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194話 アルブラ動乱56


「はぁ……」

 どれだけの爆発物を使ったものかはわからいけど、(バリケード)や地雷などここまで用意周到な人達が仕込んだということから考えれば、この先に起こっている状況が少なくともわたし達にとって“面白くない状態”だというのはわかる。でも、


「どっちにしろ今のわたしにはこれ以上何も出来ないから……」

 頭の中に鳴り響く警告音(アラート)、それはVRMMOのマシンに設定されたPAWの世界との接続時間が残り僅かな状態なのを知らせる音。


『地雷はそれを管理していたモモさんのミルザムがいなくなったから一緒に消えたと思うけど、強制換装(アーマーパージ)した外装の回収やタウラスさん達に知らせるところまで出来そうにないわ……ごめんね、もう一人わたし』

【ふふ、大丈夫よ。その分はツケにしておくから】

 もう一人のわたしは何かが可笑しいのか、コロコロと笑いながらそう答える。


 ……うん、何が可笑しいのか聞きたいところだけど、もうそんな時間すら無い。


『とにかく任せちゃうから、あとで何があったか教えてね』

【ええ、次にログインした時にきちんと教えてあげるわ。良い事も悪いこともね……】

 わたしは彼女の話を聞きながら、コクピットのシートへ深くもたれ、意識を手放して……


 ・

 ・

 ・


「帰ってきた、で良いのかな」

 PAWの世界で最長となる七時間連続、そして一日としてはトータルで限界の八時間(PAWの世界では二十四時間)のログイン。それは想像以上に頭と体に負担をかけたようで、今までログアウトした際には感じたことが無いレベルで全身が疲労しているのがわかる。

 しかもシャツどころか下着までも汗でべったりと濡れていて、正直かなり気持ちが悪い。


『でも、すっごく体を動かしたくないかも……』

 本当ならすぐにもシャワーを浴びてサッパリしたいのに、それをする気すら起きないというのは自分でも酷いとは思う。



「あと一時間で午前0時を過ぎるから、ログイン時間がリセットされて、再ログインできるけど……ちょっと無理かな」

 PAWの設定として一日で合計八時間が過ぎると、どんな状態でも強制的に接続が切断される。ただ、その八時間というカウントが午前0時過ぎでリセットされるから、やろうと思えば一時間後に再度ログインすることは出来る。出来るけど、


『ちょっと頭も体も重すぎて、ログインする気が起きないというか、気力が無いっていうか……』

 うん、この状態でログインしても何も出来ない自信があるかも。



「……あれからどうなったのかな」

 タウラスさん達と無事に合流できたのか、解除(パージ)した外装は問題なく回収できたのか。

 ……特に強制換装(アーマーパージ)によって外れた装甲と、その際に一緒に外れたバズーカがもの凄く気になる。


『きちんと回収出来なかったらトム店長になんて言われるか』

 この一点だけをとっても、不安な気持ちがジワジワち心を占めるけど……


「まぁ、考えても仕方ないわよね」

 何かあって怒られる時は怒られるし、そんなことで気持ちをグラつかせても得られるものは何も無いし。


『……うーん、わたしがこんな考え方するなんてね』

 まわりの状況を見て、そこに漂う空気を感じながら行動することが多いわたしが、ゲームの中でとはいえ、こんな行き当たりばったり的な考え方をするとは思わなかったり。とにかく、



「なんとかシャワーだけ浴びてササッと寝る! お弁当とかは早起きして頑張る!」

 一旦ゲームのことは置いておいて、今はサッパリさせることと睡眠をとることだけに考えを集中させる。そのまま行けば次PAWの世界にログインするのは明日の夕方だから、丸二日過ぎた世界に入ることになる。


『正直いろいろと不安なことはあるけれど、わたしはわたしがやれることをやりきった。だからそれから二日過ぎてどんな結果になっていようとも、わたしはそれをきちんと受け入れないと』

 自分が行った結果に自信があるという訳ではない。ただ、そこに出ている結果を現実として受け入れるという気持ちをしっかりと持っておくだけ。


「とにかく頑張れわたし!」

 重たい体を引きずるように動かしながら、わたしはシャワールームへと向かうのだった。



―――◇―――◇―――



「なんだかすっごい久々に会う気がするね……っていうか、やつれた?」

「あはは……」

 確かに要さんと通学途中に会うのは久々な気がする。


「いや、通学途中だけじゃなく学校でもPAWの中でも会ってないわよ?」

「……相変わらず鋭すぎですよ」

「私は事実を言ったまでよ」

 ……ま、確かにそうですけど。


「とはいえ、あなたからPAWの話を現実(リアル)で聞くのはマナー違反だしねぇ……

 私と那緒みたいに一緒にいれば別に問題は無いけど」

「ですね」

 要さん達は城塞都市のベルツへ行っていたはずだから、距離の離れたアルブラのことを話すのはマナー違反になる。


「ま、何にしても無茶だけはしないようにね。あと、そろそろベルツ(こっち)に顔を出すとか考えておいてよね。那緒も首を長くして待ってるわよ?」

「あはは……」

 うーん、こればっかりは『はい』と即答出来ないのがツライ……


「一応」

 さっきまで笑っていた要さんの表情が変わる。その表情は本当に稀にしか出さない、超真面目モードの時にしか見ることが無いレアなもの。


「ベルツにいても聞こえる話があるからマナー違反じゃないレベルでの話になるけど、今日ログインした時には面倒な事にになっていそうよ。きっとあなたの方が近いからよく知っているとは思うけど、離れているベルツですら公国に関連した不穏な話は聞こえてきたことを考えると、きっとそれは……」

 わたしを見る要さんは表情を変えずに


「たぶん、色々と動くことになるわ」

「……」

 わたしは何も答えることが出来ない。

 その先の話はログインしてから自分の耳目でしっかりと確かめたいし、今のわたしは下手なことを言って要さんに迷惑をかけかねない。



「ま、とりあえず無理・無茶はしないように。あと、私たちはあなたがウチに来るのを待っているからね」

「はい、ありがとうございます」


「さっ、とにかく学校に行って勉学に励みましょう!」

「本音は」

「アイツの代わりの雑務がウザい」

「あはは……」


『うん、要さんはいつもの要さんだ』

 色々と考えてしまいそうになりかけるわたしを、自分の居場所に戻してくれる。



「でも、実際にログインしたら何が起きているのだろう……」

 気にならないと言ったら嘘になる。


 要さんにお願いし、生徒会室にある機械を借りてお昼に少しだけログインしてみるという手もあるけど、もし面倒なことが起きていたとしても続けられる時間そこまでが無い以上、何も出来ないままログアウトすることになる。そんな中途半端でモヤモヤとした状態を維持したまま、午後の授業を受けなければならなくなる……それは色々な意味でイヤかも。




 結局、気になる気持ちを厳重に閉まったまま午後の授業を全て受け、部活の料研に顔を出すことなく帰宅。料研にも最近顔を出していないから、そろそろ水菱部長にも何か言われそうだし……はぁ。

 気が重くなることばかりです。



 最近はやらないようになっていたのに、

つい、うっかり、ばっさりと元原稿を破棄しつ吐きそう……


 やっばい、ざっくり三話分ぐらい飛んだ……(゜∀。)



 とりあえずサルベージは失敗したので、あとは頭の中にある元原稿の原稿を思い出し、書けるところから書いてみるしかないけど……これがかなりツライです。



 ……来週、アップできないかも(´・ω・`)


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