のレベルにびっくりしたもの』
【……まぁ、あれは本当に大変でしたから】
ううっ、また刺すような冷たさを感じる目線をこちらに。
『も、もちろん、次同じようなことがあったら全部わたしがやるから!!』
【ええ、ぜひ、山のように積もったたくさんの修復作業を楽しんでください】
『ま、まかせて』
たくさんの修復作業……と言ってもハマルの外装修理だけど、とくにかく“もう一人のわたし”がこなした量が凄まじかったというのは、前回のログアウト時と比べ、リペアと精密操作のスキルレベルが10以上も上がっていた結果から見てとれた。
一応、わたしがトム店長の所へ来てから色々と師事を受け、行った数多くの修復作業によって、それぞれのスキルレベルはそれなりに上がっていた。
だけど、それは初心者レベルから始めたものであり、初心者の域をやっと超えられると言われる【レベル20】までは上がりやすいものだと言っても間違いじゃない。
それに対し、“もう一人のわたし”はレベルを20から10以上も上げていた。
これは中級者から上級者へ至るところになることから、レベル1からレベル20まで上げる量と、レベル20から30まで上げる量を比較した場合には、30まで上げる方が必要になる経験値の量は多くなる。
【そういうこと。あなたがここに来てからやった作業量よりも、私がこの二日間通して作業していた量の方が高かったたし、質も上だったってこと。
ま、あなたがやった部分が礎になっているからこそ出来た作業もあるわけだから、一概に私だけの功績だとは思っていないわよ】
『……うん、でも結果は結果だから』
【まったく、なかなか面倒な性格をしているわよね】
うう、自分でもわかっているとはいえ、言われると地味に刺さるかも。
200話い~けま~した~ヽ(=´▽`=)ノ
中身はところどころ薄いですけどね、あははは……(´・ω・`)
とりあえず章分けがよくわかっていないので出来ていませんが
一応、もうすぐこの章は終わりです。
と言ってもまだ頭の中に書きたい原稿の元の元ぐらいのもはあるので
引き続きトロトロっと書いていきますので、よろしければ引き続きお願い致します。




