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173話 アルブラ動乱34 vsラル 1


※19/02/28 ちょっと後書きを修正しました


「チッ、じゃあ面倒だからお前ら全員一度にかかって来いや。

 もう条件そのままで良いからよ、勝てたら好きなもんやるよ!」


「言ったな!」

「勝ってから撤回するんじゃねーぞ!」

「おい、折角だから全員でやろうぜ!」


「え、ちょ、ちょっと!?」

 順番待ちしていた残り九人の挑戦者達がそれぞれ武器を構えると一斉に亜人へ斬りかかる!



『ええぇ、さすがに九対一って厳しいんじゃ!?』

 いきなり複数の戦闘になるというのもキツイし、あの九人も別に仲間とかじゃなかったはずなのに、息を合わせたかのように前後左右から斬りかかってるし!



 ……だけど、そんな心配は全く無意味だった。


 全方位、しかも挑戦者達の武器も剣から槍やハルバードなど間合いもバラバラだったのにもかかわらず、ラルさんはその場から一歩も動かずに



 《合掌》



 パァン!



 力いっぱい両手を合わせながら放った言葉。

 言葉と同時に大きく鳴り響いた音が辺り一面に伝わると、今まさに斬りかかろうとしていた挑戦者達の動きが止まる。それはまるでVTRで再生していた画像が停止ボタンを押されて止まったような感じであり、その状況を作り出したラルさんは



 ドガッ、ドガガッ!



 前面にいた冒険者達との間合いを軽く跳躍して詰めると、そのまま宙に浮いた状態から回し蹴りで一蹴。ヒットした挑戦者達は一様に吹き飛ばされる。そして若干離れた間合いとなった残りの挑戦者達へは、回し蹴りの着地後に即反転しながら体を低くし、その体制から鋭いタックルを放つと、



 ドン!



 激しい音に比例するかのように、残った挑戦者達が遥か後方へと弾き飛ばされる。



「うぅ……」

「……」


「うわー……」

 倒れた挑戦者達は皆ダウン状態へ。よく見ると数人首の向きがおかしな方向を向いていますが?



「あー、気にしなくて良いぞ。

 そいつらも含め、挑戦者達には事前に『死んでも文句は言わない』って覚書を出して貰っているからな。それに異邦人なら死んでも後で生き返るだろ?」

「いや、まぁそうなんでしょうけどね……」

 とりあえず、



 《エリアヒール》×2



「うん、これで良っと」

「無駄な事してるなぁ……やっぱり異邦人って良くわかんねーわ」

「気持ちの問題、ってことでお願いします」


 どうしてもこの世界の人達とわたし達異邦人(プレーヤー)との間で価値観の違いが出ちゃうものだから、このあたりはある程度仕方がないものだとは思うけど少しだけ寂しくも怖く感じる。


「すみません、どなたか見ている人の中からこの人達を移動させてもらえませんか?」

 わたしのお願いに反応した数人が、ダウン状態の挑戦者達を場外へと運ぶ。



「……もうラルもやる気になっちゃったようだから止めようがないけど、お嬢ちゃん本当にやるのよね?」


「えっ!? あ、はいっ」

 さっきまでラルさんの向こう側にいたはずのベニさんが、いつの間にかわたしの横まで来て話しかけてきた。



『こんなすぐ側に来ていたのに気配を全く感じられなかった!?

 マチュアさんに言われてから【周りの気を感じ取る】練習をしたことで、ティグさんのような特殊な人以外はある程度わかるようになっていたのに……』


 こんなちょっとしたものからも、改めて最初に感じたベニさんの強さが本物であるということを自分の中で立証させる。


「心配していただいてありがとうございます、ベニさん」

「まぁね。ウチらのような亜人だったら女でもアイツ相手に戦闘を挑むのはわかるけどさ、アンタみたいなカワイイお嬢ちゃんが挑むっていうのがね……

 そんな細い身体じゃ、アイツのパンチ一発で簡単に折れちゃんじゃないの?」


「えっ!? 細いだなんて」

 ふふ、なんだかちょっと嬉しいかも。



「そういえばアイツとの戦闘についてルールとか知ってる?」

「あ」

 ここへ来たタイミングで挑戦者受付の締め切り話になり、つい慌てて手を上げていたから戦闘についての詳細を確認していなかった。


 そういえばさっきラルさんが『挑戦者達には事前に『死んでも文句は言わない』って覚書を出して貰っている』って言っていたけど……死んでも!?



「参加費は五十G、勝利時の対価はアイツが持っているもので挑戦者が望むもの。

 ルールは時間無制限でなんでもあり。一応棄権はアリだけど、今のところ棄権する前に全員死亡しているから、あんまり関係無いかもね」

「あはは……」

 確かにさっきの攻撃を見ていたら、降参する前に戦闘は終わっていそうだよね。


「あとアイツの意向で死なない模擬戦形式ではやる気が出ないということだから、死亡ありの実戦形式になっているわ。それを了承した上でのこの書類にサインをお願いね。

 ……まぁ死亡ありと言ってもアナタ達異邦人なら死んでも戻って来れるし、そんなに問題は無いと思うけど。あくまでアイツがそういう形じゃないとダメだってだけだから」

「なるほど……」


『うん、やっぱり死亡ありね』

 わたしの命、その価値は既にこの世界の人達と同じになったから死んだらそれまで。一応回復と言うか蘇生手段はあるみたいだけど、高価な蘇生アイテムなんて持ってないし、復活魔法やスキルなんて未だに見たことも聞いたこともない。だから死んだらお終い。

 でも、わたしが求める……マチュアさん達を助ける為の情報をこの人達が持っているのだとしたら、どんな危険を顧みても挑戦するしかない。


「はい、大丈夫です」

 ここでわたしが退くわけにはいかない。



『リア、本気なの? あなたは死んだらお終いなのよ!?』

『わかってるわ、ロキシー。でもね、欲しいモノをこの人達が持っているのだったら、【この世界での命(それ)】を賭けてでもわたしは挑まないといけないから』

『そう……なの。ごめんね……』


『謝ることなんてないわよ? わたしが決めたことなんだから。あと、ゴメンだけど参加費をわたしの代わりに払っておいてもらっても良いかな。もちろん後で払うからね!』

 ロキシーが何について謝っているのかはよくわからないけど、わたしがわたしの希望で決めたことだから誰にも責任なんて無いわけだし。



「おー、本当に人間にしちゃ惜しい異邦人だな。ぶっちゃけ中身は俺らと同じ亜人なんじゃねーかと思うぐらいだぜ。

 ……って話が反れたな。で、嬢ちゃんが望むものは何だ? やっぱり金か?」


『わたしが望むもの……』

 賞金が気にならないと言えば嘘になるけど、今のわたしが欲しいものはただ一つ。



「わたしが望むものは一つだけです」

「ほぅ、なんだ?」


「あなた達がアルブラで起こっていることについて詳細を知っているなら、その全てを教えていただけますか?」

「ここで起こっていること……ははは、そういうことか」

 ラルさんは最初頭をかしげていたけど、どういう意味かがわかった瞬間にニヤリと楽しげな笑みを浮かべる。



「ああ知っているぜ、ここで起こっている表も裏も。それが嬢ちゃんの望むものってか……」

「では、それでお願いします!」


「ラル!」

「ベニ、これはオレが決めたことだ。

 それにクソガキにもあそこにいた間は口止めを約束されていたが、離れた以上はもうそこに約束を守らなければならないルールなんてねーよ。ま、オレが負けた時はほぼほぼ死んでいるだろうから、そん時はベニが嬢ちゃんに話してやってくれ」


「……でも、それを話したら」

「はっ、負けなきゃいいんだよオレが。

 てか、オマエはオレが負けると思っているのか? それはそれで悲しいなぁ」


「だって」

「それに独国(ウチ)の中じゃ普通にあることじゃねーか? 強い奴の意見がもっとも通る国、弱ければ何にも守られない弱肉強食の国だろ。

 だからもし万が一オレが負け、その結果で話した内容に文句を言うような奴がいたならば、そん時は嬢ちゃんがそいつに勝って黙らせれば良いだけさ」


「……えーっと、なんかわたしが絡んでいませんか!?」

「なに、一応ちょっとした確認だよ、気にすんなや」

 十分に気にしたい内容な感じがしたんですけど……



「さて、ルールはさっきベニから聞いていたから問題は無いな? あくまでオレと嬢ちゃんとのタイマンだ。ウチのベニが乱入することは無いから、嬢ちゃんのところもツレが乱入しないようにしてくれよ。折角の楽しい対戦に水がさされちまったら興ざめだからな。

 ……あー、ちなみに本来ならオレは()()を使って戦うんだが、今までの奴等の含め全員素手でやらせてもらっている。勿論、それは手抜きとかいうことじゃねぇからな?

 ぶっちゃけアレを使って戦ったら面白みもクソもねぇ。ま、そんだけの差がつく反則級な獲物だと思ってくれ、決して手抜きとかいうことじゃねぇからよ。

 どっちにしろアレを使う場面なんて無いと思うが、万が一アレを使っちまったらオレの負けだ」

 そういうラルさんの視線の先には二メートル近い漆黒の棒が立てかけてある。


『何だかちょっと見ただでもゾクッとするような何かを感じる武器だなんて……あれもタウラスさんの鎧みたく伝説系(レジェンダリー)アイテムなのかな』

正直なところ、それが手抜きだろうとハンデだろうと使われないことに越したことはない。



「そろそろ良いか?」

 ラルさんはそう言うと、首を鳴らしながらグラウンドの中央に立つ。


「構いませんよ、大丈夫です」

 わたしも身に着けている中で不要な物を外してロキシーへ手渡すと、大きく息を整えてからラルさんの前へ立つ。



「改めて名乗ろうか。【死撒剛腕(テンペスト)】ラル・グ・ダーズ。独立部隊所属の歩兵だ」

「わたしは二つ名なんて凄いものは無いので……コーデリア・フォレストニア。戦闘神官(モンク)です」



「じゃあ、始めようぜ」

「はい」



【Fight】




 な、何とか三週連続、週間二話アップ出来ました!


 ……まぁ、それにより次回分しかストックが無くなっていますが(;O;)


 でもなんとか早く話を進めたいんですよね、戦闘シーンに全然進まないし、昔書いていたような日常パートも最近まったく出てきていないし……


 といいますか、ストックがガンガン減ってきているので校正できていない文章を急いで見直し、その後チェックからのアップとなっていますので、また誤字脱字が怪しくなりつつあったり……


 とりあえず出来るところからコツコツと頑張っていきたいというのは変わりませんので引き続き継続的なアップで見ていただけるよう、頑張っていきたいと考えますので何卒よろしくお願い致します<(_ _)>


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