183話 アルブラ動乱45
「あくまでB班については有志を募り、本人に危険性を確認した上で任務にあたってもらっているぞ?
ま、基本的にこちらに応募するのは戦闘狂いか、多額の報酬狙いといったところだがな」
わたしのとったリアクションが気になったのか、ファナさんは慌てて内容のフォローに入る。
『わたしはバトルマニアじゃないし、報酬と言ってもティグさんからの信を厚くすることだから、金銭的なものに強い興味は無い訳だし。
……いや、ハマルの換装用に使う装甲を買うなら、ある程度まとまったお金も必要だったわね』
ま、それ以前に
「先程もお話ししましたが、わたしはあと三時間ぐらいしかログインできません。A班の方がより重要な任務になるかと考えますが時間の関係上、選択肢は」
「B班……となるな。
実際、私としてもリアのハマルには相手が仕込んで来るであろう障害の除去や、反撃などの火力重視な場面が多くなるであろうB班での参加が助かるよ」
「じゃあ」
「ただ一つ問題があるのだが」
「問題?」
問題って言われても問題だらけと言うか、厳しい事しかないようなB班に、改まって説明が必要になることなんて……
「B班は既に南門から出撃している」
「はい?」
……って、さすがにそれは想定外なんですが。
「南部で起きた爆発については?」
「はい、見てはいませんが大きく鳴り響いた爆発音と、その爆発の目的については知っています」
「そうだったな、だったら話は早い。
あの爆発が起こる二時間ほど前、ちょうどアルブラの南部に偵察兵を出していたんだ。すると占領により閉鎖されていた南門に集まる不審者を見つけてな。
彼らはその後、そこから何事も無く外へ出ている」
「では、それが」
「ああ、間違いなく南部を占領していた奴らだろう。その集団が南門から出たあと、アルブラ内では集団の姿を確認していないからな」
「そしてそれを追って行ったと」
「元々お母様から街の南部へ対する部隊を編成している中で、特に戦闘に特化した部隊を追撃部隊……ここで言うところのB班として臨時に再編し、奴らの追撃に向かわせたんだ」
準備していた部隊の中で、状況に応じて出撃していったということであれば、既にアルブラ内にいないのもわかるけど、わたしとしてはこの状態からどうしたものかが悩ましく。
『領主の館から南部、南門まで行くのにも時間がかかっちゃうから、いっそここからPAを使って行くのも……』
「移動の事なら心配はいらないぞ」
「何か手段が?」
あれっ、心の声が漏れてました!?
「ああ、南部がアルブラの統治区に戻ったことで、限られた権限を持つ者しか使えない転送装置が使えるようになったからな。
それを使えば南門の地下に設置された転送装置へ移動することが出来る」
おお! それなら時間をかけずに移動が可能に。
「リアがすぐに移動できるのであれば案内するが?」
「はい、問題ありません」
とにかく今は時間が惜しい。
「わかった、転送装置はこっちだ」
「はい!」
そう言いながら移動するファナさんに従い館の地下へ進むと、今までとは異なるやや神秘さを漂わせるような不思議な扉のある部屋の前へ。
そんな鍵穴などが無い不思議な扉のドアノブ部分へファナさんが手をかざすと、『カチリ』と内部から鍵が外れる音が。
『そっか、ティグさんの娘であるファナさんなら特別な権限というのを持っていても不思議はないか』
そういえばゲーニスの村で、わたしに拘束的というか、活動に制限をかけるよう魔法も使っていたっけ。そういったものも含め、改めてファナさん自体がこの世界で【力を持つ側】にいるというのを認識させられる。
『そう考えるとファナさんとゲーニスで友好的な関係になれたのは良かった』
あの時違う選択肢を選んでいたら、こうやってティグさんを含めアルブラの人達と良い関係を結べなかったのかもしれないし。
「中に入るぞ」
「あっ、はい!」
うーん、ついファナさんに関することをつらつらっと考えちゃって足が止まっていたみたいです。
ヴーン……
扉が開いた室内に入ると、部屋全体が薄暗い中、一箇所だけ淡い光に包まれた不思議な空間が存在していた。
「これが転送装置ですか」
「そうだ。似たような装置は他にもあるだろうが、大体はココと同じように施設に施錠されているはずだ。
入退出にはそれそうなりのセキュリティがあるから、安易に使えるような代物じゃないと覚えておくと良いぞ」
「そうですね、あまりそういった重要な位置の方々とはお近づきにはならない方向で行きたいですね」
そんな力を持った人と親しい関係になれば、きっとややこしい話に首を突っ込まざろうえないような悪い予感しか浮かばないし。
「向こうに着いたらすぐにPAを使って先行しているB班に追いつくといい。アルブラ内での走行許可は既にリアへ付与しているから安心してくれ」
「ファナさん、色々とありがとうございました」
「なんだ、改まって?」
「いや、その……」
この転送装置を使って移動した先がどうなっているかはよくわかっていないけど、ここまでの事を考えれば、きっと大変なことが待ち受けているような気がする。
『場合によってはファナさんとこうやって話すこと自体が最後になるかもしれないし』
そうなりたくないと思っていても、何があるかわからない未来に自然と思考が下向きになる。
そう考えると、きちんとしていなくてもちょっとしたお礼が言えるチャンスがあるなら言っておきたいと思ってしまう。そんな事を考えていると、
バチン!
「痛いっ!?」
室内に響く音と共に、ファナさんは両手でわたしの顔を左右から挟む。
「ふざけたこと考えているみたいね?
そんな考えを起こしたくなくなるような、もっと痛いことでもしようかしら?」
「ひゃっ、ひゃい! すみません!」
……うん、本気でキレかかったファナさんってめっちゃ怖い!
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コツン
淡い光が灯った部分の床に足を踏み入れると、視界が徐々に歪み始める。
「行ってきます! そして必ず戻ってきて報告しますから!」
「うん、待ってるぞ。
あと言いそびれていたがB班の指揮はタウラス殿に依頼してある」
「タウラスさんが!?」
「リアとも既に知った仲だったと聞いているから、追いついたら彼と相談して作戦にあたると良い」
「はい」
『タウラスさんが作戦の指揮を?』
久々に聞く名前、それもここで聞くとは思っていなかった事もあり少しだけ驚く。
タウラスさんとフィーネさんって、かなり強固とも言えるような主従関係なだったけど……何かあったのかな?
はい、本日も予定通りアップすることができました!
なんとか次回も予定通りアップを目指しますが、
お仕事変わって朝の五時起きになってリアルがぐちゃぐちゃ(苦笑)
一応、次回も翌週5/20の予定ですがちょっと怪しいかも……
引き続き生暖かい目で見ていただけますよう、お願い致します<(_ _)>
引き続きよろしくお願いいたします<(_ _)>




