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172話 アルブラ動乱33


 さて、そんなことを話している間に目的の場所へ。

 そこはアルブラの北部地区と西部地区を隔てる場所に設置された公園であり、遠くから見てもたくさんの人達がここに集まっているのがわかる。



「すげぇ強えよな、あの亜人!」

「あんな奴にどうやって勝つんだよ、絶対無理だろ?」

「遠距離で強力な魔法でドーンと……」

「魔法が発動するまでに間合い詰められて終了だって」

「素手でアレなんだよなぁ……本来ならあそこに立てかけてあった黒い棒を使っているって話だからろ? 言われている通り、ありゃ確かに戦場で見たら逃げるが正解だよ」

「こっちの住民の話では、いつもは色々な戦場で暴れている奴だってことで有名らしいぞ? どこへ行っても会うことがあるんじゃないのか」

「そういや今って亜人の国と公国がやりあってるらしいんだろ? なんでそんな強い奴がこんな所にいるんだ?」

「もしかして例の黒ずくめの集団の中にいたとか……もしくは関連しているとか?」

「おいおい、まだあいつ等ってアルブラにいるんだろ。そりゃねーって」



 うん、ちょっと聞き耳を立ててみただけでも、この先にいる亜人が滅茶苦茶強いってことはわかった。そしてわたしが感じたのと同様に、その亜人と正体不明の集団との間に何らかの関係があるんじゃないかと思っている人もいるみたい。



「なぁ、お前もやってみろよ? 勝てばアイツが持っているものなら何でも貰えるって話じゃん」

「そりゃ勝てたら莫大な賞金が手に入るのはわかっているけどさぁ……さすがにアイツ相手だと勝てるビジョンが見えないって」

「さっきで八十連勝だっけ、百いっても終わらないんじゃね?」

「ああ、間違いなく終わらないって!」

「お前アレ見てたのか? あのガード越しからのパンチですら被ダメが並じゃねーしな。さっきもガードし損なった冒険者がアイツのワンパンで頭破裂してたぜ?」

「ああいうの見たらマジでヤル気失くすって……」



「……何だか凄いことになっているみたいね?」

「うん、ここまでとは思わなかったけどね……

 まわりにいる人達の話を聞く限りだと、ずっと勝ち続けているらしいから、たぶんそういう話が更に人を呼んでいるんだと思う」


『どれだけ強いのよ!?』

 話題となっている亜人の強さ。ちょっと聞こえただけでも尋常じゃないということはわかる。

 それだけ強い人ともなれば、単純に正金目当てで挑戦したい人だけじゃなく、【強さ】という枠の概念に収まりきらない強者と手合わせしてみたいと思う人達も多いはず。

 ハルがいたら間違いない挑戦してるよね、きっと。


それにしても、



 ブルッ……



『……ははは、話を聞くだけで震えるなんていうこと本当にあるんだ』

 もちろん戦うと決まったわけじゃない。だけどこういう場になってしまっている以上は、結果的に戦うこと(そういうこと)になったとしても文句は言えない。

 ていうか、ワンパンで頭破裂ってどんだけよ……もしかして『○孔を押してボンっ』とかあったり!?


「とにかくもっと前に行こうか」

「……うん」


 ・

 ・

 ・


「フンッ!」

「ごべっ」


 別段ステージ的なものが作られていたわけでもなく、公園のグラウンドにある一角でそれは行われていた。そしてその場で行われている一方的なKO劇は、見る者問わずその場にいる全ての人達に対し、その亜人の強さと怖さを余すところなく伝えている。



「あれが……亜人」

 対戦場となっているグラウンドの中央、そこには二メートルを超える大男が拳を振るっていた。


 灰色を基調としながらも、やや紫がかった肌。ソフトモヒカンのように整えられた金髪に赤みを帯びた鋭い瞳は、頂に立つ獣を想像させる。

 そして短く切った袖をから見える腕は丸太のように太く、服の上からでも見てとれる重厚な上半身は【筋肉の鎧】を纏っていると言っても過言ではないと思う。


『ハルより大きかったタウラスさんを見ても結構驚いたのに、それよりも更に大きいとか……しかもあんな風に笑いながら戦う様なんて……』

 容姿を比べても全く異なるのにも関わらず、その笑みの仕方は何故だかマチュアさんを彷彿とさせる。



 ドクン……



『えっ!?』


「どうしたのリア?」

「あ、うん……」



 何だろう、どうしてこの人を見ただけで体の中が熱くなるだろう? それにこの熱くなる感覚ってどこかで……



「さぁ、今ので九十人目だ! まだまだ挑戦者は募集中だぞ!

 勝てば金だろうとそこにある武器だろうと俺が持っているものであれば、望むのなら何だってくれてやる!

 ちなみに金なら今までの挑戦者達からの参加料も合わせて一千万Gを超えてるぜ?」


「い、一千万G超え!?」

 それだけあればハマルの予備用外部装甲を入手することも……


 イヤイヤイヤ、


『って、そっちがメインじゃないし!』

 ついさっきトム店長から聞いたハマルの外部装甲の金額と同額を聞いたことで、一瞬頭の中に違うことが浮かんだけど、すぐさま本来の目的を思い出して必死に打ち消す。



「ねぇ、大分騒がしくなってきたみたいだし……そろそろ潮時じゃないの、ラル?」

「えぇっ、折角乗ってきた所なのに終わりとかつまんねーだろ、ベニ」


『あの人も亜人みたいね』

『うん、すっごいキレイな人……』

 ラルと呼ばれた男性とは異なり、ベニと呼ばれた女性はもう少し紫が強くなった肌をしていた。


 切れ長の目に艶やかな唇。腰まで伸びた銀髪は癖の無いストレートで、その美しさは絹糸を想像させるほど。そして亜人特有なのかパッと見でも180cmは超えているであろう高い身長に、やや筋肉質なスタイルながらも、出るところは出て引っ込むところは引っ込んだメリハリのついたプロポーションによって、筋肉質なものでやや薄らいでしまっていた女性らしらを十二分過ぎるほどに補っていた。


『あのラルって人はもちろん強いけど、このベニって女性もかなり強い……』

 あくまで外見から受ける感じだけの判断だから正確なものではないけど、ちょっと見ただけで肌がピリピリとする感覚こそが、二人が持つであろう特別な強さをわたしの中に感じさせていた。



「しょうがねぇなぁ……じゃ、あと十人で丁度百人だからそれで終わりにするか」


『!』

 えっえっ? ちょっと待って、あと十人ってすぐ終わっちゃう!



「ま、まだ参加できますか!」

「あ?」

「えっ?」



『しまった!?』

 つい慌てて大声だしちゃったし……


 ラルと呼ばれた亜人だけじゃなく、回りにいた人達までが一斉にこちらを見ている。

 そして小声で『あんな女が?』とか『いくら異邦人で死んでも大丈夫だからって無謀すぎるだろ』とか色々と言われてたり。


 ……いや、まぁ普通はそう思われるよね。



「……本当に嬢ちゃんがオレとやるのか?」

「やりたいのなら止めやしないけど、さすがにワタシもアナタが正気なのかと疑いたくなるわ」

「あはは……」


 うん、亜人の二人にも普通に心配されちゃってるわ。



「えーっと、一応これでも本気です」

「そっかぁ……異邦人って言うのは無謀な奴が多いって聞くけど、嬢ちゃんはその中でも特に無謀なタイプらしいな。無謀と勇敢は紙一重って言われちゃいるが、これだと無謀を通り越して自殺行為になるんじゃねーか?

 ま、実際に異邦人だと死んでも生き返られるから無茶なことをしたがるっていうのもわかるがなぁ。

 ただなぁ、待ちの挑戦者も既に十人いるしなぁ……」


 うーん、イマイチ亜人さんの歯切れが悪いし、そもそも対戦数が百回になるまでの定員は既に埋まっているみたい。だとしたら……



「じゃあ、とりあえず並んでいる残り十名の中で、わたしと変わってくれる方はいませんか?」

「おいおい……」

「無茶言うなよ」


『ですよねー……』

 並んでいる挑戦者達に聞いてみるけど、さすがに自分から変わってくれるような親切な人はいないわよねぇ。まぁそれだけ腕に自信があるのか、それとも賞金欲しさに変わるという選択肢を最初から持っていないか。

 はぁ……だったら、こういう時に出来る手段はアレかな?



「うーん、でも並んでいる人達の中ではわたしより強そうな人いないんだけどなぁ……」

「ああん?」


 お、予想通りの良い反応が! うん、これならイケるかな?



「あ、ごめんなさい! つい本音が出ちゃって」

「テメェ、ナメてんのか?」

 並んでいた挑戦者達の中で、比較的大柄な異邦人がそう言いながらわたしに向かってくる。装備から判断すると剣士っぽいけど、大したものは感じられないから……


「でけぇ乳した神官風情が対戦に上がろうなんて百年早ぇ!」

「うわっ、人のことを装備とスタイルでしか測れないないなんて……大丈夫ですか?」

 ていうか、胸が大きいこととか関係ないし!



「クソがっ! 一回死んどけ!」



 シャキン



「あらっ?」

 いきなり剣を抜いたかと思うといきなり斬りかかって来た。この場合だと対戦モードじゃないから、殺人者(レッドネーム)上等ってこと??


『うーん、ちょっと怒らせ過ぎちゃったかな』

 でも、



 ゴッ



「なっ!?」

「挑発的なことして……ごめんなさい」


 躊躇なく相手の間合いに入ると、わたしは自分の右手のひらを剣士が振り下そうと構えていた武器の握り部分に押し当て、その動きを強制的に止める。そして、



 《鎧通し》



 ドッ!



「がはっ」


 交差しがてら移動。その途中で左手を相手の脇腹に軽く添えてから【鎧通し】を放つと、クリティカル気味にヒットしたらしく、その一撃で剣士は地面に倒れ込み、そのままダウン状態へ。

 うん、剣士さん本当にごめんなさいね……


 さて、


「えーっと、これで一枠空いたと思うのですが……ダメでしょうか?」

 かなり無理矢理だったけど、一応これで……



「くくっ……あーはっは! 面白え、気に入った!」

 ラルと呼ばれた亜人はこちらのやり取りを見てから笑いを堪えていたようだけど、わたしの問いかけが終わると同時にニヤリと笑いながら大声で返答をする。そして、


「悪りぃが他に並んでいる奴らはキャンセルだ。

 どう見てもオマエらとやるよりもこっちの嬢ちゃんとやる方が何十倍も楽しそうだわ」

「おいおい、そりゃ無いだろう!」

「金も既に払ったんだぞ!」




 ……あららら、こうなるのはさすがに想定外かも。



はい、本日も無事アップが出来ました!

一応月曜だと朝の出勤中に中を読み返して誤字脱字などのチェックをする余裕が

(若干)あるのですが、週間二話アップを目指して書き進めるのが主体で進めていると

どうしても比例するかのように誤字脱字が増加していたりします。


そういう時に皆さんからいただける修正報告には本当に助けられています。

……なるべくお手を煩わせるような事がないようにしたいとは思っているんですけどね(p_-)


さて、そういう訳で今週も行けるのかまだ怪しい状態ではありますが、

可能であれば今週も何とか週刊二話アップを目指したいと思っています!


木曜にアップ出来た際にはほんの少しでも良いので『頑張ったねぇ』と

思っていただけると少しは浮かばれます。

……いや、浮かばれるっていうのは成仏案件だっけ(汗)


それでは今週木曜に再アップが出来るよう、引き続き頑張っていきますので

何卒よろしくお願い致します<(_ _)>


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