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181話 アルブラ動乱43


「ではリアさん、至急領主の館まで(私の所まで)まで戻って下さいね〜

 あと、戻る途中でトムさんの所に寄ってPAを引取ることも忘れないように〜」

「PA……ということはPA戦が?」

「ええ、たぶん起きるかと〜詳しくはウチで話しますので〜」


 詳しいことはまだわからないけど、PAを使った戦闘が起きる可能性が高くなるのであれば、トム店長に見て貰ったのは正解だったと思う。

 ……トム店長がわたしのハマルにおかしな事をしていなければだけど。

 とにかく、



「ロキシー、お店(ウチ)に戻るよ!」

「……はぁ、リアって一度言い出したら聞かないっていうのを二人に聞いておくべきだったかも」

 二人……ルナさんとニーナかな? ま、いいや。


「それではラルさん、色々とありましたが」

「あ、ああ。それより良かったのか、間接的とはいえ勝負はつまらない結果になっちまったし、嬢ちゃんは危うく死にかけたんだぞ?」

 そういうラルさんの表情はかなり申し訳なさそうに。


「そうですね……わたしとしてはティグさんが得たい情報をこうやって渡すことが出来ましたから。それにあのままおかしな事がなかったら、結果的にわたしはラルさんを殺していたかもしれません。

 そういう意味ではこんな結果もありだと思いますから」

 結果は結果。経過に問題があったのは事実だけど、求めていた結果が得られたのであれば、それにこしたことはないわけで。


 そして今のわたしには、ついさっきの出来事と言えど、そこにあった過去よりも【掴みたい未来】があるのだから、今更変えようのない過去に縛られるよりも、とにかく先へ進みたい!



「色々ありましたが、その全てを自分の成長の糧とする事で良しとすることにしていますから……

 だから、今はアレコレ言ったり考えたりするのはやめておきます!」

「ポジティブだな、好きだぜそういう性格はよ」

「あはは……」

 さすがに面と向かってそう言われると照れちゃいますよ。


「では、またどこかで」

「ああ、願わくば戦場じゃないことを祈るよ」

 わたしはティグさんが話していた作戦に参加するためこの場を後にする。

 さすがにそこから戻った時に二人と会える確証は無い。


『ティグさんが二人に何かするかもしれないけど、そこにわたしが関わることは出来ない』

 何か思うことがあったとしても、この世界の住人ではないわたしに決定権なんかは無い。


「行くよ!」 

「了解」


 ラルさんとベニさん、そして幻影?のティグさんを背に、わたしはトム店長の店へと戻るのだった。



 ・

 ・

 ・



「さて〜」

「邪魔者はいなくなったが、どうするよ?」

 オレは手元に六尺棒を寄せると、目の前にいる幻術師の動向を注意深く見守る。


『離れた領主の館から幻術魔法を使い、周囲にいた観衆を完全に騙しつつ、本物と見分けがつかないレベルの幻影体を使う。

 そんな規定外な魔法使いからどう逃げ出すか……』

 イザとなったら適当に暴れちまえば、さっきのアレもあるから何とかなるとは思うが。


『でも、オレの【戦気乱舞(バッカス)】もコイツの魔法でかき消されてるっぽいしなぁ……やっぱり魔力が高い奴は厄介だぜ』

 とは言えコイツは既に範囲型の幻影魔法を一度使っている。これだけ大規模の魔法なら、そうポンポンと連続して使えない……と思いたいが。



「色々と考えているみたいですね〜? とりあえずこちらとしては単刀直入な提案になりますが〜」


 そんなことを考えていると、目の前の幻術師から話しかけてきた。


「なんだ?」

「今から一時間以内に貴方達二人がアルブラを出る。そして特別な要件が無い限り【二度とこの街には踏み入れない】と言うことでいかがでしょうか〜?」

「ほぅ、それはまた寛大な」

「悪い条件では無いと思いますよ〜?」

 ふむ……確かに悪くはないな。


「良いだろう、どうせ荷物は全てここにあるからな」

「ええ、それでお願いします〜」

「わかった、すぐに出立する」

「はい〜、あと五分もすればこの領域に張った魔法も解けますので、それと同時に動けば皆さんの意識には留まりにくいと思いますよ〜」


 向こうも満足といった表情をすると、そのまま空気に溶け込むように消えていく。



「意外ね」

「そうでも無いさ」

 構う必要が無いものに不要な時間をかけるのはただの愚策。ま、どう転ぼうがオレ達がここから出て行くことに変わりはないしな。


「さっさとずらかるぞ。下手に長居をしたら面倒な奴が来るかもしれねぇからな」

「面倒な奴?」

 怪訝そうな顔をしたベニに近くと小声で話しかける。


『オレ達にすら気配を悟られない奴がこの街にいる。そいつがオレの六尺棒(獲物)に小細工しやがった奴だ』

『小細工!?』

『さっき嬢ちゃんから抜き取る時に、六尺棒から【混乱・恐怖】の情報が流れてきた。

 対人レベルでそういう技を使ってコントロールする奴ならまだわかる。だが、意志持つ(インテリジェンス)アイテムにも同様の事が出来るだなんて聞いたことが無い。

 ……あくまで今のは推測でしかないが、そんなウザい技を使う奴がいたとしたら、』

『次はアンタかアタシにしてきて同士討ち狙い』


 ベニの答えに軽く頷くと置いてあった荷物を革袋に詰めていく。


「何にせよ、この街でのオレ達の仕事は終わりだ。だったらさっさと移動するぞ」

「ハァ、本当にアンタは忙しないわね。で、どこへ向かうのかしら?」

「なに次に騒がしくなりそうな場所に行くだけだ。既に戦火は否応なしに広がっている、だからどこに行ってもおもしろくなるだろうが……」


 と言いつもオレは既に行く場所を決めている。


『この戦争は確実に長期に渡る。であれば、なるべくその中心となるであろう場所へ行くのがオレのセオリーだからな』


 出る場所は西門、向かうは二百年の間に十度も異なる国の領地とされた街……



「【ビ・ディン】に行くぞ。オレの考えが正しけりゃ、独国……いや、アイツらが次に火種をまくのはあそこだ」

「ビ・ディンねぇ……あんまり良い思い出は無いけど、どうせ国に戻っても煩い親の相手をするのも面倒だし」


 面倒ねぇ……将軍(親っさん)もこんなジャジャ馬に気を使わなけりゃならないなんて、色々と大変だなぁ……



 ・

 ・

 ・



「ティグ様! 奴らはアルブラを侵略し、兵士達を殺した一味ですぞ!

 捕まえて罪を償わせる事はあっても、何もせずに逃がすなど」


 魔法を解除し、意識を体に戻した瞬間に煩い行政官が私の決めた意見に口を出す……困ったものですね〜


「では、貴方が彼らを街への被害無く捕まえてきてくれますか〜? そうすれば私も彼らにそれそうなりの償いをさせましょう〜

 ……勿論、出来ますよね〜?」

「そ、それは」

 そう言うと行政官は目を泳がせてから黙り込む。


『お馬鹿さんですね〜、誰もがそう思うでしょうけど、誰もそれを自分でやりたいなんて思わないですよ〜』

 その証拠に、まわりの重臣達は誰も彼とは目を合わせない。それに、



「良いですか〜、今の私達が真っ先に成さなければならない事は、この街に被害を与えた者達を罪に問う事ではなく、公国からの救援要請に一刻も早く応える事です〜


 『同盟国より救援要請が発せられた際には全ての物事より優先すること』


 それは我々家臣が女王陛下より受けた勅命なのはご存知ですよね〜?

「はい……」


「行政官の身内の方が侵略者達の手によって命を落としたのは存じ上げています。その仇を討ちたい気持ちもわかります〜

 ですが今ここで公国が滅亡し、その領土が独国のものとなれば、公国領と隣接するアルブラ(ここ)が次の戦場となるかもしれません〜


 それに彼等を捕まえるのは生半可では済はませんよ〜、こちらの被害もそれそうなりに出てしまう事になるでしょうし〜

 そうなれば公国に向かった敵を追撃することが難しくなるのは勿論のこと、住民を始めにより多くの犠牲を出すことになるでしょう〜

 もしそんな事が起これば、今まで占領下で耐えていた南部の住民から予想出来ないレベルでの反発が起きかねません〜

 ……わかりますね?」

「はい。己の事ばかり優先し、他のことを考えておりませんでした。誠に申し訳ございません」


「いえいえ〜」

 これ以上被害が出ないのであれば、それにこしたことはありませんからね〜



「ファナさん追撃・救援準備の方はどうですか〜?」

「はい、既に先行隊は出立しています。メインの部隊も遅れなく進められています」

「なるほど~、では予定通りですね〜

 それと南部の統括代理はギュリスさんでしたか〜? 彼等の話によると既に拠点は廃棄しているようですが、一応現場検証などをしておいて下さい〜」

「はっ!



『あ、ファナにはリアさん達が来るのを伝えなければなりませんね〜』

 ……可能な限りたくさん働いていただく必要がありますから〜



 はい、今週は何とか予定通り月曜日にアップが出来ました(*´▽`*)


 そして、前回のアップ時にもたくさんの誤字脱字に関してご指摘をいただきました。

 本当にありがとうございます<(_ _)>


 ……全然誤字脱字が減らない自分に涙が( ノД`)シクシク

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