170話 アルブラ動乱31
※19/07/02 誤字・脱字修正しました
「しっかし、聞いた話じゃオメーは格闘の闘技は簡単に覚えるようだが、PAスキルや魔法を覚える速さはそれほどじゃねーよな? ま、それども他の奴等に比べれば早いんだろうがなぁ……別段好き嫌いで覚える速さが変わっているような訳じゃねぇだろうし」
「そうなんですよね……新規の魔法なんて、せっかくスキル本を貰って読んでいるのに未だに覚えられないんですよ」
トム店長に言われたことはわたしも気になっていた。
戦闘スキルとは異なり、魔法については白魔法や精霊魔法などの戦闘スキルの一環として新しいスキルをまず習得し、そのスキルから新しい魔法を覚えていくというのが本来の流れになる。
ある主それをゼロベースから戦闘スキルとして覚えることが出来る【スキル本】は非常に高価なもの。そんな高価なスキル本をシーレフから旅立つ際に神官長のダレスさんから貰ったわたしは、シーレフからゲーニス・アルブラへの移動時だけでなく、アルブラでの生活においてもちょっとした空き時間に読むようにしていた。
しかし未だに新しいスキルを覚える事が出来ず、そよ風一つ起こすことができない状態のまま……
PAスキルについてはリペアと精密操作のレベルが(修理を頑張ったこともあって)それなりに上がったけど、それ以外のスキルについては闘技のようにリペアに関連したスキルを自動で覚えるような様子もない。
「もしかして、オメーは取得したスキルポイントを使ってスキルを覚えることをしていないのか?」
「……あっ」
「『あっ』って……オメーが闘技を覚える速さと量が異常なんだよ!」
「は、はぃぃぃ!」
うーん、戦ったり修練を積むことで闘技のスキルを覚えていたから、普通はスキルポイントを使って新規スキルを覚えるというやりかたを失念してた!
というか、そもそも最初が【スキルポイントマイナス】とかいう状態だったこともあり、『スキルポイントを取得してからスキルを覚える』という普通であれば経験している工程をまともに体験していないし!
……なんだか、ものすごく遠回りなことしています!?
「ま、一つ俺から言えることはスキルポイントを消費して覚えること自体は間違っちゃいないが、スキルなどを覚える工程に関しちゃ、オメーのように日ごろの行動や関連したスキルを修練することで、新たなスキルや闘技が開放され身に付けていく方が良いのは確かだがな」
「そうなんですか?」
「覚える工程において色々なものを学び・吸収し、その結果で解放されたスキルは特殊化することが多いと聞く。実際にオメーが覚えている格闘系の闘技にしても、ポイントを使って覚えるよりも、師と慕う者の下で修練したことによって、普通に覚えたヤツよりも性能は格段に良いはずだ」
「う、うーん……あまり比べたことが無いと言いますか、他に使っている人を見ないので何とも言えないですね」
一応、以前にサイトでスキルや闘技の考察を調べたことはあったけど、まず闘技の大多数が武器戦闘の闘技であり、所謂格闘系の闘技の掲載が圧倒的に少なかったことから、あまり自分にとって実りのあるものではなかった。
そして、その少ない格闘系の闘技に中でもわたしが使う【鎧通し】や【千枚通し】については載っておらず、同様の効果を持つ闘技が載っていたのを見て(鎧通しや千枚通しは勁力系の闘技と似た内容)、てっきりマチュアさんから教えてもらったことで技名が変わったのだと思っていたぐらいだし。
ちなみに【衝波】については一般の闘技のようであり、そういったサイトの中にも『気系の闘技』といて載っていたのでこちらは普通の(?)闘技のようでした。
【勁力系の闘技の特徴】
主に足から腰、背中や肩など稼働時に伝播するエネルギーを使う闘技。伝播する過程において増幅したエネルギーを、相手へ攻撃した際に技の威力と共に流し込むのが主技。
通常であれば技を出す際に消費するポイント(HPやMP)は無いことから、出そうと思えば本人が疲れるまで出すことは出来るものの、出し続けることによって貯まる疲労によってエネルギーの伝播率が落ち、結果的に闘技自体のダメージが落ちていくことになるので過信は禁物。
代表闘技:浸透勁、寸勁など
【気系の闘技の特徴】
主に使用者の体内で蓄積された気を使った攻撃、またはこれを使った防御。基本的には貯めた気を目に見える状態に形成し、それを相手にぶつける事が多い。勁力系とは異なり、気系の技を使う際にはSP(Spirit Point)というポイントがある為、そちらがある限りは使用することが出来るものの、HPやMPとは異なりポーションなどで回復が出来ないことから乱用は出来ない。
代表闘技:波気拳 (飛び系の闘技)、昇龍刃 (拳を振り抜くと同時に気で生成された刃を当てる)、剛気 (身体の防御力を上げる闘技)、衝波など
格闘系の闘技の中においても半数以上は気系の技と言われており、それ以外としては投げや関節技といった闘技だったことから、わたしが覚えた勁力系の闘技はややレア系な感じのようです。
『やっぱりこういう世界で格闘系を使う人って少ないみたい。それはそうだよねぇ、普通だったらカッコイイ武器とか派手な魔法を使いたい人の方が多いだろうし……
レア度の高い闘技を覚えているっていうのはちょっとだけ嬉しいけど、こうやって他人の感想や使い方を調べる事が出来ないっていうマイナスの方が大きいかも?』
それでもわたしの場合にはマチュアさんに色々と教えを請うことが出来る関係があるから大丈夫というか、こういった価値ある関係を築け・続けていられることの方が、何事にも変え難いというのが正直なところかな。
「まぁ何にせよ、さっきオメーから聞いた戦闘スキルの中で魔法を覚えない理屈については俺にもわからんが、少なくともPAスキルについてはリペアから派生して覚えるようなものよりも、まずは自分が覚えたいスキルを絞って覚えていけばええ。戦闘系のスキルとは色々と異なってくるからな。
リペアの派生スキルについても、そういった他のPAスキルを覚えたことによる複合取得がキーとなり、自然と身に付くこともあるじゃろうて」
「なるほど、そうですね。だったら……【スキルポイントを溜め込まないと辛くなる病気】でも無いので、有益そうなスキルを覚えることにします」
「『スキルポイントを溜め込まないと辛くなる病』じゃと? なんじゃそりゃ?」
「あ、いえ。そういう話も偶に聞くものでして」
なんとか症候群とか言ったはずだけど……ま、いっか。
『えーっと、スキルポイントを使って覚える場合には……確かステータス画面をオープンしてっと……』
なんだかステータス画面を見るのも久々な気がするなぁ。
もうちょっとこういう所もしっかり見ておかないとダメなのはわかっているけど、どうしても面倒……じゃなくって、おざなりというか後回しにしてしまう癖をなんとかしないと……って、
「ええええっ!?」
「なんだ、まーたヘンなモンでも見つかったか?」
ステータス画面を見た瞬間の内容に思わず変な奇声を上げてしまい、トム店長がわたしのことを不審者でも見るような感じでこちらを見ている。
「あ、はい。闘技の内容が物凄いことに……」
「ハッ、オメーならいつもの事なんじゃないのか?」
「え、えーっと否定し辛いの確かにありますが……ただそれでも今までとはちょっと違いまして。
と、とりあえず間単にお話しすると【新たな闘技】が倍以上増えているのと、既存の闘技名称が変わったというか、【前提条件によって違う名前に変わってしまう】という謎な内容です」
「は? なんじゃそりゃ」
ま、まぁトム店長に説明していても自分自身がこの状態に軽く混乱している訳で。
『【息吹】の闘技から【修羅の息吹】と【羅刹の息吹】に派生していてどちらも使用可に。効果自体はただの【息吹】から飛躍的に上昇するものの、どちらの闘技も使用中に新たにMPを消費する(しかも継続的に)という、非常に燃費の悪い闘技になっているだけでなく、【羅刹の息吹】についてはHPも同時且つ継続的に消費するとか書いてあるし。
しかも【羅刹の息吹】を使用している際には【鎧通し】が【嵐月】に名前が変わり、【千枚通し】も【重月】に変わるらしい。あ、【衝波】も【招月】に変わるって書いてある。
効果は……基本的に同じっぽいけど、今までと違って技を出す際に魔力も重要になっているみたい。
あと他にも蹴り技で【弧月】というのが、そしてまったく新しい闘技として【移動技】という項目が追加され、そこには【朧月】っていう新技が記載されているし。
そもそも、これらの他にも見た事も聞いた事も無いような闘技がいっぱい書いてあるし……これ、どうしたら良いのよ!?』
今までであれば身に付けた闘技についてをマチュアさんに報告し、その使い方や出し方・狙い所とかを経験者からのアドバイスとして貰っていたけど、接触が禁止された今の状態では教えてもらうことはまず無理な状態。
『せっかく覚えた闘技についてはマチュアさんとロイズさんの現状を回復した上で改めて相談する時間を作り、そこから本格的に使う方が無難よね』
勿論今すぐ使う事だって出来るけど、特性などよくわからないまま使うというのも危険な気がするから、一旦このまま保留という方向でまずは置いておこう。
「あ、生活スキルとかも覚えていました。わたしのスキルにしては珍しく【チェンジ】ってカタカナ表記のスキルですね。でも、PAのスキルや魔法についてはやっぱり覚えていないみたいです」
「贅沢な事言いやがって……まぁ、お前の場合は色々と憑かれているからな」
「そうですね……疲れているので考えるのは後にします」
ん、トム店長が微妙な顔しているけど……ま、いっか。
はい、本日も予定通りアップが出来ました。
ちょっと今回の話の中に、わたしが書いている中の【勁】とか【気】に関連する記述がありますが、まぁ素人が今まで色々と読んだりした中でミックスして書いているだけですので、本来のものとは全然異なったりします。予めご了承くださいませm(_ _)m
「全然違うぜ」ということについても、申し訳ありませんが「まぁ、しょうがねぇなぁ」と軽くスルーして頂けますよう、お願い致します。
というわけで、今回も引き続き週間二話アップを目指してみたいと思います!
こんな感じでアップを早めにできると、いろいろと見て頂ける方が増えるようで、それはそれでかなり嬉しかったりします。
まだまだ以前のような毎日掲載、毎日高アクセスとはいかないですが、しっかりと出来ることからコツコツアップをしていきたいと考えますので、引き続きよろしくお願い致します。
では、次回2/21(木)アップ目指して、自分で自分を締め付けつつも追い込んでみたいと思います!




