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174話 アルブラ動乱35 vsラル 2


長くなりました(´·ω·`)


 ジリッ……



 開始が合図されてから数秒、わたしもラルさんもゆっくりと弧を描くように動いて互いの出方を見る。


『この感覚、本当に久しぶり』

 リュウとの戦いではこういう間はなく、ただひたすらに攻撃を出していたような気がするから、この互いにプレッシャーを出しながら牽制しあうようなの独特な間に、マチュアさんと修練していた時のような懐かしさを思い出す。

 さて、


「わたしがすぐに動かないのは既定路線でしたが、まさかラルさんも様子見になるとは思いませんでしたよ?」

 正直、すぐにかかって来る事を予測して警戒していた。


「そりゃ、さっきのアレを見せられたら慎重にもなるだろ?」

「アレって……【鎧通し】のことですか。別段普通の闘技だと思うのですが?」

「アレが普通ねぇ……

 余分な動きが一切なく、歩きながら相手に手を当てただけで勁力系の技を発動させていたのは、オレが知っている限りは普通で通じねーがなぁ」


「なるほど! いつも修練でやっていた事だったので、わたしの中ではすっかり通常行動の一環になっていました」

「随分と怖えぇ師匠に鍛えられたもんだな」

「ええ、怖いけど最高に強くて優しい師匠ですから……

 そしてその師匠の為にわたしはあなたと戦い、勝たなければならない!」



 《修羅の息吹》



「わたしは負けられない、自分の為だけじゃなくあの人の為にも。

 ……例えこの命が尽きることになったとしても、わたしは後悔しない」


「オイオイ、何かどさくさに紛れてふざけてる闘技使うじゃねーか? それ、普通の神官(モンク)が使う【息吹】じゃねーだろ、オレは聞いたことが無ぇ!

 ……つーか【命】って、オマエは異邦人だから気にする必要なんて無いだろうが」

「そうですね……普通なら問題無いのでしょうが、残念ながらわたしの命は他の異邦人とは違って有限ですから」

 その言葉の意味を図りかねるのか、ラルさんはやや訝しげな表情でこちらを見る。



「ま、良いやオレには関係無ぇ話だ」

「ええ、そういう事でお願いします」

 そう言いながらわたしはラルさんに向かって両手を上げて手のひらを見せる。


「降参……ってわけじゃねーよな? まさか、オレと力比べしようってか?」

「ええ、折角闘技で強化したので挑戦してみようかと」

「……面白れぇ、言うじゃねーか!」

 わたしが上げた両手に対しラルさんも両手を出す。そして、



 ガシッ



「「!」」

 お互いが出した両手が合わさり、手四つの状態に移行する。



『【息吹】の数倍は能力を向上させる【修羅の息吹】でも五分……わかっていたけど尋常じゃない強さ!』

 命の価値が変わり異邦人よりもこの世界の住人に近くなった状態となり、ステータスは大幅に上がっている。正直なところ、この状態で使用した【修羅の息吹】であれば、ステータスから算出される能力値的には確実にハルの数値ですら超えているはず。

 でもそんな状態にもかかわらず、勝るどころかラルさんに若干押されつつある状況に思わず舌を打ちたくなる。


『もっと、もっと力を……』



 ミシッ……ミシミシ……



 出す力を強くする度に、両腕・肩・背中から何とも嫌な音がする。

 でも、そうやって自分の中にある力を一切惜しみなく出していく事により、押されていた手四つが少しずつだけど元のイーブン状態へと戻っていく。



「……嬢ちゃん人間やめてねーか? それかやっぱり中身がオレらと同じ亜人だとか」

「……一応、普通の人間だと思いますが」


 そんな事を言うなんて、たぶんラルさんも力を最大限出している状態なのに自分と互角になっているわたしが何者かと考えているんだと思う。だったらラルさんの意識が力を出す事に傾いているこのタイミングこそが、奇策を使う絶好のチャンス!

『スミマセン! 先に謝っておきます!』



 《炎操》



 ゴウッ!



「熱っ!」

 組んでいた両手のひらから、生活魔法の【炎操】を使って炎を呼び出す。完全に予想外だったラルさんの両手は炎に包まれ、その熱さに驚き両手を振りほどく!


『今っ!』

 相手の意識がこちらから離れた瞬間、わたしはその隙にラルさんの背後へと回り込み、その腰に巻き付いていたベルトのような部分を両手で掴むと、



 《背後投げ》



 ドッ!



 弧を描くようにラルさんの体が傾いていくと、頭から地面に激突する。


『まだっ』

 敢えて投げっぱなしではなく、相手の頭を地面に突き刺すように調整した背後投げ。それにより頭が埋まったままになったことで動けなくなったラルさんが生んだ一瞬の隙を見逃さず、



 《衝波》



 ゴウッ!



「くっ……」

 自分で技を放ちながらも、【衝波】の衝撃によって発生した大量の土煙に視界が奪われ、目が開けられない状態に。


『【衝波】の威力も普段と比べて何割増しって感じだし!? というか、さっきの感じ……って』

 そして同時に感じた嫌な予感。その感覚にすぐさま今いた場所からバックステップで退避する。



「あっぶねぇ……」

 徐々に消えていく土煙の中、ラルさんはほぼ無傷に近い状態で立っていた。


『今の手応えがおかしかった……』

 完璧なタイミングで放った【衝波】だったし、技が当たるまでは問題無かった。だけどその後の気の通り方が普通じゃなかった。あれはまるで……


『練習としてマチュアさんに気系の技を当てた時と同じ感覚。気が通りにくいような、跳ね返ってくるような……という事は』



「亜人の方にも気を、【剛気】を使われる方がいらっしゃるんですね」

 わたしがマチュアさんに聞いたのは【剛気】は帝国より北部で使用される格闘系の闘技であり、王国や公国などでは使う人があまりいなかったという事。


 どちらも対気系の闘技に使用することで被ダメを減らすものだけど、【剛気】は継続的にも瞬間的にも使える闘技なのに対して【気功壁】は継続的な状態でのみ使える闘技。使いやすさと覚えやすさからそれなりに広まってはいるものの、効果が発動するまでの時間が長いことと、一度発動すると規定時間が過ぎるまで他の防御系闘技が使えなくなるというデメリットが。


 そういう事もあり、好みの差より効果の面やより期待値の高いものを求めることで、【剛気】を覚えようと北へ行く人もそれなりにいるいう話だった。

 そして、ただでさえ他を押さえようと技術の流出を嫌がる帝国や、やや閉鎖的な面を持つ北の国々の住民から、亜人であるラルさんが習得するのは至難の業だと思う。



「はは、さすがにバレたか。まぁ、オレらの国じゃ強さが全てでな、強くなるためなら何でも貪欲に求めるサガよ。

 オレが使ったのも国で誰かに習ったもんじゃねーさ。偶々帝国でドンパチやった時に無茶苦茶強い奴がいてな、あまりにムカつく技だったから一週間そいつの前で土下座してやっと教えて貰ったんだよ。

 ……いやぁ、あん時はキツかったなぁ」


「教えたと言うより、それだけ教えて厄介払いされたんでしょうに」

「五月蝿え!」

 ラルさんの思い出話にベニさんが速攻でツッコミを入れる。

 ……ホント、二人は仲が良いなぁ。



「ま、でも今までで一番有効に使えたな。アレをガード出来なかったら、もしかしたらあの世行きだったかもしれねーしな。さっきチョロっと勁力系の技を見せてもらっておいて助かったぜ」

「……それは失敗でしたね」


 普通【鎧通し(アレ)】を出したのを見たからって、そこから気を使った攻撃が来ることを予測して【剛気】をいつでも使えるように準備しているものでもないし、実際に対応出来ていたのが凄いと思う。

 それに【剛気】自体が覚えるのにかなりの時間とセンスを必要とするスキルということを以前にマチュアさんから聞いており、実はわたしも闘技を大量に取得したあのタイミングでやっと覚えることが出来たぐらいな訳で。そこから考えると……


『他にも気を使ったスキルや、勁力系の技が使えると見た方が良いだろうし、わたし以上の使い手と見ておくべきかもしれない』


 簡単に勝てる相手だとは思っていなかったなけど、改めてそれ以上に大変な相手だと情報を書き換える。

 ……これ、かなり不味いかも。



「良いねぇ、痺れるねぇ。いやぁ、こんなにワクワクするような戦いは久々だぜ」

「それはそれは」

 あれだけのものをワクワクするという一言で片付けるなんて……この人は戦闘狂(バトルジャンキー)なんてレベルじゃない!

 それこそ、この人にとっては生活の一部とかになっているんじゃないの!?


「嬢ちゃんばかりに良い格好させるわけにはいかないよなぁ?」

「いえ、遠慮したいところですが……」


「なーに、そこは」

 そう言いながらラルさんが高速で間合いを詰めてくる。そして、


「味わってくれよ!」



 パァン!



「うっ」

 鋭く速い、だけど見た目は普通のパンチ。にも関わらず、そこに怖さを感じたわたしはガードを選択。しかも危機回避を兼ねて念のために【剛気】を使ったガードだったけど……結果、それは正解だった。


「ガードの上からHPを削るパンチって反則じゃないですか? というか【剛気】使わなかったらもっとダメージ入っちゃってますよ」

「いやぁ、嬢ちゃんならキチンと使うと思ってたしな。実際のところ問題ないだろ?」

「キッチリ削られてますから!」

「なーに、普通の奴ならさっきので半死レベルになってるぜ?」


 そう簡単に言い切ってくれるというのは、それだけわたしのことを評価してくれていると考えるべきなのか。それとも単純に自分が使えるモノなどであれば、相手も使えるだろうという考えだけで言ったのか……何にせよ色々とヤバイ。


『闘技を使った感じは無かった。しかもあの感じだと気系の闘技というよりも勁力系の闘技を受けた際の被ダメ感だった。そうなると……』



「あー、深く考えているみたいだけど今のは普通のパンチだぞ。嬢ちゃんだったら理屈はわかるだろ?」

「……ええ、まぁ」

 

『攻撃の動作自体が既に勁力が発生する動きを伴っており、その動作から出された通常攻撃には自然と勁力系のダメージが含まれている』


 マチュアさんから最初に修練つけてもらった際に受けた攻撃。あれもマチュアさんとしては特別なことをしたものではなく、ただただ動作の中で自然と発生するエネルギーをそのまま伝達していただけと後から聞いて驚いたけど……これと同じことをラルさんがしているってことは、



『マチュアさんと同等かそれ以上のレベルってことじゃないの!?』

 身近で最も強く、未だに模擬戦ですら一ミリたりとも勝てるとは思えない強さを誇るマチュアさん。そんな人と同等……いや、体格とか持っているパワーからしたらそれ以上と考えるべき相手との戦闘ということを改めて意識する。でも……


『だからと言って負けて良いなんて選択肢は無い』

 ロキシーに言われた通り死んだらお終いとなったわたしの存在。

 ただ、そんなものはこの際どうでもいい。ラルさんとの戦いに勝って欲しい情報を得ることこそが、今のわたしが目標とするゴール。



「強いですね、本当に強いです」

「ははっ、鍛えているからな」


「鍛えてですか……」

 わたしだって日頃から鍛えてきた。確かにまだまだ未熟な部分はあるし、修練の際にマチュアさんから怒られることだってたくさんあった。

 悲しいかな、そんなわたしがちょっとラルさんと手合せしただけでも、今まで鍛えてきたものだけではラルさん(この人)に勝てないというのは既にわかっている。




()()()()()なら……ね』




はい、今回も無事アップができました~

最近文字数が多いというのが良いことなのかどうなのか悩み中……


最初の頃は2500文字ぐらいだったものが、最近では3500~4000文字近くなることも。

この辺りの加減って本当難しいですよね。

まぁ、読み辛くなければ良いかな~とは思っていますが……


さて、次回はいつも通りの来週月曜の3/11にアップ予定です。

こちらも問題なくアップできるよう、色々と細かなところをチェックしながら

文章を作っておきますので、次回もよろしくお願い致します!


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