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182話 アルブラ動乱44


『残りのログイン時間はあと三時間半あまり……』

 ティグさんの話だとすぐに行動をするようだったけど、なんとか戦果を稼がないと。


 PAを使った戦闘。どういう形での戦闘が起こるのかまだわからないけど、少しでも戦ってティグさんに恩を売っておきたい。


「リアってPA同士の戦闘ってまだ少ないわよね」

「うっ……ま、まぁ確かに本戦闘だとゲーニスであったアレぐらいだけど、一応ハルに協力してもらって機体の操作方法は訓練したし、トム店長にもPAのセッティングをする上で兵器の使い方や特性を厳しく教育されたし……」

 なかなかにツッコミがきついですね、ロキシーさん。


「で、実戦は?」

「ううっ……」

 き、気合いでなんとかしてみせます!


 ・

 ・

 ・


「トム店長、ただいま戻りました!」

「ふむ、ちゃーんと足も付いてるのを見ると、噂の亜人には勝てたみたいだな」

「うーん、結果として勝ちを拾ったという感じで、きちんと勝利を収めたとは……」

「なんだそりゃ? まぁ、何にせよ生きてたら勝ちよ、とりあえず死んでないことに有り難みを感じておくことだ」


「そう、ですね」

 確かに死んでしまったら終わりな訳だし……

 ただ、それよりも今は、



「トム店長、ティグさんからPAを準備して集合するようにと言われたのですが」

「ハッ、相変わらず人使いが荒い奴だな。ま、整備も済んでいるから問題ないぞ」


「ありがとうございます!」

 トム店長には色々と頼りすぎで本当に申し訳ないと言うか何と言うか……


「あー、暇だったからテメェのPA(ヤツ)にチョイとオプションも付けておいたからな」

「はぃ?」


 ……前言撤回。


「えーっと、一体何を?」

 こっちを見てはニヤニヤと笑うトム店長を見るとイヤな予感しかしないんですけど。


「ま、とりあえず見とけ。使い方は前に教えてあるからな、『わかりません』とは言わせんぞ?」



 ガガガッ……



 そう言うトム店長の言葉に合わせ、背後にあった格納用のシャッターが上がって行く。そこには……



「えっ? ちょっ……、ええええええっ!」




―――◇―――◇―――



 ガチャ



「まったく……本当に来るとはな」

「あ、もしかしたらティグさんから聞いてました?」


 トムからPAを引き取ってから領主の館へ。門番や受付の人もわたしが来るかもしれないことを聞いていたらしく、フリーパスでファナさんがいる部屋まで通してくれた。


「私としては一人でも多くの戦士・兵士に参戦してもらいたかった事もあり、リアが作戦に参加してくれるの有り難いのが本音だ。

 ただ、同時に今日という日の中でとはいえ、私が知っているだけでも色々な事に手を出してというか、首を突っ込み過ぎているリアの事が心配なのも事実。

 もし、無理をし過ぎたことでリアの身に何かあれば私だけではなく、あの二人も悲しむことになるのを忘れないようにな?」


 そう言うファナさんもかなり心配そうな表情でわたしを見ている。

『……とにかく大丈夫だって事だけでも伝えないと』



「大丈夫です! それに無理しようにも残りのログイン時間が三時間ぐらいしかありません。さすがのわたしでもそんな短い時間で危ない事をするのは難しいですよ?

 とりあえずそんな短い中でお手伝い出来ることがあれば、よろこんでさせてもらいますよ」


 たぶん、アルブラから去った集団を上手く追撃する事が出来た場合、そのまま公国へ援軍として行くことになると思う。

 だけどわたしにはログイン時間の制限があるから、追撃に参戦出来たとしてもその道中で自動生活(オートモード)に変わってしまう。

 そうなれば公国(その場)にいたところで、非力な自動生活(オートモード)の一人でしかいられない以上、戦力としてカウントされない可能性が高いと思う。


『そんな状態では作戦に参加出来ても、重要な任務はたぶん出来ない』

 だったら最初から出来る範囲で手伝うと割り切り、作戦の途中までしか参戦出来なかったとしても、何らかの役に立つことを見つけて少しでも戦果を稼ぎたい。



「はぁ……残りの時間というより、今日一日で色々なことをしている事が心配だと言ったつもりだったのだが。まぁ、リアらしいと言えばリアらしいか」

「あはは……」

 どうもピントはずれな返答だったみたいです。


「ただ、リアが作戦に参加してくれるとなればありがたいのも事実だ。

 正確にはリアの機体に適した内容があるという事になるのだかな」

「機体……それはわたしの(タイプ)ハマルが有効となる戦闘があるという事で?」

 わたしの問いかけにファナさんは頷く。


「それはわたしにとって嬉しい誤算ですよ?

 しっかりと働いてティグさんに戦果を見てもらう……今のわたしからすれば、それこそが一番求めている事です」

 事実、わたしとハマルが役に立てる場所があるのなら、どんな事でもやらして欲しい。それが今のわたしにとって最優先なものだから。



「だが、その分危険だ。それは作戦の指揮を執る者としては別に……友人としては勧めたくないというのが本音だよ」

「大丈夫ですよ、さっきも死にかけてましたが結果的に助かっていますし……昔からわたしは運が良い方なんです」



『……あの時もわたしだけ死ななかったし』

 ふと、自分の奥にしまっておいた物に触れ、少しだけ気分が憂鬱になりかける。でも、


『今はあの時と違って助けることが出来る機会が、大事な人を引き寄せられる【手】を持っている。だから……』



「だから、わたしは出来ます」

「……そう、そこまで強い意思を持つなら止めないけど、さっきも言ったが私にとってもリアは大事な親友よ? あなたと別れたくない人間がここにもいることを忘れないで」

「はい!」

 うん、ファナさんの思いを裏切らないようしないと。



「じゃ、作戦について端的に話すわ。詳しくはこっちに記載してあるから、それを見ながら内容を理解してくれると助かるわ」

「はい」

 そう言ってファナさんは一枚の紙を手渡してくれた。



【独国部隊の追撃及び公国への援軍について】


・部隊を大きくA班とB班の二つに分ける。

・A班は移動型のPAPに乗り込み、一気に公国の公都である【テ・ヴェルサーヌ城】へ。

 道中は極力戦闘を避け、何かあればB班に任せることで、十分な戦力を維持した状態を保ち援軍として向かう。


・B班は南門からA班に先んじて進行し、A班が最短で公都へ向かえるように道中の障害を取り除く。

 また、追撃時に相手が過分な戦力だった場合にも退くことなく戦い、A班が公都に向かうまでの間、相手にこちらの動きを邪魔されないよう、開いているであろう戦線の維持に全力を傾け、相手をその場に釘付けにし、その動きを封じ込めること。


・B班はA班に比べ間違いなく危険な任務となり、PA及び本人の安全については保証できない。その分、その危険に見合った報酬を任務の対価とする。




「これはまた……」

 報酬が高いとは言えB班は消耗品とは言わないまでも、色々な意味で厳しことになるであろう内容に、変な笑いが込み上げてくるのですが……


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